2020-12-16

[] #90-5「惚れ腫れひれほろ」

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「何なのよ、いったい……」

辺りに重苦しい雰囲気が漂う。

タオナケはその居心地に耐えられず、蚊帳の外だった俺たちに助けを求めた。

やっと頭が冷えてくれたらしい。

俺たちも、途中で止めるべきだったという負い目があるので一緒に考えることにした。

「私、間違ったこと言ってないと思うけど、何か悪いことした?」

「間違ったかどうかと、悪いことしたかどうかは似て非なるものだよ」

「些かデリカットがなかったな!」

「……もしかしてデリカシーって言いたいの?」

「シロクロは黙っててくれ。いまボケられると話がこんがらがる」

まあシロクロの言ってることも的外れってほどじゃない。

ドッペルが怒ったのは、タオナケの無神経な発言理由だろう。

だけど具体的に何がどうダメだったのか、本当のところは俺たちにも分からない。

からいからこそ、慎重に距離を詰めるべきだったんだろう。

下手に踏み込みすぎると、今回みたいに深い溝ができてしまう。

そして踏み込んだ側が開き直ると、その溝はずっと埋まらない。

それはタオナケも分かっていて、望むところではなかった。

から俺たちの意見に納得いかない素振りはしつつも、いつもの調子反論はしてこない。

「何にしろ、悪いと思ってるなら、それを伝えるべきじゃないか

「そう、ね……とりあえず謝った方がよさそうね」

「じゃあ、ドッペルを探しに行こう」

こうして、ひとまず話がまとまったように思えた。

「そうだ! とりあえず謝れば、とりあえず許してくれる!」

だけどシロクロの何気ない言葉に俺たちはギクリとした。

かに、謝ればドッペルは許してくれるだろう。

でも“とりあえず謝った”ところで、それは“とりあえず許された”だけ。

たぶん根っこの部分で、俺たちの関係はギクシャクしたままだ。

「あやま~るなら、たいどでしめそ~よ」

シロクロは手を叩きながら、即興の歌を披露している。

なんだか遠まわしに馬鹿にされている気分だけど、歌っている内容は尤もだ。

本当の意味で謝るなら何に対してなのか理解し、そこに誠意を込めないといけない。

「『自分が何者かって考えたことはある?』……か」

あの時ドッペルが投げかけた言葉意味を、俺たちは知らないままだった。

たぶん、そこに重要ファクターがある。

とても単純にも思えるし、捉えどころがないようにも思える問い。

もちろん今の状況で、ドッペル本人に聞いても答えてはくれないだろう。

そりゃあ、仲間だからって全てを分かち合う必要はないかもしれない。

でも「言ったところで、どうせ理解されない」と思われたたままなのは、仲間として致命的だ。

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