転職をして、これまでに接したことのないタイプの人が上司になった。
混乱しているのと、二人きりの道中相槌に困っているので、整理する。
一つの言葉を定義通りの意味で使わない。論理的な運用をしない。
それは本人も「自分は言葉ができない」と自覚しているらしいのだけど、例えば「この商品を売り出したい、売れると思う。競合を調べてほしい」という指示を受けて報告と疑問点の確認をすると、「わからない、何を売り出すかも決まっていない。」と言われる。よくよく聞くと先の発言は「この商品を(将来的に、何らかの形で)売り出したい(が、どのような形態にするかはわからない、価格は100万円になるかもしれないし10億円かもしれない)、(根拠はないが)売れると思う。(自分も商品の仕様などはわからないので何を調べてほしいとも言えないのだが)競合を調べてほしい」ということで、彼の中では矛盾していないらしい。
でも私は競合調査の優先順位を確認したし、調べるべき競合製品の仕様も確認した。「なる早で調べますね」「うん」「この仕様のものを探せばいいんですね」「うん」。
ひどいときには「AはBである」と「AはBではない」は矛盾しないこととして彼の中で成り立つ。Aの意味するものはCにもDにもなるからだ。「うん」はほとんどなにも意味していないらしい。
そんな人とどう会話したらいいのか、なるべく自分の中で完結させて、報連相だけしようと思った。
よくわからないことについて断言する癖がある。先の競合調査も「よくわからない、決まっていない」という情報さえ与えてくれればそのベースで調べるのに、間違った情報を断言されるので無駄が生じる。外出先への長い道中、明らかに誤っているだろうことも、詳しく知らないがかなり怪しい情報も、たくさんあった。単に「会社にXXはありますか」というような確認でも、彼の回答が間違っていることは度々あった。すべての発言を「多分」と「だと思う」でサンドイッチして聞いて、多分じゃ駄目なことについては自分で確認しようと思った。
まぁとにかく持ち上げる。そういう人は褒めておけばよいので楽だとも思ったけれど、彼があまりにも自分を褒めるものだから相槌もワンパターンになるし心は冷え切るし、ときには同意できない内容もあって、自分の空々しさが不安になる。キャバ嬢に学びたいけど、合コンのさしすせそに思いつく限りの表現を足して褒めたし相槌も打った。あんまり思ってもないことは言いたくない。延々と語れる共通の趣味でも見つけよう。
癌になれば家のローンを払わなくてよくなる契約があるそうで、自分は年齢的にそういうローンは組めなかったけど、どうだとお得情報みたいに勧められた。そう都合よく癌になれるわけじゃありませんし、と言ったら、どこかの医者に診断書を書いてもらったらいいんだと得意げに言われた。話を逸らしたけどこれ一つでも結構、違和感を拭っていいものか悩ましい。倫理面については下手に同意すると後に引けなくなったら困るので、線引きをしよう。悪いことだということは(本来あるべき形とは違うにせよ)わかっているはず、それを私が良しとしないことも察する能力があるはず。
「君には期待しているんだ」
「ありがとうございます、頑張ります」
「頑張らなくていいんだ、のびのびやってほしい」
「ありがとうございます、そう言っていただけてありがたいです」
「『明日仕事に行きたくないな』って思って仕事するなんて生産的じゃないからね」
「そうですね、楽しく仕事したいですよね」
「好きなようにやって困ったり失敗したりした時だけ僕のせいにしたらいいんだ」
「いやそんな…」
「いや本当に、だってそうだろ?部下の失敗の責任を取るのが上司の役目で…」
というような会話が心底うっとうしい。「頑張ります」は封じられ、ひたすら「ありがとうございます。」と「いやそんな…」を繰り返すしかないような、彼の思いやりに満ちたあるべき論が続く。内容にはおおむね同意できるけれど、わざわざ私に向かって語らないでほしい。語るにしても一度にしてほしい。安心させようとしてくれているなら本当にありがたいけど、長い。くどい。相槌を打てない。
どうしたらいいんだろう。「ありがとうございます。」マシーンになったら彼の口も止まるんだろうか。
論理的って言葉が出てきた時点でああってなる どうしてそういうものに謎の憧れがあるの? 読んでないけど特に何もする必要性は無いです