「ドラえも~~~~ん!!!!」
ドラえもんに泣きついた。
「あー……すまないんだけど、僕、もう帰らなくちゃいけないんだ」
「帰るってどこへ?」
「未来へだよ」
ドラえもんがそう言った瞬間、のび太とスネ夫の目の前でドラえもんの体が少しずつ透け始めた。
「どどどどうしたんだよ!」
「ごめんよ。実は君たちと遊んでいる間にタイムマシンを壊してしまったみた……うわっ!」
ドラえもんの言葉を最後まで聞かず、二人は慌ててドラえもんに飛びつきその体を揺さぶった。
「なんでそんなことするんだよ!ドラえもんがいないと僕ら困るじゃないか!」
「そうだぞ!なんとかしろよぉ!」
「無茶言うなぁ!僕は今すぐ戻らないと大変なことになるんだ!頼むから離してくれぇ!」
二人がかりでもびくともしないほど強い力でしがみつく二人をどうにか振り払うと、ドラえもんは大きく息を吐いた。
「……とにかくだね、僕はもう行かないといけない。だから、最後にこれを渡しておくよ」
ドラえもんがポケットに手を入れ取り出したのは、小さな箱だった。
それを見た途端、のび太の目が大きく見開かれた。
「そっ、それは……まさか……!」
「ああ、『どこでもドア』だよ」
「いやっほおおおう!!」
「ただ、これは試作品なんだ。まだテスト段階のものだけど……」
「それでいい!最高だぜドラえもん!」
「早く使ってみようぜ!」
興奮して飛び跳ねる二人にドラえもんは苦笑しながら言った。「まあまあ、落ち着いて。まずはこの『どこでもドア』の説明をするよ。この扉を開けるとどこに繋がっているのか分からないけど、とにかく開けてみるしかないんだ。もし変な場所に繋がってしまったら、最悪帰れなくなるかもしれない」
「そっ、それでもいいよ!行こうぜ!」
「うん、行こう!」
二人は同時にドアノブを掴み勢いよく回そうとしたが、それよりも先にドラえもんがその手を止めた。
「待ってくれ!本当に行く気かい?もしものことがあっても大丈夫なのかい?」
心配そうに見つめるドラえもんを見て、二人は思わず吹き出してしまった。
「それに、こんな面白そうなことを途中で放り出すなんてできないだろ?」
二人は笑いながらそう言った。そして、改めてドアノブを握ると大きく深呼吸をした。
「よし!じゃあいくよ!」
「うん!」
「せーのっ!!」
掛け声と共に二人はドアを思い切り開いた。すると眩しい光が差し込み、一瞬目がくらむ。次の瞬間、二人は全く別の場所にいた。
そこは森に囲まれた空き地のような場所で、辺りには大きな屋敷があった。しかし、その光景に驚いたのも束の間、今度は別の場所に移動していた。
先程までいた場所とは打って変わり、そこには見たこともないような立派な建物が建っていた。さらに、そこかしこで大勢の人が忙しなく走り回っている。
「ここは……一体どこなんだ……?」
「なんか……すごく騒々しいところだな……」
「いや、多分違うと思うよ」
突然背後から声をかけられ、二人は驚き振り返った。そこには、メガネをかけた優しそうな青年が立っていた。
「驚かせてごめんね。僕はエル・マタドーラ。君たちはどこから来たんだい?」
エルと名乗った男は優しく微笑みかけた。その笑顔につられて、二人は口々に自分たちの名を名乗った。
「ぼっ、ぼくは野比のび太です」
「オレは剛田武だ」
「ノビタくんとタケシくんだね。よろしく。ところで、どうしてここに来たんだい?」
「それが……僕たちにも分からないんです。気がつけばここにいて……あなたはここで何をしているんですか?」
「僕かい?僕は今からここで働くんだ。今日からこの城で働くことになったからね。……おっと、急がないと遅れてしまう。それじゃあまた会えるといいね。バイバーイ!」
エルはそう言うと慌ただしく走っていった。
「おーい!待ってくれぇ!」
慌てて後を追いかけようとする二人だったが、その時再び光に包まれたかと思うと、またしても別の場所に移動していた。そこは薄暗い森の中だった。
「ここは……さっきの場所とは違うみたいだな。それにしてもあの人、足速すぎだろ!」
「でもどうしよう……このままだと遅刻だよぉ……」
「そうだなぁ……あっ!そうだ!これ使えばいいんじゃんか!」
「あぁっ!!そっか!すっかり忘れてた!」
ドラえもんから渡された『どこでもドア』を思い出した二人は早速使おうとしたが、そこで二人は重要なことに気付いた。
「……でもこれ、使い方が分からないぞ」
「……うん」
「参ったな……ドラえもんなら知ってると思ったんだけど……う~ん……あっ、そうだ!」
「本当か?……お、あった!」
ポケットの中から取り出したのは、先程の箱と同じ大きさの箱だった。それを見た瞬間、のび太の顔が輝いた。
「これだ!きっとこれが説明書に違いない!」
「良かったぁ!これで安心して使えるよ!」
のび太とスネ夫は嬉しそうに箱を開けると、中に入っていた紙を取り出した。
「えっと……なになに?この道具は……」
「……タイムマシン」
のび太は手に持った紙の上の方に書かれた文字を読むと、少し間を置いて叫んだ。
「……はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ