http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20130328_593523.html
世界を守る善人を、悪い輩が攻撃した。この件はそういう単純な件では無いという事を書いておく。
この事件の背景はアメリカの非営利企業や只の民間企業が持つ、インターネットに対するあまりにも大きすぎる影響力への不平不満が爆発したことにある。
今回攻撃の対象に成ったspamhausはただの非営利団体であってインターネットを管理する公式機関では無い。しかしspamhausが一度ブラックリスト認定してしまえばその影響力は甚大である。そしてspamhausのブラックリスト認定は時にアメリカ以外の国の「事情」や「文化」を無視して強権的に発動されるため、これまでも何度かトラブルは起っている。
これはスパムメールだけの問題ではなく、さまざまなジャンルにおいて「不道徳」「アメリカ的にNO」という名目でwebサイトに閉鎖するよう求める非営利企業・民間企業がアメリカには多数存在する。もしその通告に従わなければ、レジストラを介してドメインを停止させる。もしレジストラが従わなければレジストラも犯罪者であるかの如くバッシングを浴びせる。これは現実に起っていることだ。以下、便宜上彼らのことを「アメリカの善人」と呼ぶ事にする。
例えばBloggerにおいて、児童ポルノやフィッシングサイトへの誘導など、違法なブログが多数存在するとしよう(事実存在する)。しかしBloggerに閉鎖通告を出すアメリカの善人などいるわけが無い。なぜならBloggerを運営してる企業のことを彼らはよく知っているからだ。Googleにサービス停止を求めるドンキホーテなどいないし、本当に閉鎖されれば大変な騒ぎになるとアメリカの善人は知っているから、何の働きかけもしない。
しかし、もし仮にこれがアジアの小国にあるweb企業が運営するブログサービスだったらどうだろう。仮にそのサービスがその国において大きなシェアを持つものだったとしても、アメリカの善人は躊躇せずブログサービスを閉鎖するように動く。具体的にはレジストラに働きかけてドメインごと使えなくする。その後起きる影響など彼らは知った事ではないわけだ。Bloggerへの態度とは大違いである。
これは作り話ではなく実際に起きている事だ。例えば日本においても、過去何度か疑わしい事例が起きている。
・お名前.comが管理する.infoドメインが2011年の年末に多数強制廃止された件(A)
・忍者ツールズ(株式会社サムライファクトリー)がレジストラによって一時的にドメインごと使えなくなった件(B)
Aの事例は、お名前.comで登録された.infoドメイン(修正: 記事執筆時は.netと記述していましたが.infoの間違いでした 指摘してくださった方感謝)がスパムメール発信源になっていたため、ドメイン名義を匿名(お名前が代理)で登録していた.infoが無差別に強制的に廃止された。Bの事例は、忍者ツールズCGMサービスを利用した一ユーザーが不法なコンテンツを掲載していたために、忍者ツールズ全体を不法コンテンツを発信する悪徳ドメインだと断定して、DNSごとシャットダウンされている。これはいずれもお名前.comを運営するGMOに、アメリカの善人が圧力をかけて起きたとされている。
アメリカの善人はもちろん100%善意で行動しているし、彼らが流した汗によってインターネットに多大な秩序をもたらされたのも事実だ。しかし、彼らはなぜそこまでの力を持っているのだろう?そんな権限を誰が与えたのだろう?その権限に正当性はあるのか?アメリカ以外の国の文化・法律・事情などをあまりにも蔑ろにし、ドメインやDNSを使って強権的にサービスを遮断する権限を、なぜ只のアメリカの民間企業・非営利企業が持ってしまっているのだろうか。
これはインターネットは誰のものなのか、という問いにつながる大変重大な問題だ。ICANNのような機関ではない、ただの民間企業・非営利企業がそこまでの力を持ってしまうことの正当性についてもっと我々は敏感になるべきだし、もっと議論をするべきである。これはアメリカが悪だとかそういう程度の低い陰謀論ではなく、現実にインターネットで起りつつある問題なのだ。