2018-01-20

ネトウヨヘイトスピーチは本当に放置されていたのか?

ネトウヨが登場し始めた頃、連中の垂れ流すデマヘイトスピーチを『あいつらなど放っておけばいい』『荒らしスルー』と放置した結果、ここまでレイシズムが横行する事態を招いてしまった」…。

こういう言説を、至る所でよく見るようになった。

自分も始めのうちはそういうものかと思っていたが、最近はどうも「そういう言説自体フェイクなんじゃね?」という気がして仕方がない。

端的に言えば、「後付け結果論」「今の基準感覚で当時を裁いている」という感じがしてしまうし、表立ってこれに対して「そんなことはない」と反論する声が見られないのも、何か異様だ。

あなたはその時どうしていたの?

かつて自分の知人に、反戦市民運動系のサイト運営している人がいた。

当時はイラク戦争の頃だったが、彼のサイトにもよくネトウヨ掲示板荒らしにきていたようで、彼は「まーたウヨク荒らしに来ているよ、困ったもんだ」とぼやきながら、かなりきつい調子で1つ1つ反論していた。

また、自分が当時よく読んでいた多くのリベラル左派ブログでも、コメント欄荒らしに来るネトウヨに対して、放置などせず丁寧に逐一反論している管理人が多かった。

(中には放置しているブログもあったが、あくまでも管理人方針が「賛同的なものも含めてコメントには一切反応しない」というものだったためだと思う)

卑近な例だが、こうしたことを思い出すと、少なくともこの人たちはネトウヨに対して「荒らしスルー」などせず、きっちり対峙反論していたわけで、そういう行為を「なかったこと」にしてしまうのは、やはり乱暴議論なんじゃないか

そう思うと、「ネトウヨデマ放置した結果、レイシズムの横行を招いてしまった」と主張している人々は、どうにも主語曖昧だし、自分からすれば、「で、あなたはその時どうしていたのですか?」と言いたくなる。

反証可能性

先日もあるジャーナリストが、「ネトウヨがここまで広まったのは、左派リベラルが彼らを放置たから」と主張しているのを見かけた。

ネトウヨがここまで広まったのは、左派リベラルが彼らを放置たから」

という仮説がもし成り立つとすれば、逆に、

左派リベラルネトウヨ放置せず適切に対処した結果、ネトウヨの抑え込みに成功した」

というケースがあってもいいはずだが、そんな国はどれほどあるのだろう、と自分は思う。

世界を見渡すと、日本より左派リベラルに力があるとされる国々ですら、デマヘイトスピーチを平然と言ってのける指導者政党勝利したり、日本ほどひどくはないかも知れないがヘイトスピーチヘイトデモヘイトクライムが横行したり、強弱の差はあれ「抑え込んでいる」とは言いがたい国が多い。

こういう状況を見て、「ネトウヨヘイトスピーチ放置せず適切に対処していれば、ここまで横行することはなかったろう」と結論づけてしまうのは、どれほど正しいことなのだろうか。

やらかした者よりも、止められなかった者の方が悪いのか?

かなり前、「戦争を起こした奴よりも、戦争を止めようとして止められなかった奴の方が、皆に責められ裁かれる時代が来るのかねぇ」と書いたことがあるが、「ネトウヨ放置したせいで…」という言説がここまで広まっている現状を見ると、もうそうなる下地はできているんだな、と思う。

しかし、やっぱりそれはおかしいのではないか

戦争が起こるのは、戦争を止めようとした者が弱すぎて止められないせいなのか?

戦争を起こした者よりも、戦争を止めようとしたが弱すぎて止められなかった者の方が、より厳しく責められなくてはならないのか?

戦争」を「ヘイトスピーチ」「差別」に置き換えると、完全に同じ問題になる。

そう考えると、「ネトウヨデマ放置したせいでここまでレイシズムが広まってしまった(?)」ことよりも、「『ネトウヨデマ放置したせいでここまでレイシズムが広まった』という言説が、多くの反レイシストの間に広まってしまった」という現実の方が、危ないというか後々響くんじゃないか、と思う。

(2020.1.14 加筆修正した)

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