「それが今のドッペルを形作っている、いわばルーツってわけだね」
なぜドッペルがそうしようとしたのか、具体的な理由はハッキリしない。
そりゃあ、いくらでも推測はできる。
ドッペルは一人っ子だ。
兄弟という関係性に憧れがあって、俺の格好を真似ている、とか。
或いは、兄貴に何らかの思いが芽生えたというのもあるだろう。
初会話のきっかけとなった人違いが転じて、今の変装技術に繋がったとも考えられる。
色々な理由が複雑に絡み合い、その中には俺たちじゃあ全く想像もつかないものが含まれているかもしれない。
兄貴なら、それが分かるんだろうか。
「俺は別に、ドッペルのルーツがあるつもりで話しちゃいない。何が、どうやって、どのくらい影響したかなんて実際のところ把握できるわけないだろ」
「じゃあ、今の話に何の意図が?」
「今のは、あくまで俺目線での、ちょっとしたエピソードに過ぎない。それでも、今のお前達が求めてるであろう答え、そこに繋がる方程式が存在している」
「え、どこに」
「少しは自分で考えたらどうだ……お前らの学校じゃあ、先生の話を聞くだけでテストで満点とれるのか」
その時の表情は、どこかで見覚えがあるものだった。
ああ、アレだ。
兄貴が式の説明をどれだけ丁寧にやっても、俺はロクに問題を解けなかった。
いや、解く気がなかったんだ。
あわよくば兄貴が宿題をやってくれればいい、そういう淡い期待を捨て切れなかったから。
そして、この場において、そんな期待をしていたのは俺だけじゃなかったらしい。
「言い訳させてもらうけど、この問題例は私たちには難しすぎるわ」
「俺が思っている以上に、お前らはガキだってことか。そんなガキ相手に大人気ない出題をした、こちらの落ち度だな」
そういうことにしといてやる、という言葉が密かに続くのを察した。
「俺の話から変な妄想されても困るしな。仕方ないから出血大サービスだ。今回だけ、答えギリギリのヒントを提供してやるよ」
「さっきも言ったように、あの話は俺目線でのものだ。つまり視点を合わせるべきはドッペルのほうではなく、俺の言動ということが分かる」
「そもそも僕たちはドッペルのことが知りたくて話を聞きにきたのに。なんでお兄さんの方に注目しないといけないんだ」
事実とはいえ、俺たちを事あるごとにガキ呼ばわりしてくるのは癇に障る。
だけど、ここで大人しく耳を傾けることが、今の俺たちにできる唯一の大人らしい態度だった。
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久しぶりにリアルタイムで見たわ
はいはい……昨日の靴下探して散歩しますよ……恋は盲目……リピートアフターミー……恋は盲目……
≪ 前 「俺はドッペルを弟と見間違えた。その状況を切り抜けるため、どうしたか思い出してみろ」 「えーっと、陽気に振舞ってウヤムヤにしようとした?」 「確か、気のいい兄(に...
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