俺の住む町には変人が多い。
身近なところでは、使い勝手の悪い超能力を持っているタオナケ。
いつも耳栓をつけているミミセン。
変装が得意なドッペル。
分かるのは白黒のツートンカラーの服装を好むことと、俺たちの仲間であるということだけだ。
そして類は友を呼ぶってヤツなのか、そんなシロクロの住まいに最近新たな変人が加わった。
その人物は自分をガイドと名乗り、未来からやってきたと言っている。
風貌からして"それっぽい"し、不思議なアイテムをたくさん持っているし、俺は本物だと思うんだけど大半の人は信じない。
兄貴いわく「どちらにしろロクでもない奴だから、いたずらに関わるな」ということらしい。
その日も仲間たちとシロクロの家で遊んでいると、ガイドは何かをせっせとせっせしていた。
俺たちの存在に気づくと、いつも隠そうとするので何をしているかは知らない。
「何してるの?」
「い、いや、キミたちに言うことじゃないよ。どうせ信じちゃくれないだろ」
ガイドはこの時代の世間の風当たりに酷くやられたらしく、軽い人間不信に陥っていた。
それが気の毒に思えて、俺たちは兄貴の忠告を無視してガイドを慰めることにした。
「そんなことないよ。信じるさ」
ガイドにとって、この言葉はよほど堪えたらしく感極まってしまった。
その素直な反応に、俺たちも朗らかになる。
「う、嬉しいよ。キミの兄とは大違いだ」
しかし兄貴のことを悪く言うものだから、そんな気持ちはすぐに引っ込んだ。
仲間たちも兄貴には懐いていたから、ガイドに対して怪訝な表情をしていた。
「身内のことを悪く言わないで欲しいな」
ドッペルが俺の声真似をしてガイドに言った。
代弁するなら、せめて自分の口で言えばいいのに。
「あ......ああ、ごめんね。ボクの時代では、血の繋がりによる関係性はあまり重要視されなくてね」
「そうなの?」
「うん。ボクの時代では、子供は生まれてくる前段階で様々な審査を受けるんだ」
「審査って、どんな?」
「細かく言えば色々あるけど、子供の将来が安泰かを判断するため、ってのが原則としてあるね......あ、そうだ」
それはスマホに似た形をしていたが、やや不格好な四角形になっていた。
「生まれてくることが確定していない段階の子なら、このアイテムで人生を覗き見ることができるよ」
≪ 前 「覗き見る、って一体どういうメカニズムなの?」 「説明してもいいけど、真面目に聞く根気があるかい」 俺たちは顔を見合わせる。 ミミセン以外は真顔。 つまり関心のない...
≪ 前 「で、どういうのが調べる相手として向いているの?」 「そう遠くないうちに妊娠する可能性のある人がいいね。その方が正確にシミュレートできるし、未来にもあまり影響はな...
≪ 前 「こんなに大所帯で、一体どんな用なんだい?」 「学級新聞で夫婦の生活について書こうと思っていまして、その取材をと......」 「へー、そうなんだ。じゃあ、ここで話すのもナ...
≪ 前 そうして映し出された子供の人生のハイライトは......なんというか、“ビミョー”だった。 どん底というほど不幸でもないが、かといって成功や華やかさとは無縁に近い。 上手...