2023-06-14

「許さない」を"I won't forgive you."と訳してはいけない理由

anond:20230611072022

以前軽く紹介したけど、その後色々調べたりネイティブに尋ねたりしてわかったことがあるので補足ということで

まず前提として、海外におけるアニメ漫画翻訳では「許さない」を"I won't forgive you."と訳すことは基本的誤訳扱いとなっている

まり、単に下手な訳とかつまらない訳ではなく明確に誤りとみなされるほどにはまずい翻訳だということ

なぜかというと、両者がカバーしている意味範囲にズレがあるため、「許さない」が本来持つニュアンスが全く伝わらなくなってしまうから

言い方を変えれば、日本人が「許さない」と口にするような状況で英語ネイティブが"I won't forgive you."と言うことはほとんどないと言っていい

  • 具体的にどう違うのか

まず第一に、"forgive"は「許す」と比べてかなり意味の幅が狭い。

具体的には、シリアスな場面にしか使えない(軽い場面では"Excuse me."を使う)。

例えば貴重な壺を割ってしまったとき"Oh please forgive me."と言えるが、くしゃみ相手の顔にかけてしまった、といった軽い場面では"Excuse me."を使う。

一方で「許す」はシリアスな場面でも軽い場面でも使える。

この違いが混乱を招いてしまうようで、例えば日本人ゲームで負けたりしただけで「許さない」と言うので、英語ネイティブからすると大げさすぎて面食らってしまうらしい。

アニメキャラパンチラを見られただけで「許さない」と言うのも大げさに聞こえるとか。

  • 軽い場面の「許さない」が大げさすぎるなら、シリアスな場面での「許さない」は"I won't forgive you."とピッタリ合うのでは?

これも色々な理由からうまく行かない。

ドラゴンボール悟空セリフ「仲間を傷つける奴は許さねえぞ!」を例に取ってみよう。

日本語だと最高に盛り上がる決めゼリフという感じだが、これを"I won't forgive you!"と訳してしまうと、バカバカしくて拍子抜けに聞こえてしまうらしい。

なぜかというと、"I won't forgive you."は「許さないという感情受動的に示すだけで懲らしめようという能動的な意図は表さない」から

要するに、日本語だと「許さない(だから懲らしめてやる!)」という反撃の意思までもを含んでいる(恐らく)のだが、"forgive"だと「許さない(それだけ。別に何かするわけじゃない)」となってしまう。

なのでネイティブからすると全く敵に対する脅しに感じられないため、いまいち盛り上がりに欠けてしまう。

ネイティブにとっては以下のように直接的に脅すようなセリフのほうがしっくりくるという。

I’ll punish those who’d hurt my friends!(仲間を傷つけるやつは懲らしめてやる!)

No one gets away with hurting my friends!(仲間を傷つけておいてタダで済むと思うな!)

Anyone who hurts my friendswill pay!(仲間を傷つけるやつは……報いを受ける!)

まあこんな長々とした説明より下の例のほうがわかりやすいと思う。これは日本語が堪能なネイティブに書いてもらったもので、違和感がすごく明快に言語化されてる。

ネイティブからすると"I won't forgive you."は「一生根に持つぞ」みたいな意味合いになるとのこと。

スカートの中を覗かれた女の子「一生根に持つぞ!」→過剰反応

孫悟空「俺の仲間を傷つけるやつは、心の中で一生根に持つぞ。」→え、そこで止めたりやり返したりするんじゃないの??ダサッ。


他にも、"I won't forgive you."は許す許さないが意味なす相手でないと使えない。

例えば、パートナー浮気されて別れたとする。その時相手に"I'll never forgive you!!"と言うのは正しい使い方。

この場合は、相手を許せば関係が続いたかもしれないが、許さなかったか破局した、という点で許す許さないが意味を持つ。

しかし、悟空の例では、敵は許してもらおうとは端から思っていないわけで、そんな状況で"I won't forgive you."と言っても、ネイティブからすると「許そうが許すまいが相手は気にしないでしょ」とバカバカしく聞こえてしまうらしい。なので、こちらが許すかどうかを気にする相手でないと使えない。

また、自分自分にとって大切な物や人が大きく傷つけられた場合でないと使えず、自分関係性のない相手や、まだ何もしてきていない敵に対して言うのも不自然に聞こえるとのこと。

  • まとめ

"forgive"は「許す」より意味範囲が狭く、シリアスな場面にしか使えない

軽い場面での「許さない」を"I won't forgive you."と訳すと大げさすぎる

シリアスな場面の「許さない」であっても色々な理由から自然に聞こえることが多い

→「許さない」と"I won't forgive you."はほぼ別物だと考えた方がよい

記事への反応 -
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      • なんて言えばいいかを一番上にかけよ

        • (引用元のurl貼るとなぜか投稿できないので省略) 許さないの翻訳例 He's going to pay. He's not getting let off the hook. He's won't get away with it. He's dead meat. He's a dead man. He's dead to me. I won't stand ...

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          • 「パンチラ」って言葉を正しく理解できていないのか? 「スカートの中を覗かれる」ことを「パンチラを見られる」とは言わないんだよ

      • forgiveって否定文で使うもんじゃない気がする

      • そもそも英単語と日本語訳は一対一対応してるわけじゃないんだから、言葉同士を直接結びつける行為はやっちゃだめって英語の先生に習ったよ。 日本語→英語 ではなく、 日本語→...

      • >スカートの中を覗かれた女の子「一生根に持つぞ!」→過剰反応 いや当然の反応だろ 何処が過剰反応なんだ?

      • スカートの例を出したおかげでコメントが変な方向に行ってるな こういう面倒くさいことになる例え使うなよ

        • むしろ参考になる。盛り上げるためにはこういう文章が良いのだと。はてのよりbotみたいなやつゴロゴロいるから

      • はえ~と思いながら見た ちょっと長いけど説明上手やね

      • 性的表現の部分だけ過剰反応するバカはどうにかならんのか

      • 昔あった 「絶対に許さない。顔も見たくない」 ってやつだとシリアスな上に具体的行動はできないシチュエーションだから合うんだろうか

      • 「許さないという感情を受動的に示すだけで懲らしめようという能動的な意図は表さない」 あーる君: 「許さないぞ!」 さんご: 「許さないだけなのね」 ってやり取りを思い出...

      • なるほど、英語の意味が狭いというより、日本語の許す/許さないにその後の行動までが含まれてるのか 許す(から今後優しく接する) 許さない(から今後乱暴に接する) なんか、謝れば許...

    • Weblioに載っているこれらの英文も下手な翻訳なのだとか 私は嘘つきのあなたを許さない! I won't forgive you, you liar! - Weblio Email例文集 私は彼の無礼を許さない。 I will not forgive his incivility...

    • やたらネイティブ強調するけど、ほんのちょっと英語勉強したらわかるレベルやろ。

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