2021-08-03

読売新聞掲載している都民の外出自粛率グラフについて

東京都民の外出率グラフ

2021/7/9の記事 (期間: 2020/1-2021/7)

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210709-OYT1T50079/

2021/8/3の記事 (期間: 2021/1-2021/7)

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210802-OYT1T50422/

このグラフがびっくりグラフな点

出自粛率と外出者数について

上記のようにグラフ自体問題があるが,「自粛率」「外出者数」も言葉を聞いて想像するものとはかなり異なると思われるため,注意が必要である

https://cigs.canon/article/20200422_6369.html に,自粛率と外出者数に関する定義がある.

住宅地からの「外出者数=昼間人口-夜間人口」を見積もり、各地域住民の「自粛率=1-(ある日の外出者数)/(平常時の外出者数)」を見える化する

モバイル空間統計に収録されている、深夜0時から5時までと、朝9時から夕方17時までの500mメッシュ流動人口から東京都の各500mメッシュについて、2020年1月(6日から31日まで)の平均的な昼間人口と夜間人口を算出した。

> 各住宅地(500mメッシュ)の「外出者数=夜間人口ー昼間人口」を見積もり、そして、地域で合算する。例えば、東京都住宅地の夜間人口は約530万人、平常時の平日では昼間人口は約360万人となり、外出者数は約170万人である

> 本稿では、平常時に「昼間人口<0.8×夜間人口」となる地点(500mメッシュ)を住宅地定義し、そこから流出の様子を観測する。

重要なところでtypoすんなやと思うが,住宅地では夜間人口が昼間人口より多いのだから,「外出者数=夜間人口ー昼間人口」が本来意図しているものだろう.

定義上,通勤・通学で住居のエリアを離れると,外出者としてカウントされやすい.つまり自粛率を下げる要因になる.リモートワーク・遠隔授業が実施されていない会社学校に通う人が「自粛」するには休むしかないのだが,これは新聞の読者が思い浮かべる「自粛」と一致しているだろうか.

また,7/9のグラフでは,2020年8月では自粛率がマイナスになっていることから,「お盆時期にはコロナ禍前を上回る人が外出したとみられる」とコメントがついている.定義に照らし合わせれば,この時期の外出者数が平常時の外出者数を上回ったことを意味する.ここで,外出者数は夜間人口が昼間人口に対し多くなればなるほど増加する.つまり,1日中家にいない場合,たとえば帰省中は「外出者」としてカウントされない.一方,例年であれば帰省するところ,家に残って昼間は出勤を含めた外出を行えば,「外出者」としてカウントされる.すなわち,「お盆時期にはコロナ禍前を上回る人が外出したとみられる」はミスリードであり,例年は帰省していたところ,帰省しなかったため自粛率が低下した,とみるのが妥当ではないだろうか.

事実,全国1,100名を対象とした2020年お盆に関する調査では,78.2%が「帰省する予定はない」と回答している.

https://www.cross-m.co.jp/news/release/20200716/

出典となる論文における言葉とその定義はより良いものが思いつかないし,妥当だと思われる一方で,新聞記者はもう少し慎重に記事執筆すべきではないだろうか.グラフについては『統計ウソをつく法』を熟読して欲しい.

  • 対数グラフじゃねえんだよなんでそんなガッチャガチャなんだ

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