母親に言うと「そうかなぁ?」と実感していない様子だった。
友人に親父の自慢をするのはどうかと思う。
ツイッターに流すのも何か違う。
けど、どこかに文にしておきたい衝動があって、ここに書くことにした。
自分の中での父親の認識は、かなりの長い間『冴えない良い親父』だった。
平日は朝早くに家を出、IT企業に出社し、家族を養ってくれる。土日は、自分が希望すればアウトドアや映画に連れて行ってくれる。
そんな良い父親な一方で、部屋のPC周りには大抵酒の空き瓶が1つは置かれていたりする。部屋を覗くと、殆どは漫画・アニメ・映画を見ているか、ゲームをしているかのどれかだ。
趣味の話題も、父とは好むジャンルが被らない為、アニメなどについて深い会話をする事も少ない。
悪い人間では無いが、冴えない親父の区分に入る、そんな印象だった。
暇そうにしていた自分に白羽の矢が立ち、勉強をしながらアプリを作成する事になった。
最初はまだ良かった。変数や配列などの基礎中の基礎は、生粋の文系である自分でも、高校数学までの知識で理解出来た。
問題は、アプリ開発時だった。なんとか数日で基礎中の基礎だけ叩き込んだ自分は、母親の期待するアプリの作成に着手した。
数字を文字として画面に表示するにも一苦労、エラーを理解するにも一苦労だった。
swiftでプログラムを書き始める時にあるimportとか、途中にあるoverrideの意味とかもよくわからなかった。
こうすれば良いのでは?と思う仕組みがあっても、書き方がまるでわからなかった。
エラーが起きたとき、それをコピペしてググる知恵まではあっても、ブログなどに書かれた用語の知識は無かった。
swiftは父親も知らない言語の為、すぐに答えが出るわけでは無かった。
けれど、父親はエラーを的確に調べ、言語変換のやり方をググり、最後にはアプリを作り上げてしまった。
自分が諦め、一度作業を止めて、部屋でダラけようかと廊下を歩いた時。ふと覗いた酒瓶の転がる部屋で、父親はswiftとSafariを見比べていた。
どんなコードをどこに入れればいいのか判断する知識。エラーが起きた時の対応の経験。やり遂げる忍耐力。
知らなかった、冴えてる親父の一面が垣間見えた。
一概に、先を生きるだけで賞賛されるべきとは言えない。だが、人というものは、生きている時間に応じて何かしらの経験はどこかで積んでいるのだ。
そう強く実感した。