今回は俺も一応モチベーションがあったのに、ここにきてそれが減少していくのを感じる。
これは、アレだ。
どうする。
今から弟を迎えに行けば間に合うか。
いや、いま向かっている途中ですれ違ったらどうする。
もう今回の小旅行を断ったほうがいいだろうか。
ああ、くそ。
寝起きの頭じゃあ考えがまとまらない。
「ごめん、にい……兄貴。遅くなった」
頭がグズりだしてきたとき、弟がやっと来てくれた。
それで失ったモチベーションが元通りになるほど俺は調子のいい人間ではないが、ひとまず安心といったところか。
「弟よお、荷物もないのに何をそんな時間をかけることがあるんだ」
「い……いやあ、寝癖が大暴れしてさあ」
「寝癖って。お前そういうの気にするタイプじゃないだろう」
「そ、そうかな……」
しかし、このときの俺は寝起きで判断力が鈍っていて、そのことを深く考えていなかったんだ。
「じゃあ集まったところで、別次元での行動についておさらいするよ」
ガイドが注意事項を説明し始めるが、内容はほとんど当然のことばかりだ。
別次元に悪影響を与えないために目立つようなことはしないだとか、その次元の住人に迷惑をかけないようにだとか。
ところどころ小難しい横文字を並べている以外は、修学旅行の学生しおりレベルのことしか言っていない。
「……というわけで、キミたちが注意すべきなのはそんなところかな。ちゃんと心がけてね」
「は~い」
だからといって、本当に修学旅行中の生徒みたいな気のない返事をしてしまう弟も大概だが。
言ってからそのことに気づいたようで、気まずそうにモジモジしている。
こいつ、まだ寝ぼけているようだな。
「……ほら、キミも返事!」
なんだかこのあたりのやり取り、本当に修学旅行みたいなノリだな。
「じゃあ、今から“穴”を開けるよ。そこを通って別の次元を移動するんだ」
いわゆるワームホール的なやつか。
気取った横文字並べられるのも癪だが、“穴”っていう表現は風情がねえなあ。
「開いたらすぐに入るように。長く開けておくと次元警察が煩いから、すぐに閉めないといけない」
放り投げられたオブジェは空中で静止し、1秒と経たない内に“穴”を作り出した。
穴の先に見える景色は淀んでいて見えにくいが、自分たちが今いる世界とは明らかに違うと感じさせる。
「さあ、ボクについてきて! 早く入って!」
未だモジモジしている弟の手を引いて、俺はその空間に勢いよく入った。
「一緒に別の次元に行ってみよう! そうすればキミも、ボクの言っていることを信じるはずだ」 『別の次元』 その言葉が俺の琴線に触れた。 「別の次元ってのはアレか。パラレル...
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おお。ついに完結したのか お疲れ様