2016-01-11

石浜真史劇場アニメ監督作としての「ガラスの花と壊す世界

ガラスの花と壊す世界」見てきた。

結論から申し上げれば、大ヒットは見込めないんだろうな、という感じ。決して駄作というわけではなく、見ごたえはあったのだけれど。

感想

泣きゲーっぽい雰囲気

キャラクターが非常にかわいく描かれている

コンピュータ用語を多用した少し入り組んだSF作品コンピュータ用語使うのは少し寒いというか陳腐というか。

・短い尺なので集中力が切れずに見ることができた。(途中に挿入歌の長いパートがあるが)

・全体的に映像が美麗で味のあるレイアウトが多い。

・終盤にいろいろと展開がひっくり返ったりまた返ったりとごちゃごちゃするのでついて行くのが大変

さて、この作品原案ポニーキャニオンが行った「アニメ化大賞」で大賞を勝ち取った「D.backup」という作品

そして上映時間は67分。おそらくはこのアニメ化大賞という企画において、ようやく取ることができたのが「劇場60分」という短い尺なのだろう。

そして、このアニメ化企画を引き受けることとなったのがTVアニメ新世界より」で監督デビューをした石浜真史氏。ポニーキャニオンとは「新世界より」で繋がりがある方。

というわけで、石浜真史氏が劇場アニメを初めて手掛けるということで、彼はいったいどういったアニメーションを作ろうとしたのか、Web劇場パンフレット掲載されたインタビューなどを参考にして、浅く簡単に書き連ねる。

(※この文章は筆者の独自解釈がふんだんに盛り込まれています。)

石浜真史演出経験

実は石浜氏は演出経験がそんなに多くはない。元々はアニメーターであり、原画作画監督キャラクターデザイン仕事をしていた。90年代から活躍するベテランである

かみちゅ!」「NHKにようこそ!」「東京レイヴンズ」「ヤマノススメ セカンドシーズン」など、OPED職人としてその演出評価されているものの、実は本編の演出をし始めたのは最近のことだ。

初めて本編の絵コンテを手掛けたのが初監督作の「新世界より」(2012年)、そして自分の描いた絵コンテを初めて自分演出したのが「四月は君の嘘」第5話(2014年)と、かなり最近だ。

であるから、この「ガラスの花と壊す世界」を手掛けることでようやく石浜氏は「演出家」を名乗れるようになった感じだ。

何を描くのか

原案存在するものの、はっきりとした原作はなく、さら原案からかなりアレンジしてもよいという自由環境の中で、石浜監督は何を描くことにしたのか。

自由という言葉だけでは何もとっかかりが無いので、A-1 Pictures石浜監督はまず企画方向性を探らなければならなかった。

そして企画を持ってきたポニーキャニオンプロデューサーから引き出せたのが「最初マーケット男性に絞りたい」「とにかく泣けるものにしたい」というものだった。

これを踏まえたうえで、石浜監督原案を見て感じ取った「キャラクターの立った物語」「『知識の箱』という世界観」という要素を広げて作品を作ることにした。


結果として、石浜監督がこの作品を作る上で重きに置いたのは「いかにキャラクターをかわいく見せるか」ということだった。

プロデューサーの「リモは絶対に守りたくなる存在にならなければならない」という発言を聞き、これは外せない点であると考えた。

そして、リモをはじめとしたキャラクター感情を中心に描き、泣ける物語にするという目標を軸に、石浜監督センスでさまざまな要素を盛り込んでいくことになった。

劇場パンフレットでも「すべてはリモのため」という旨の発言がある。

リモという存在デュアルとドロシーにどういった変化をもたらし、この3人の関係がどう変わっていくのか、それを描いたのが「ガラスの花と壊す世界」なのである

終盤の怒涛の展開も、SF的な入り組んだ設定も、すべてはリモというキャラクターバックグラウンドを固めるためのものなのだ

「泣ける物語」にするために固めなけらばならなかった背景のひとつにすぎないのだ。

新世界より」では壮大なテーマを持った物語を扱った石浜監督だが、今回は少し違った点に重きを置いたことになる。

制作における詳細なことはパンフレットに書かれている)

石浜監督もつ強みとは

さて、石浜監督の魅力とはなんだろうか。一言でいえば「オシャレ」なことにあると思う。

独特の感性だとか、常人でない発想とかそういったものとは少し違う意味でのセンスの良さが石浜監督にはある。

そういった意味では、同時に劇場公開されている尾石監督の「傷物語」と対比構造にあるのかもしれない。(尾石達也石浜真史専門学校の同期らしい)

何をどう見せればグッとくるかを非常によくわかっている。映像で見せる技術がとても高い人物だ。

今回の作品では全編石浜監督絵コンテを描いており、とにかくグッとくるカットがひたすら続く。興がそがれるダサいレイアウトが全く無い。

それに加えて、スタッフの人選にもオシャレさが発揮され、何を誰に任せるといいかという判断にも石浜監督センスが現れている(今回でいえば世界コンセプトデザインでの六七質さんの起用など)

そして、デザイン全体がすべて意味を持つように映像構成されるように考えられているのだ。

非常に意地悪な言い方をすれば、リモとの出会いと別れの物語を描いた67分のPVである

さらプラスアルファの要素として、石浜監督フェティシズムがにじみ出た少し艶めかしい人物描写があり、繰り返しの視聴に耐えうる映像に仕上がっていると言えるだろう。

オリジナル劇場60分という短い尺でキャラクター感情の動きを描き切るのはかなり無理があるものの、その映像表現力でどうにか補完したような印象である

結果として、作品として非常にまとまりのあるものとなったものの、映像を見る視聴者の感じ取り方にかなり委ねられたものになっている。

この物語をいかに噛み締め、咀嚼するかは自分次第だということだ。押し付けがましい映画ではないので、気楽に劇場へ足を運んでみてはどうだろうか。


参考

劇場パンフレット

石浜真史(アニメーション監督)(Rooftop2016年1月号) - インタビュー | Rooftop

「自由に作れる」ということの難しさ、「ガラスの花と壊す世界」石浜真史監督&プロデューサーインタビュー - GIGAZINE

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