久しぶりに、アルジェリアのプロジェクト関連の記事を見かけ、まだやっていたのかと思った。
私はこのプロジェクトで、某社の現地事務所の統括担当として、雇用契約を結ぶ直前までいったが、ほんとうに行かなくてよかったと思う。
この案件に実際に参加した人の声がもっとネット上に上がってくることを願っている。
アルジェリア政府との契約段階においても、過酷な価格交渉をしてくるアルジェリア政府と、伊藤忠を含むJVとの間で板挟みになり、日本人の自殺者が出たと聞いている。
施工期間中においては、現場と宿舎との往復をするにあたって、つねに軍や警察の車両に囲まれて移動しなければならないと聞いて、まったく自由がないと思い、私は参加するのをやめた。
鹿島の場合、アルジェリア工事の代金支払いをめぐる交渉が長引いた一因について、「行政制度や商慣習の違いがあった」と説明する。
というわけだが、日本のゼネコンがアフリカの案件をやる場合、つねにコミュニケーションの問題があったことは言及されていない。
アフリカには公用語がフランス語となっている国が少なくない。アルジェリアもそうだ。
フランス語圏で働く場合、現地のさまざまなカウンターパートと、英語でコミュニケーションするだけでは済まない場合が多い。
政府に提出する書類、サブコントラクタとの間で交わす書類から、日々の会議録にいたるまで、すべてフランス語に訳さなければならない場合が多い。
だが、フランス語で仕事をすることのできる日本人のゼネコン社員は、ほとんどいない。
その結果、書類の作成や重要なミーティングは、少数の通訳・翻訳者をとおして行うことになる。
かぎられた人数の通訳・翻訳者は、そのほとんどが土木の専門家ではないため、ボトルネックとなり、コミュニケーションの速度を著しく遅らせ、精度を下げることになる。
このようなコミュニケーションを日々やっていると、日本人のゼネコン社員の間ではフラストレーションが高まり、現地政府の担当職員を含むカウンターパートとのあいだで、少なからず摩擦が起きる。
各社は、こうした海外での契約交渉に精通した人材の確保・育成に取り組んではいるものの、十分なリスク管理体制は構築できていないのが現状だ。ある準大手ゼネコン幹部は、「政府が間に入るODA(政府開発援助)案件や、日系企業が発注する工場建設などでない限り、海外の工事で資金回収をすることは相当難しい」とこぼす。