とボヤいているあなた!
気持ちは分かります。
自分もいまいち痴漢の何がそんなに不快なのか分からない一人でした。
だけど、色んな女性の意見を聞くうちに(主にツイッターで)どうやら、何に反感を覚えているのかが分かりました。
つまるところ、彼女たちは暴力に屈服させられるのが嫌なのです。
学生時代、DQNに逆らえなかった自分を思い出してみてください。
思い出したくもない人はこんな想像をしてみてください。
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廊下を歩いていると向こうから恐い先輩が大股でドッカドッカと周囲を威嚇するように歩いてきます。
あなたは身を隠すべくそっと廊下の隅に寄りましたが、運悪く肩がぶつかってしまいました。
「ぁあ゛?なにすんだォラ」
怒っています。
今にも殴りかかってきそうです。
「なんか言えよォラ」
泣きそうになりながら、場を和ませようと愛想笑いをしてみます。
「笑ってんじゃねえぞオメェ!!!」
火に油でした。
3センチの距離まで顔を近づけてメンチきってきました。
ガチギレです。
「謝れや」
すみやかに謝りましょう。
「ごっごっごっ」
しかし声が震えてうまく出ません!
「きぃこえねええぞ!!!!」
汗と涙と鼻水がとめどなく出てきます。
「ごめんなしゃい」
DQN先輩も満足したようです。
「ふん」
踵を返して歩き出そうとした先輩は、その前になぜかもう一度こっちを向きました。
途端に泣きそうな顔になったとおもいきや、
「ごっごっごっ…ギャハハハ!!!」
先輩はどうやら機嫌が良いようで、殴られる心配はなさそうです。
そのまま先輩は大笑いしながら歩いて行きました。
先輩が廊下の角を曲がって見えなくなりました。
あなたは石になったように突っ立ってましたが、全身を弛緩させてほーっとため息をつきます。
「だっさ」
女の子の声です。
目を向けると、あなたが片思いしているクラスのヒロインがいるではありませんか!
一部始終を見られていました!
完全に軽蔑されました。
彼女は一生、あなたをDQNに絡まれたら鼻水垂らして許しを請うマヌケと認識することでしょう!
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いかがでしたでしょうか?
なんとも言えない、いやーな気持ちになったことでしょう。
自分の存在意義だとか、価値だとかが全否定されて、こんな思いするぐらいなら今すぐ死にたいと思いませんでしたか?
ギークはてなーな男性諸君になら、この感覚を理解してもらえると思います。
でもちょっと待ってください。
このDQN、別に人に手を出したわけでもなければ、理由もなく絡んできたわけでもないですよ?
歩いていたら後輩がぶつかってきてムカついたから、謝らせただけです。
さっきのやり取りを少しスマートにするなら、こんな感じでしょうか。
(肩がぶつかる)「いたっ」
「いたた…ちょっと、気をつけてくださいよ」
「え?すいません」
「なにそれ、ちゃんと謝ってください」
「まったく…」(歩き去る)
これならそう反感を買うこともないでしょう。
さて、何が違うのでしょうか。
プライドを傷付けられるかどうかが決定的に違うのです。
痴漢にあって、犯人を警察に突き出せるようなら、ちょっと触られるといった程度の話です。
セクハラも同じです。
ただ、多くの女性は痴漢にあっていながら、自分の力で犯人と戦うことはできません。
痴漢は冤罪でも問答無用で有罪になるほど、女性側に圧倒的に有利な状況でも、何もできません。
恐いからです。
多くの女性は本能的に男には逆らえないようになっているのです。
そして、後から、自分の大事なプライドをいいように弄ばれた記憶に悩まされるのです。
自尊心が根こそぎ奪われていくのです。
ただちょっと声を出すとか、手をつかむとか、その程度のことすらできなかった自分に自己嫌悪するのです。
これで女性がなぜああまで痴漢という犯罪を憎悪するのか分かっていただけたのではないでしょうか。
痴漢冤罪や女性専用車両は男性差別か、など、様々な問題が論じられていますが、そこで女性の側の気持ちが分からなくなった時に、この話を思い出していただけたらと思います。