2021-03-30

なぜ「労働力」の購入に際して消費税が支払われないのか?

消費税はあらゆる消費にかかる間接税である。それは次のような仕組みで最終消費者負担することになっている。

(1)原料会社 原料代5000円 消費税500円(A) 計5,500円  原料会社→国 500円納税

(2)企業   製品販売10,000円 消費税1,000円(B) 計11,000円 企業→国 (B)-(A)=500円納税

(3)消費者 11,000円支払い (間接的に1,000円を国に納税

これが消費税の仕組みだ。消費者から国に払う1,000円は、そこまでの過程担当する各事業者が間接的に支払う。これを間接税と言う。

だがちょっと待って欲しい。ここで言う「原料会社」に相当するのは給与を対価として「労働力」を供給している我々も同じではないだろうか?(たとえば「電力」を供給する電力会社は原料会社一種で、当然消費税を取る。) ならば、我々は給与について1割の消費税企業請求するべきではないだろうか? 「いや、給与が1割増えてもそれはまるまる国に納めるだけっしょ」という人、それは考えが浅い。なぜなら、我々は「労働力」を生産するために、商店などから生活必需品(原料)を消費税を払って購入しているからだ。従って、仕組みとしてはこうなる。

(1)商店 生活必需品10万円 消費税1万円(A) 計11万円 商店→国 1万円納税

(2)労働者 労働力販売 20万円 消費税2万円(B) 計22万円 労働者→国 (B)-(A)=1万円納税 差し引き給与1万円up!

(3)企業 製品販売 30万円 消費税3万円(C) 計33万円 企業→国 (C)-(B)=1万円納税

(4)消費者 33万円支払い (間接的に3万円を国に納税

これ見て、「いやいや、(2)と(4)は同じでしょ。現状(2)がないから(4)も1万円払う必要が無いわけで、(2)を入れたら(4)も1万円上がるんだから、1万円給与が上がっても結果オレたちには1円の得もねーよ」と納得してしまう人もいるかもしれない。だがちょっと待ってほしい。

まず、(2)の労働者と(4)の消費者100%同じだと仮定したら、確かに(2)の段階を入れる制度改正をしても労働者には得はないが1円の損もない。だが、そもそも(2)と(4)は100%同じではない。この世界には給与労働をせずに消費している人々がいるからだ。

この(2)<(4)である現実(みんな、自分が関わっている製品自分で購入できているか?)を踏まえれば、(2)の段階がないせいで労働者給与が低く抑えられている現状は、給与を貰わずに(4)の消費をしている人が一方的に得をしている状況とも言い換えることができる。(2)がないせいで(4)の価格が1万円安いのだから、「働かずに金を持ってるヤツがお得に買い物している」状況なわけだ。これは、給与労働者の得るべき所得が不当に不労所得者に流れている、と言わざるを得ず、明らかに不公正だ。ちなみに個人的見解だが、GOTOなどの政策に覚える忌避感は、どうもこのあたりと関係がありそうな気がする。

そして、給与所得消費税が上乗せされれば、この不公正は解消され得る。よって、私は「全ての給与には労働力購入に関わる消費税10%を上乗せするべき」だと考える。どうだろうか。

なお、「いやいや、非給与所得者には年金受給者もいる! 彼らの生活が逼迫するだろ」というご指摘もあるかもしれない。だがそれは、年金本質貯金と考えているから起きる問題だ。年金本質貯金ではなく(でないとあれだけ制度をころころ変えることへの正当性がないし、生涯にわたって支給されたり、死んだとたん打ち切りになって返金がないことと整合しない)社会保障である。そして、社会保障というのは、現役世代の力が十分に担保されていればこそ安定的運用が期待できるものである年金担保するために現役世代に不合理を強いるのは、老人を背負っている若者を老人が鞭で叩いて「ええい!速く走らんか!」と怒鳴っているようなもので、長い目で見ればただの愚策だ。従って、この話で年金受給者のことを持ち出すのは、スジが違う。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん