だけどそれは、思えば現実からの逃避だったのかもしれない。と最近思うようになってきた。
家業があり、幼少期からそれを見てきた自分はそんなことはやりたくないと思いそれだけを口にして絵を描いてきた。
インターネットを手に入れ、ネットの世界に絵をアップされると簡単に承認された。絵を描く人間のコミュニティに住まなかったからだ。
絵を描いてはインターネットに投げ、承認される。そんな日々を繰り返した後。
本格的に絵を描こうと絵描きのコミュニティに投稿してみると世界が変わった。自分の絵も漫画も褒めてくれる人間はごく少数だった。
なんとなく、萎えた。
だけど夢を口にするのはやめなかった。
高校時分、上級学校に進学するとき専門の道に進むことも考えた。
その道に進むなら学費は出せないと親に言われた。
受験勉強もひどかった。進学先も反対された自分は特進クラスとして講習などを受けたが、それすらもほっぽって現実から逃げた。
要するに、何もしなかった。参考書をなぞり、その場しのぎの用語を覚え、勉強をする気はなかった。
だがそこはつまらないオタクがただ駄弁り、リア充になりきれないやつが羽目を外す真似をし、遊ぶための部活だった。
流された。
絵は描いた。優越感や承認は簡単に手に入った。周りのやつらは絵を描かなかったからだ。
中にはとりわけ上手い人間もいた。だけど近づかなかったし、仲良くもできなかった。
何故か。今思うと、あれは自分の絵がその人間の絵と比べられ、劣っているものと認識されるのが怖かったからだ。
私生活ではプライベートで絵を描いた。しかしそこには上達しようという意識はなかった。
描くだけで楽しかった。
そんなまま、あっという間に4年間が過ぎた。
漫研は中途で体部し、承認される場がなくなったせいで萎えたのか、自分から絵を描かなくなっていた。
就職しなければいけない。
「働いているサラリーマンはつまらない顔をしている。あんな大人にはなりたくない。夢を追いかける。」
八方美人だった自分はバイト先では気に入られ、承認を手にする。
だけど絵や漫画は怖かった。
持ち込みにいこうと決心するにも、自分の絵や漫画が他人にけなされるのが怖く、足を運ぶこともなかった。
1年と半年がすぎた。
2年目の春には、親と自分との暗黙の了解で、実家に帰ってくるという約束をしていた。
自分の絵はプロと比較してお世辞にも上手いとは言えないレベルだった。
どうすればいいんだろう。
こんな自分にかまってくれる友人を羨んだし、自分にも失望した。
たくさん考えた。
夢ってなんだろう。他の人はどうなんだろう。こんな家庭に生まれなければ。環境が違っていれば。絵が上手ければ。
この先、生きていけると思えない。
芸術志望なら価値観は自分が決めるというべきところ