もう30年ぐらい前の話。
担任は新任の先生で、いきなり5年生を持つには負担が大きかったからか、副担任がついた。
おじいちゃん先生は普段ほかのお仕事をしてて、週に何回か助っ人にくる感じで
授業というよりは雑談しながらいろんなことを教えてくれるおじいちゃんて感じで
話が逸れすぎて理科の授業が道徳の時間に変わってしまったりしていた。
私は、いつもニコニコニコニコしている小柄でかわいらしいおじいちゃん先生が好きだった。
ある日、校庭で女子3人くらいとおじいちゃん先生で雑談していたとき、
おじいちゃん先生には息子がいて、その息子さんがマンガ家をしているという話になった。
おじいちゃん先生はもったいぶってなかなか教えてくれなかったけれど
最終的には息子さんの名前を教えてくれた。
「えっ!知ってる!○○(雑誌名)に載ってる人や!お兄ちゃんが買ってる!」
その場にいたのは女子ばっかりで
私たちはきゃあきゃあ騒いだ。
『そっかぁ、君らでも知ってるんかぁ』って
嬉しそうに恥ずかしそうにしていた。
そんで、その年のうちにおじいちゃん先生、突然亡くなってしまった。
ほんとに突然。
たしか天気が悪くてすごく寒かった気がする。
私はそのお葬式の時に一回だけ、漫画家をしているという息子さんを見た。
お葬式のあと、どういうタイミングだったか忘れてしまったけどクラスのみんなの前でおじいちゃん先生の奥さんがお話をしてくれる機会があって、
(最初にも書いたけどおじいちゃん先生は学校の先生がメインのお仕事ではなくて
お仕事を継いでくれる人がいなくてたいへんなの、と奥さんは話していた。
私はその時、おじいちゃん先生は息子さんに自分の仕事を継いでほしいとは思ってなかったんじゃないか、ということを奥さんに伝えたかったけど
小学生の私にとってクラスみんなの前で過去のエピソードを持ち出して奥さんになにかを伝えるというのはハードルが高すぎて無理無理の無理だった。
そこから30年、おじいちゃん先生のお仕事は別の人が引き継いで、息子さんは息子さんのお仕事の世界で活躍を続けている。
こないだふとその息子さんの名前をググってみたら
その当時から数年前まで実家を継ぐ継がないですごく葛藤していた内容のインタビュー記事が出てきて
やっぱりこの話したほうがいいんじゃね?と思った。
息子の名前を教え子が知ってたこと、名前を聞いて子供らがきゃあきゃあなったことをめちゃ誇らしく思ってたと思うよ。
私たちが知らないだけでおじいちゃん先生はもしかしたらその話を奥さんや息子さんにしたかもしれない。
これを読んでる他人様にはどこにでも転がってるようなちょっとお酒が美味しくなるほっこりエピソードでしかないかもしれないけど
もし、もし、息子さんが
「親父は最後まで俺の仕事を認めてくれなかったな~」みたいなことを思ってる、または思ってたとしたら
いやいやいやいや、そんなことないから!大丈夫よ!めっちゃデレてたよ!あなたのお父さん!!って背中バンバンしてあげたいなと思って書きました。
いつかそのうちファンレターでも書いて送ろうかなとか思いながら30年経ってしまったので
このままでは死ぬまで書かないなと思ったので手軽にネットに書き込んでしまいました。
どうにか息子さんに届くといいなぁ。
誰か心当たりあったらおしえてあげてください。