はてなキーワード: 簗場とは
鮎を食べたことがない人に、鮎を勧めてみようと思って筆をとることにする。
最初からこんなことを書いてしまうと勧める気あるのか?って感じだが、不思議な事に、鮎を都内にもって帰って食べても美味しくはない。
実家で食べる鮎は、冷えようと一晩経とうと二晩経とうとそこそこ美味しい。
いや、美味しいわけではないんだが、残ってればつい食べてしまう。
都会の、ほこりっぽさや、水の塩素臭とはまた違った、植物が腐敗したような匂いがどこか漂っている。
スイカの匂いとか、キュウリの匂いとか言われるが、まさにその通りで、カブトムシが寄ってきそうな匂いだ。
そうは思えないんだが、濃度と他の成分との混ざり具合の妙だろうか。
とかく、生き物臭さの匂いが鮎の匂いだ。そしてそれは田舎の匂いだ。
水道水も、温泉も、川も、空気も、その辺じゅう鮎の匂いがする。あるいは鮎が田舎臭がする。
理由はよくわからないが、都内に戻って鮎の匂いを嗅いでも、それほど食欲がわかない。
都会にいると、鮎なんかよりもトンコツラーメンの匂いが嗅ぎたい。
少し、美味しんぼ的なウンチクをたれると、天然鮎は体が赤黒く、いかりや長介みたいな下顎がシャクレた顔をしてる。
養殖鮎は、首の付け根から背中にゼラチンっぽいプルプルの透明な油の固まりがある。
しかし、鮎においての「養殖鮎」とは、一度も川に出ていない鮎を指し、一度放流されればみな天然鮎となる。(日本中の鮎のほとんどは、琵琶湖生まれだ)
さて、そろそろ前置きを終えて、鮎の食べ方に移る。
鮎の食べ方だが、前エントリで書いたとおり、パサパサにすればするほど美味しい。
稚鮎なんかは落ちる脂もないので、天ぷらでも食えるが、稚鮎限定。
田舎ではポピュラーな食材なので、唐揚げや衣をつけてフライにしたりするが、一度も美味しいと思ったことはない。
食べ方は、串に刺した鮎をアタマを下にして、炉端に刺して焼くの一択。
備長炭ではない普通の炭で、遠目の強火で一時間くらい焼き続ける。
時間の決まりも、焼き上がりの目安も、これはもう、経験でしかなく、次々鮎を焼いていくが、焼き上がりの順番は焼きはじめの順番とは異なる。焼けたものから客に出す。
夏にバーベキューをするように、若鮎を食べ、秋に芋を食うように、ホクホクの卵が入った落ち鮎を食う。
塩焼きしたものを、研いだ米と一緒に炊きあげる鮎めしという料理もある。
さらに脂はすっかり抜けきってしまうわけだが、それも嫌いではない。
鯛めしなど、せっかくの鯛から脂が抜け落ちてしまうのですごく勿体無いと思ってしまうんだが、鮎だと許せる。
さてさて、炉端に限るなどと書いてしまったため、
「炉端でしかも鮎を出す店なんかねぇじゃないか。しかも焼き具合は経験としか言い様がないとか、都心じゃ食えねぇ」
とお嘆きのことであろう。
実際のところ、天然鮎のコースを出す店は都内でも新橋の鮎正くらいしか知らない。
ミシュランの星もついた有名な店ではあるが、高いし、移転して普通の小料理屋風の店になってしまったので、デートにも向かないと思う。
現実的なところだと、高速で栃木県まで行き、那珂川沿いの簗場で食べるのが一番安上がりだし、面白いと思う。
梁場とは、鮎を取る巨大な仕掛けをといい、隣に炉端焼きを食わせる海の家ならぬ川の家とも言うべきバラックが建てられている。
高級魚のようなイメージがあるが、田舎で食べるとそう高いものでもない。
簗場だと、塩焼きが1kg2000円くらいだった気がする。
何尾ではなくてキロ売りで塩焼きを出すくらいに、ご当地ではシシャモやメザシと同じくらい身近な食べ物だ。
具体的なデートプランはだな、とりあえず、彼女(友達)に果物のような匂いの不思議な魚、天然鮎のウンチクと、値段の高さを語って布石を打っておく。
宇都宮の餃子が食べたいとかいう彼女(友だち)に、簗場の存在を教えて行き先を簗場に。
生ごみのようなクソど田舎の空気の下で、適当に2kgくらい焼いてもらって、塩焼きを食べる。
まあ、たいして美味しい魚じゃないからね。