2018-11-19

[] #65-2「短くて長い一日」

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「一緒に別の次元に行ってみよう! そうすればキミも、ボクの言っていることを信じるはずだ」

『別の次元

その言葉が俺の琴線に触れた。

「別の次元ってのはアレか。パラレルワールド、平行世界的なヤツか?」

わず興味本位質問を、食い気味にしてしまう。

今までにない俺の好反応に、ガイドもたじろいでいた。

「んー……まあ広義的には」

「そうか……やっと分かってきたようだな。そういうのでいいんだよ」

「どういうの?」

俺が知っている限り、こいつが今までやってきたことは尽く期待外れだった。

人の家の庭を焼き払う謎のオブジェクト

生身の俺に妨害されただけで、何もできなくなる程度の機能しかないダサいスーツ

色々なものを無理やり詰め込んで何がやりたいかからない、使い勝手の悪そうな多機能端末。

その他、俺の弟相手にも色々と披露していた。

将来生まれてくる子供人生シミュレーションできる装置だの、罪と罰を測ることができるメーターだの。

こいつにとっては未来科学力を証明しているつもりなのだろうが、いずれも胡散臭い感性がズレている。

もっと普遍的イメージに応えるようなものなら良いのに、どれも頭でっかちだったかコメントに困っていた。

シンプルに空を自由に飛べるだとか、玩具兵隊だとか、世界旅行に行けるようなものとかでいいのに。

いつもヒネたことばかりやってくるから、凄いかどうかイマイチからないし、興味も湧いてこない。

だが今回、やっとマトモなものが出てきてくれたようだ。

「じゃあ、その別次元について、話を聞こうか」

これでもジャリガキの頃はSFに慣れ親しんでいた。

今でこそ落ち着いてはいるが、ここにきてその頃の気持ちが再燃していく。


…………

そして出発当日、早朝。

待ち合わせ場所であるガイド居候先に来ていた。

次元に与える影響を最小限にするため、身に着けるものや、持ち物は最低限だ。

しみったれた小旅行である

それでも俺がOKしたのは、もちろんパラレルワールドというものに惹かれたのもあるが、“とある条件”を飲んでもらったからだ。

「後は弟くんが来るのを待つだけだね」

俺は同行者、つまり弟も共に連れて行くことを条件にした。

さすがに苦手な相手と二人っきりなんてのはツラすぎるからだ。

見知った身内でもいれば、多少はマシになるだろう。

……だが、弟が来るのが遅い。

から来ると言っていたが、まさか二度寝しているんじゃないだろうな。

あいつは俺以上に朝に弱いから、有り得そうで不安だ。

「うーん、弟くん来ないね。そろそろ出発なんだけど……」

次元を飛ぶんなら、今の時間とか気にしなくてもいいだろ」

「色々とこっちにも事情があるんだよ。好き勝手次元を跨ぐと厳罰になるからあんまり融通利かすわけにはいかないんだ」

「じゃあ、このままだとお前と二人で旅行ってか?」

「まあ、元から二人で行く予定だったんだし同じことでしょ」

勘弁してくれ。

こいつと長時間一緒とか、補正をかけてもロクな思い出にならないぞ。

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