2021-09-30

ミッドサマーをみた(ネタバレ

Netflixディレクターズ・カット版が配信されたので久しぶりに「ミッドサマー」をみた。

グロや不気味なところにはだいぶ耐性ができてきていたので、あらたプラスされたところなどを眺めていた。

大きいのは儀式ひとつくわえられていたことと、主人公ダニーとクリスチャン関係さらにいくつかのエピソードがあったくらいか。よりわかりやすくなっているとはいえるかもしれない。

映画自体宗教団体不条理儀式の数々は日本ホラー映画を参考にしたらしい。それらを念頭に置いてみると、「これおかし宗教に巻き込まれ死ぬホラー映画じゃないな」と思った。

軽くネタバレありのあらすじを書くと、ダニーとクリスチャンは長く続いているけどお互いに関係に飽きているカップルクリスチャン卒論ネタスウェーデン実家がある友達コミューンに行くことになる。黙っていこうとしてたダニーが怒ったので「一緒に行こう」と誘う。ところがそこはおかし宗教団体クリスチャンほか仲間は殺されました。そこでダニーは女王になって優しい村人にわかってもらい幸せになりましたと。

この話を各キャラの損得だけで考えると、得をしているのはダニーだけだなと思ったのです。

クリスチャンとの関係形骸化して惰性でだけつきあっている。さりとて別れるにしてもクリスチャンはグズでルーズだけど浮気してるでなし暴力を振るうでなし、自分パニック障害の発作を起こしたとき友達と遊んでいても駆けつけるし、クリスチャンの男友達浮気しろといわれてもそれは断ったりはしているので、嫌う決定打がないんだよね。

スウェーデンという知らないところ。

文明から隔離されたところの独特の価値観

・みんなが平和で穏やかで優しくしてくれる(たまに不気味だがそれは宗教上の儀式)。

判断が鈍るような薬を飲まされる。

・争うつもりもなく楽しく踊っているだけで女王になる。

彼氏浮気をしてる現場を目撃した(させられた)。

・悲しくて泣いたら他の味方もみんな泣いてくれた(共有してくれた)。

・薬が効いててわからないまま彼が儀式で殺されることになった。

・彼は薬が効いてて一言も発してない。でも、意識ははっきりしている(無理やり決めさせられてはいない→ひょっとして肯定された?)

自分は殺してとはひとこともいってないのにまわりの「仲間」が察してくれて彼を燃やしてくれた。

そして彼女はなんだかうっとおしい彼氏と別れられることになり安寧を手に入れた→幸せになった。

この先どうなるかはわからないが物語ダニーが安寧を手に入れたところで終わるし、その先はない。まるでダニーがみてた夢のように終わる。

ここでのダニーは徹底的に無責任で仕方のない状況でただそこにいるだけで望んでいる事態へと動いていっている。

すごく冷静に考えるなら、アメリカスウェーデン警察間抜け無能ではないから何人もいっきにひとがいなくなったら調査に向かうだろうしそうなったらただで済むわけではないよね。

実際、村の爺たちは保身のために証拠隠滅を図っている。自分らがヤバいことをしている自覚はある。

でも、ダニーは関係がない。無責任だ。まわりが勝手に動いたことだ。

ここらへんはひとえにダニーが聡明で頭が良くて一般常識があるからこそなんだよね。だからここまで無責任で抗えないしょうがない状態を作り出さないとクリスチャンを切ることができなかった。

この映画で1番ゾッとしたのは、クリスチャンがハメられてハメているときの1番のトラウマシーンでの女性たちのあえぎとか、浮気を目撃させられているダニーの悲しみに合わせて泣いている女性たち。最後に生きたまま火炙りにさせられてる叫びに合わせて泣いている村人たちの行動だよね。

それってSNSでの共有そのものだと思った。Twitterリツイートコメントはてなブックマークコメント。「わかる~」からはじまる共有の正体こそがこれなのだと。

実際にあえいでいる女性気持ちいかどうかはわからない。浮気を目撃したダニーの苦しみはわからない。100歩譲ってそれは自身体験からかられるとしても、生きたまま火炙りをされたことのない人間の痛みを共有することは絶対にできない。なぜなら死んでないから。

あのわざとらしい泣き姿をみていると、SNSの共有や慰めなんて所詮この程度なのだなと思って心の奥が冷たくなっていく。

でも、ダニーのように「あれ」がほしいのだなと、今日もまたSNSに関わっていく自分嫌悪を持ったりもする。

かように「わかる~」から得られる承認欲求というのはドラッグなんだなと。

  • 俺この映画「ヤバそうだから帰りたいけど卒論(だっけ?)がー」って言って残るの選んだ時にバカじゃねぇのって思って以降感情移入出来なくなって終わった

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