もう20年くらい前かな、当時の独身だった私は、前年のあまりにきつい失恋の痛手でどうにかなりそうな日々を生きていた。
そんな私を心配したある女性が、「気晴らしに女の子を紹介してあげるから一度会ってみ」と誘った。
その心配してくれた知人女性のことは、実は以前から憧れていて好きだった。彼女は結婚してて子供もいるから叶わぬ恋と諦めていたが、たまに会う程度の機会があると喜んでマイカーで飛んでいったものである。
その時も、紹介してくれる女の子より、その知人女性と会うのが楽しみで行ったわけである。
紹介された女の子は、なんというか、別に興味も湧かないタイプだったのだけど、知人女性は「これから二人でデートでもしてきなよ、時間空いてるんでしょ?」と半ば強引に勧めた。
後で知ったが、実は紹介された女の子も、付き合ってた彼氏が失踪したということで、知人女性に悩みを打ち明けていたのだった。
それで、互いが似た境遇だから、気晴らし程度にでも気が紛れるんじゃないかと思ったらしい。
20年も前の話なので、細かいデート時の状況はさっぱり覚えていない。ともかく、私が運転するマイカーであちこちウロウロしていただけだと思う。
そもそもその女の子にはそんなに興味も湧かなかったし、デート中も私の脳裏には前年に失恋したあの子のことがずっと思い出されてしまっていたくらいだった。
・・・で、なぜそんなことになったのかも覚えていないが、彼女がなかなか帰りたがらないのである。
気づけば深夜0時を回っていた。お昼くらいから一緒にいたはずだから、気づいた時点で十時間以上は一緒にいた計算になる。
ちなみに、当時の私も一人暮らしだったが、彼女も独身者用のマンションに一人住んでいた。
ともかく、よほど私と彼女の気が合った、ってことではないことは確かである。
理由があるとすれば、これは私自身の性格だと思うのだけれど、私は人と二人きりでいると無言の時間が耐えられない性格なので、多分延々と下らないどうでもいいことを話し続けていたんだとは思う。
で、流石に深夜2時くらいになってようやく、彼女が確か「疲れた」とか「眠い」とか言ったのだと記憶する。
私は、彼女の家まで送って行こうとしたのだが、「流石に一度目のデートで自宅の場所を知られたくない」のようなことを彼女は言った。
それは確かにそうだけど、だからと言って、このまま朝まで車中泊だなんてその方がもっと異様だと思ったので、困り果てた私はやむを得ずドライブ中の視界に飛び込んできたラブホを提案した。
「マジで、休むだけの目的であそこ入る?」と言うと、彼女は特に嫌がるでもなくすぐに頷いたのだった。
でも、ヤリモクなんかでは全然ないし、だからと言って別に彼女が誘ってきたわけでもなかった。
確か、「セックスしないと寝るだけでは勿体無いよね」のような話を冗談まじりにしていたら、どちらからともなく「じゃぁする?」となっただけのように思う。
しかし、セックスするにはしたけど、そのことで彼女を好きになったとかそんなことも全くなかったのは事実だ。
私は私の方で、失恋した方の彼女のことを忘れられなかったし、彼女は彼女で失踪したその男性のことがずっと気がかりだったらしい。
その後も、結構彼女の失踪男性について相談に乗っていたように思う。
たまに会って、デートもしたし、なぜかデートの二回か三回に一回はラブホだったりもしたけれど、不思議なことにそんな関係が1年ほど続くと、私たち二人は何故か別れられない関係になって、3年付き合って結婚し、子供も二人出来て現在に至る。
なんでこんな話を増田に書いたかと言うと、婚活アプリで出会った男性は結局ヤリモクだった、みたいなエントリがあったからだけど、私の場合は逆というか反対というか、ヤリモクどころかする気もなかったのに最初の出会いで成り行きでセックスしたし、彼女と付き合う気すらなかったのに、気がつくと別れられなくなって結婚してしまったっていう、縁の不思議さを書こうかなと思っただけのこと。
結婚できたからって、それで幸せだったかというと、そういうことじゃない。
結婚してからのほうが遥かに大変だった。子供ができてからは本当に大変だったし、今も現在進行形でいろんな悩みを抱えている。
以上。