久しぶりに中学の頃好きだった子の名前で検索したら結婚してた。一瞬頭がぐらっときて吐き気がした。
大学生のときにも調べたことがあって、mixiやFacebookやサークルのホームページで彼女の神々しい名前を見た。高校時代に付き合いはじめた男とずっと付き合ってるらしかった。
その男と30になってやっと結婚したみたい。相手は慶応の医者。一人の男としか付き合わずにそのまま結婚したんだからその点は素敵だなと思った。いまどき珍しい純愛。とても素敵なカップルだ。
でも今回とにかくびっくりしたのが、彼女が思ったよりはるかにブスだったということ。原型がない。会っても誰なのかまったくわからないはず。
中学の頃はものすごい美少女で異次元の存在だと思っていたのに。いまはもうその辺にいくらでもいるただの幸せそうなおばちゃんだった。
大学生時代のmixiやFacebookやサークルの写真見たときも、「あれ?」って思った。記憶よりはるかにブスだったので。自分の記憶では、キモオタの自分がちらと見るのも犯罪的なのではと思うくらいの聖なる光を放つすさまじい美少女だったのに、ネットに掲載されている写真ではその辺にいる普通のブスでしかなかった。でもmixiの友達からのコメントでは彼女のことを「美女」などといっている紹介文も書かれていたりした。うーんよくわからない。まあでもネットのやりすぎで美醜の判定基準が厳しくなってるんだろうと思うことにした。実際ネットではそれほどブスでも不細工でもない男女が嘲笑される傾向にある。自分はそういうのに染まっていないとは思いつつやはり気づかぬうちに染まってしまったんだなと反省すらした。これが世間の「美女」基準なのだ。美女は多いほうがいい。
でも今回夫婦の写真や検索して出てきた企業ページ見てさらに衝撃を受けた。まだ30歳超えたばかりなのに、40代でもおかしくないような容姿。幸せ太りなのか妊娠なのかなんなのか、だらしない姿。その姿はまさに人間そのもの。
いままでの自分の中の彼女はいったいなんだったんだろう。中学の頃から30歳過ぎる今日に至るまでずっと彼女のことが好きだった。ずっと憧れてた。大学のときの写真を見てもまだ揺るがなかった。でも今日すべてが終わってしまった。何もかも無かったことになった。すべては嘘だった。自分が見ていた世界はただの幻だった。存在しなかった。彼女は世界のどこにも存在しなかった。かつて一度も存在したことがなかった。
じゃああなたは一体誰なんだ。記憶の中のあなたは。弱い心が作り出した幻想。何もかも虚構。現実など自分は見ていなかった。何も知らなかった。盲目だった。
世界は汚いものだと思っていた。そんな世界の中で彼女だけが輝いていた。でもその彼女も現実に吹き消されてしまった。彼女もまた現実へと戻った。こんな世界でどうやって強く立って生きていけるだろう。この醜い世界で、醜い人間たちのささやかな幸せを見ながら。
今まで好きで好きでつらかった。生きてたらいつか会えるんじゃないかと思って自殺もしなかった。でもあなたはあなたではなく、あなたはあなただった!
彼女は羊水のような穏やかな愛のある声で笑っていた。あの声はその辺のおばちゃんになった今でも変わらないんだろう。すべてを包んでくれる大いなる海のような深い声。うふふと笑う美少女だった。