2018-02-22

昔の恋

僕はある恋をした。去年の1月の末頃の話だ。

相手マッチングアプリで知り合ったカザフスタンから来た女性だった。

初めて会った時はラーメン屋に連れて行った。来日したての彼女自分勉強したという拙い日本語を使って、自分のことや、カザフスタンのことを頑張って話していた。

ただ純粋に1人の女性として魅力的だった。彼女日本大学大学院に進学することを目的来日して、日本語学校に通っていた。カザフスタン日本企業で働いていた彼女は、日本での進学に向けて頑張っていた。そんな彼女に、僕は恋をした。

彼女友達と3人で東京ドームシティ遊んだ。寮を出て先の友達と住む家を探す、という時には通訳、というと聞こえはいいけどどちらかというと家に関する説明日本語でする、ということもした。

彼女のことが毎日頭に浮かんでいた。2歳年上の彼女大人に見られたくて、彼女が好きなタバコをもらってふかしてはむせたりもした。

最後に会ったのは、だいぶ前になる。スカイツリーかすみ水族館に行こう、と話していたが、まだバイトをそんなにしてない彼女にはどっちも値段が高くて、ソフトクリームを食べることになった。その後彼女は具合が悪くなって、すぐに帰ってしまった。

それ以来、彼女からは連絡がなかった。僕はてっきり、何か失礼なことをして、嫌われてしまったのだと思っていた。何度かメッセージを送ったけど、一向に既読がつかないから、それこそブロックされてしまったのだと思っていた。

それからの僕は、普通に暮らしていた。勉強バイト趣味。全部、それなりにやって。9月には彼女もできた。今も付き合っている。彼女と恋に落ちた、それだけだった。もちろん、付き合う前、恋に落ちる前に、一瞬カザフスタンから来た女性、好きだった人のことが頭によぎった。でも、嫌われてしまったのだとしたら、どうしようもない。そう思って諦めた。

それからは、あまりその人のことを考えることはなかった。第一彼女がいるわけだし、考えるタイミングもなかった。

そうして、半年弱が過ぎた今日、突然その人から連絡が来た。その人は、昔と変わらない感じで、連絡をしてきた。僕はびっくりして、てっきり何か家に関して問題が起こってしまったのかと思った。でも、違った。

その人は、僕と連絡が途切れた頃、東京ドームシティ遊んだ友達と仲が悪くなってしまい、引っ越ししたことや、それこそ大学院について色々調べることで忙しかったのだという。

僕は、ああ、嫌われた訳じゃなかったんだな、と思った。とりあえず、久々に近況報告を兼ねて通話をすることにした。

そこでその人は、1年間の日本語学校で学ぶ留学ビザが切れるので、カザフスタンに帰るのだと語ってくれた。そこでお世話になった人、日本で会った人に連絡を取っているのだという。

大学院試験は落ちてしまったらしい。でも、その大学院教授と話すことができ、「日本での就職にはその分野の修士課程を修了したことがあまり役に立たないこと」「もし研究職に就きたいのなら、入るのも一つの道だということ」を教わったらしい。

そして、彼女は帰ることを決めた。僕が日本就職するのはどうかと訊ねると、試験が終わってからではもう遅く、前に就職活動した時には日本語能力試験のグレードN2をまだ取っていなかったので、就職もできなかったのだと教えてくれた。

僕は、どうしようもない寂しさを感じた。好きだった、というだけであり、今恋心を抱いているわけではないのに、ただ、寂しかった。

彼女はこうとも言った。せっかく日本語を1年頑張って勉強したけど、帰ってしまったら忘れてしまうだろう。少し、もったいなく思う、と。

何故だか、落ち込んでいる自分がいる。ただただ、寂しさを感じている自分がいる。これが何の寂しさなのかはわからないが、とても孤独感に苛まれている。

実を言うと、僕はその人に好きだと言ったことがある。しかし、彼女日本に来る時に、カザフスタンでの彼氏と別れたばかりで付き合う気にはなれない、と言って断られた。

きっと彼女は、特に覚えてないだろう。ただ、それでも、僕はしっかりと覚えていた。

彼女彼女なりに考えた結果が、カザフスタンに帰るということなのだろう。僕は彼女の何でもないし、止める権利もないだろう。

でも、何故だろうか。いざそう告げられると、まるで自分が1人になってしまうような感覚になってしまう。

これが恋でないことは確信できる。何故なら、前とは全く違った気持ちでその人のことを考えているからだ。それでも、不思議もので、やはり寂しさを感じてしまう。それこそ、もったいないなぁと思う気持ちや、残念だなぁといった気持ちが大きいが、それでない「寂しい」という気持ちが湧いて出て来るのである

僕は、彼女が帰る前に一度会ってみようと思う。どうなるかはわからないけど、それが僕の、僕がどうするか、ということの道標になる気がするからだ。

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