2018-11-18

[] #65-1「短くて長い一日」

今の自分人生に、自分自身に、これといって不満はない。

……と言い切ってしまうと嘘になる。

だけど現状を顧みて無いものねだりをしたり、管を巻くほどじゃない。

それでも、たまに今の自分とは違う“可能性”について想像することは誰にだってあるはずだ。

野球が好きでもないのにメジャーリーガー自分想像したり、テレビ雑誌インタビューでロクロを回したりしているのを思い浮かべる。

無益だが、苺の先端だけ食べるように甘美だ。

だが、実際の俺たちはそもそも苺を食べられない。

食べられたとしても、そこまで甘くない部分も食べきって、食べないヘタの部分の処理も要求される。

……といった例えをクラスメートしたことがあるが、評判は非常に悪かった。

いい例えだと思うんだけどなあ。

まあ、つまり……今回したい話ってのは、この苺の先端をチラつかされたこから始まる。


…………

から数ヶ月ほど前のことだ。

その日はガイドって名乗る奴が、性懲りもなく俺の家に乗り込んできた。

「やっぱり任務を円滑に行うためには、キミに協力してもらうのがいいんだよ」

こいつは自分が遥か未来から任務のためにやって来たとのたまっている変人だ。

現地の協力者として俺が適任らしく、以前からこうやって勧誘を迫ってくる。

何の根拠があって、こいつがそんなことを言っているのかは知らない。

あと任務とやらの具体的な内容も知らない。

興味もないが。

「いや、そんなこと俺は知ったこっちゃないんだが」

当然、俺はそれをハッキリと断り続けている。

だが残念なことに、微妙意思疎通がはかれていない。

「何度も言っているが、俺はお前を根本的に信頼してねえんだよ」

「そう言うと思ったよ。だから今回はボクを信じてもらうよう、未来アイテムを持って来たんだ」

「『今回は』って、いつもそうだろ」

「いや、全然違うよ。今までのは遠まわし気味だったかなあとは思っていたんだよね。だから今回は上層部相談して、飛びっきりのをやるから

こんな感じで、こいつは俺から信頼を勝ち取るために未来科学力に頼る。

俺が信じていないのは、こいつが本当に未来からきたのだとか、そういうことじゃないんだが。

それが伝わる相手なら、今もこんな押し問答をやっているわけもない。

で、仕方がないので俺は毎回こいつの紹介するアイテムを表面上レビューしている。

そして最終的に、信頼に値しないことを納得してもらった上で、丁重にお帰りいただくということを繰り返しているわけ。

未来がなんだのという話の規模に対して、やっていることは押し売りと客の戦いのようであり、時代錯誤も甚だしい。

今回もそうなる筈だったし、そのつもりだった。

次 ≫
記事への反応 -

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん