その子が入って1年近く経った頃、彼女は時々体調を崩して休んだり、勤務中も具合が悪そうに見えることが増えた。
部活もやっている子だったので、両立できているとはいえ疲れたんじゃない?とみんなは言った。
彼女は外でやるタイプの運動部で、大会シーズンは夏場に真っ赤になった顔で出勤した。
体調を崩しながらも部活は頑張っていたようで、いろんな大会で勝ち進んでいたようだった。
「どっちかっていうと黒くなるタイプなんですけど、赤くなっちゃいました。焼きすぎたのかな?」と彼女は笑った。
焼ける以前よりも彼女はどちらかというと赤ら顔の印象が強かったけど、
夏を過ぎて、シミやそばかすよりも赤みが残ってファンデーションを買い替えた、と言っていた。
彼女は部活を引退し、就職も決まり、シフトを増やしたのか顔を合わせることが増えた。
風邪予防かと思ったら、どうやら長いこと風邪を引いているらしかった。
熱とだるさが続いていると言っていた。
私は医療系の大学で勉強していたので彼女の長引く風邪に違和感を感じていた。
店長にも相談し、親御さんに連絡をしてもらい、休ませて病院に行ってもらうこともしばしばあった。
貧血体質だという彼女は血液検査でも指摘され鉄剤を飲んでいたけど、それ以外は問題がなかったらしい。
そこまでしても問題がないと言うのならこれ以上私がお節介をかけるのもな、
と具合が悪そうな彼女に無理をさせないようにするくらいしか出来なかった。
それから私が就活で退職し2ヶ月が経った頃、バイト先の店長から連絡があった。
彼女が亡くなったらしい。
1ヶ月前から某大病院に入院していたが、悪化が早く亡くなる一週間前から意思の疎通が難しいほど弱っていたという。
診断は全身性エリテマトーデスだった。大学でアホほど勉強させられた疾患だ。
いつ頃から発症していたのかは今更分かることではないし、本当に彼女の体質だったのかもしれない。
でも、10代以降の若い女性に多い疾患なのだ。男女比は1:10とも言われている。
彼女の母親は、あんなに血液検査もしていたのに、抗核抗体検査はやっていなかった、と葬儀で話していた。
今になって思うのだ。
彼女の発熱やだるさといった風邪の症状、貧血、その他諸々は、ひょっとしたらこれのせいだったのではないかと。
彼女の赤ら顔は、SLEの特徴である蝶形紅斑だったのではないかと。
医者ではないからそんな区別はつかないし、医者以外が人に診断まがいのことをしてはいけない。
結果論でしか無いけど、それでも、どこかで気づけなかったのだろうか、早いうちに何か出来なかったのだろうかという後悔が強い。
今でも職場で誰かが体調を崩し「あの子は体が弱いみたいで」とか「私こういう体質みたいで」なんて声を聞く度に、
亡くなった彼女のことを思い出し不安が脳裏をよぎることがある。
SLEは膠原病というジャンルで昔から知られている割に症状から疑いにくいのかな…と自分も含めて思うのだ。
女性は他者の遺伝子を持つ胎児を宿すために、男性とはまた違った免疫のバランスが取られているという。
そのバランスを崩した結果自己に対する免疫を持ってしまうのではないか?故に女性に自己免疫性疾患が多いのではないか?という説があった。
でもキモくて金のないおっさんが体調不良を訴えてもサボりたいだけだとしか思わないんですよねわかります
婦人科もそう。 「女性特有の疾患」といわれると男性医師は全部「安心」してしまって詳しい検査なんかしない。 AI補助診断か女医をどんどん増やしてほしいのに既得権にしがみつく...