もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらのインクさんのレビュー
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話題の本ということで読んでみたのですが、予想以上に凄いシロモノでした。
主人公の川島みなみちゃんは重い病気で入院してしまった親友の代わりに野球部のマネージャーとなり、彼らを甲子園へ導くことを決意します。
しかし野球はもちろんマネージャーについてもよく知らないみなみちゃんは、それについて学ぼうと思い立ち、本屋でドラッカーの『マネジメント』を購入しました。
帰宅してマネジメントを読みはじめたみなみちゃんは本文に出てきた『真摯』の二文字を見て、突然泣き出します。
なお、この時みなみちゃんがなぜ意味もわからなかった『真摯』という文字を見て号泣したのか、その理由が後に語られることはありません。
そして翌日からみなみちゃんは何かにとりつかれたようにマネジメントを信奉しはじめます。
問題が起きる→マネジメントを読む→解決!
終盤まで延々とこんな流れが続きます。
一般的な物語ならそう簡単に話が終わるはずなどなく、むしろさらなる困難が待ち構え、それにどう立ち向かうかが重要になってくるわけですが、そんなものドラッカーのマネジメントの前では無意味です。
これさえ読んでいれば人生は全てうまくいく。週刊誌で宣伝している願いのかなう宝石のような効果がマネジメントにはあるのです。
少なくとも、本書を読んで私はそういう印象を受けました。
そんなに凄い本なのだから、みなみちゃんがより深くマネジメントにのめり込んでしまうのは必然でしょう。
病状が悪化して今まさに死にかけている親友が文字通り必死に何かを伝えようとしているのに、その言葉をさえぎってマネジメントの朗読をはじめるみなみちゃんの姿は、カルトに洗脳された信者そのものです。
元マネージャーを失った悲しみを乗り越えて決勝戦に挑む野球部員たち。
ちなみに今までろくに練習もしてこなかった彼らは、マネジメントのおかげで普通に練習するくらいには成長していましたが、その程度の彼らがどうやって決勝まで進むことができたのかは謎です。
決勝戦の相手は当然、甲子園出場のために日夜凄まじい練習と実戦で鍛えてきた強豪です。
結論から言えば、みなみちゃんの学校はその強豪校に勝利して甲子園への切符を手に入れるわけですが、勝利できた理由は「なぜか」です。
なぜか相手がどんな球を投げてくるのか分かった。なぜか今日は調子がいいといった具合に、本文中ではやたら「なぜか」という言葉が繰り返され、選手たちは謎の覚醒をします。
もはやマネジメントは関係ありません。
それについさっき元マネージャーが亡くなったばかりなのに、今日はいつもより調子がいいというのはあんまりではないかと。
それとも、元マネージャーという大切な存在を失ったことで選手たちは自分の中に眠っていた未知なる力に目覚めたのでしょうか。
女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んでいる隙に、他の部員たちは久保帯人先生の『BLEACH』を読んでいたに違いありません。
そして甲子園当日、野球部のキャプテンがインタビューを受けるところで物語は幕を閉じるのですが、
比較的まともだと思っていた人物が実は誰よりも洗脳されていたことが判明する、ホラーとしてはかなり秀逸なラストが待っています。
あらすじだけでも十分おそろしいのに
「日本の企業は体育会系出身者が多いから運動部に所属していると企業に採用されやすい」
など、お前それドコ情報だよと問い詰めたくなるようなことを平気で言う登場人物や