2022-10-01

(元)親友の書いた短編小説を読んでしまった。

 (元)親友とは、もう十年以上さして交流がない。ちなみに親友接頭語に「(元)」を着けたのは、単に中学卒業して別々の高校に進学して以降、会う機会が数回しかなかった上に、(元)親友がいつの間にか数多の友達を持つ交遊関係のやたら広い奴になっていたかである。きっと、ぼくの事なんかミリも覚えていないと思う…………そう、それって単なる被害妄想

 中学の頃はヤバいくらいにべったりくっついて離れないくらいの勢いで互いに「親友」と称していたぼくらだが、現在の接点はというとTwitterのほぼ死んでるアカウントと実況アカウントとで相互フォローになっているくらいのものだ。

 (元)親友はぼくの知らないオンラインゲームの戦況をひたすらツイートしている。ぼくはアカウント放置し、他にいくつか所有する趣味垢で呟くのに忙しい。

 ぼくは趣味小説を書く。ただし投稿サイト粛々と投稿し続けるだけで、本を出したりはしない。(元)親友もどうやら小説書きであるらしい。二次創作小説を書きイベント頒布しているようなのだが、具体的にどんな活動ぶりなのかを聞けば言葉を濁すばかりなので、よくわからない。

 (元)親友にはぼくの知らない顔がある……時点で、すでに親友とは呼べないのではないか? という悲しい思いがなくもない。

 ちなみに、(元)親友はといえば、ぼくのTwitter放置垢だけでなく趣味垢も知っているから、その気になればぼくの書いた作品を読み放題だ。だが、(元)親友がぼくの書いたものに何かしらの反応を寄越したことは一度もないので、ちょっと読んでドン引きたか、あるいはそもそも社交辞令アカウントを聞いて繋がってみただけなのかもしれないな。なんていう非対称性もりもりで実のない関係性というか、関係の断絶なのだろうか。書いててちょっと涙が出てきた。

 もはや「謎の元親友のような者」と呼んだ方がいいような気のする彼女ツイ垢を、昨日なんとなく久しぶりに覗いてみたところ、プロフィールにぷらいべったーへのリンクが貼ってあるではないか。ぼくはドキドキしながらそのリンククリックした。

 中身はやはり何らかの二次創作であるようだ。いわゆるブロマンス。男同士の熱くて強固な関係性を描いたもの。色気とエロは一切書かれていないところが君らしいな、と思ったそばから、それはぼくが彼女に潔癖を求めているからそんな風に思っただけのことだと考えた。

 へぇゴリゴリ理系国語は得意じゃないと昔は言っていたのに、小説ちゃんと書けるんだな。うん、ぼくほどではないと思うけど、上手いと思う。

 だが軽い衝撃を覚えたのが、それらの短編小説達が一体何の二次創作なのか、さっぱりわからない事だった。登場人物名前すら出て来ない。名前が入って然るべき部分は全て一人称二人称三人称があてられていた。君ってやつは、どこまでも秘密主義なんだな。

 ふと、短編いいね! とブクマをしてやろうかと魔が差したが、そんな事をしたらいよいよぼくらの関係性は断ち切られてしまいそうな気がして、ぼくはそっとブラウザを閉じた。

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