こうして何とかヴァリオリは「とりあえず見れる作品」として世に出た。
この国で初めてアニメが放送されてから、脈々と受け継がれてきたリミテッド・アニメーションの粋を集め、低予算でありながら完成に漕ぎ着けたんだ。
スポンサーがいないため、外部からの横槍が入ってこなかったのも不幸中の幸いだったといえる。
料理をプロが作っても、レシピ自体に不備があったり、素材に支障があれば美味しくはならない。
それでも「腹がふくれればいい」、「腹に入れば一緒」だと言って飯を作る人だっているんだ。
だから携わったスタッフたちは、誰も本作に期待してはいなかった。
どこかで見たような世界観やストーリー、キャラクターデザイン。
作画は崩れていないのに、見てるとなぜか不安になるビジュアル。
それらを独特な演出でまとめあげた(誤魔化した)怪作だった。
完成させることに必死だったので、監督のシューゴさんすら魅力を説明できない。
しかし、その後の展開は多くの人が知るところだろう。
ある時期から少しずつ“流れ”が変わっていったんだ。
ネタ半分の評価は、口コミで視聴者が増えていくにつれて正当かつ磐石なものへと変わっていく。
インフルエンサーもこぞって首を突っ込み、賞賛や逆張りの意見で盛り上げた。
一部の評論家は「良作の条件は揃っていた」と後出しジャンケンをする。
有象無象は自己欺瞞のボード片手に、こぞってビックウェーブに乗ろうとした。
“流行るべくして流行った”という必然か、“流行ったから流行った”という偶然か。
何がどう作用したのか、何が決定的な出来事だったのかは未だ判然としない。
確かなのは、“ブームになった”という“事実”と“結果”のみだ。
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“激動の時代”という文言は、さしずめボジョレー・ヌーボーのようなものだ。 ティーンエイジャーの俺や、その時代に実感の伴わない人間にとっては「10年に1度の出来」という評価ほ...
久しぶりにリアルタイムで冒険見たわ
久しぶりにリアルタイムで見たわ
≪ 前 そこからは、多くの有名コンテンツが辿る道だ。 コミカライズにノベライズ、関連性のないゲームとのコラボなど。 様々なマルチメディア展開がなされ、ヴァリオリは“出せば...
≪ 前 脚本だけではない。 “幻の10話”に携わったスタッフは、そのほとんどが聞き馴染みのない者だった。 つまりシューゴさんなしで、代理スタッフで構成されているってことだ。 ...
≪ 前 「もし、あの“幻の10話”に、オレの指摘したリスクよりも大きなリターンがあるなら、封殺されるのはオレだったろう。オレのことをよく思っていない上役は、当時からたくさん...
何度も言い続けてきたけど一向にやめないね みんなつまんないって言ってるし いい加減やめたほうがいいって
≪ 前 「まあオレが何も言わなくても、放送局か広告代理店にマトモな奴が一人でもいれば、そこでストップはかかっていただろうがな」 「でも今こそ向き合ってみませんか、この“幻...