「おい、フォンさん! お上はいつになったら企画を持ってくるんだ?」
「そろそろ取り掛からないと、放送シーズンに間に合いませんよ」
父とシューゴさんは焦っていた。
当時のハテアニは自転車操業でやっていたのに、企画が全く来なかったからだ。
企画がなければアニメを作りようがなく、漕げなくなった自転車は倒れるしかない。
「フリーランスのアニメーターとの契約、場合によっては様々な専門スタジオに依頼する必要があります。その他スタッフやスケジュールの確保も早めにしておかないと」
「えーと、それがですね……」
フォンさんも気になって、上役の動向を調べていた。
「はあ!? どういうこった」
『女子ダベ』は、週刊ダイアリーにて連載されていた日常系の四コマ漫画(全4巻)。
「女子がダベる(喋る)」ので『女子ダベ』と略されているだけで、方言女子が出てくるわけではない。
そんな知る人ぞ知る漫画は、なぜか大額を投じてアニメ化された。
当時その手のジャンルが流行っていたから、企画を手に入れた上役は「いける」と思ったのかもしれない。
或いは熱烈なファンだったのか。
アニメーター達の努力もあり人気はそこそこで終わるも、それでも予算に見合った成果とはいえなかった。
有り体に言えば大赤字だ。
その結果を顧みて、親会社はスタジオを解体するつもりだったらしい。
「それは些か理不尽じゃないですか? こっちは言われたとおりの予算で過不足なく作ったのに」
「視聴者からの評価も悪くないんだぞ。それで大赤字だってんなら親会社の配分ミスだろ!」
だが父たちは不服だった。
「ワタシもスポンサーたくさん募るとか、製作委員会とか作ろうって言ったんですが、“それだと社員に給料を払えなくなる”って……」
「大赤字になってちゃ意味ねーだろ。リスクヘッジ込みでアニメの企画もってこいよ!」
子会社のスタジオで働く、雇われアニメーター達にできることは少なかった。
では、“できること”とは何か。
上が企画を持ってこないのなら、自分たちで企画を用意してアニメを作ればいい。
「しかし原作不足の昨今、上がOKしてくれるとは思えません。原作を買うのだって金がいりますし」
「となると……オリジナル作品かよ」
こうして生まれたのが『ヴァリアブルオリジナル』、通称“ヴァリオリ”だった。
≪ 前 それから数日後。 「それでは第○○回、『チキチキ! ヴァリオリ制作委員会』の会議を始めます」 総務である父の宣言と同時に、その会議は厳かに再開された。 「ズズズッ...
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“激動の時代”という文言は、さしずめボジョレー・ヌーボーのようなものだ。 ティーンエイジャーの俺や、その時代に実感の伴わない人間にとっては「10年に1度の出来」という評価ほ...
久しぶりにリアルタイムで冒険見たわ
≪ 前 すぐさま父たちは急ごしらえの企画を携え、親会社に乗り込んだ。 「オリジナル作品~? ちょっとバクチが過ぎるんじゃないのぉ?」 「ビジネスってのは大なり小なりギャン...
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≪ 前 世に跋扈するアニメの多くは、その製作の全てを一つの会社が行っているわけではない。 クレジットを見れば誰にだって分かる(俺は一度もマトモに見たことはないが)。 背景...
≪ 前 絵の部分においても徹底された。 キャラクターデザインは線を少なくし、左右対称が基本。 背景を減らすため、キャラクターのアップを増やして誤魔化した。 作画ミスが起き...
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≪ 前 こうして何とかヴァリオリは「とりあえず見れる作品」として世に出た。 この国で初めてアニメが放送されてから、脈々と受け継がれてきたリミテッド・アニメーションの粋を集...
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≪ 前 脚本だけではない。 “幻の10話”に携わったスタッフは、そのほとんどが聞き馴染みのない者だった。 つまりシューゴさんなしで、代理スタッフで構成されているってことだ。 ...
≪ 前 「もし、あの“幻の10話”に、オレの指摘したリスクよりも大きなリターンがあるなら、封殺されるのはオレだったろう。オレのことをよく思っていない上役は、当時からたくさん...
何度も言い続けてきたけど一向にやめないね みんなつまんないって言ってるし いい加減やめたほうがいいって
≪ 前 「まあオレが何も言わなくても、放送局か広告代理店にマトモな奴が一人でもいれば、そこでストップはかかっていただろうがな」 「でも今こそ向き合ってみませんか、この“幻...