まあ、今からもういろんなところで出尽くした感のある「テレビがおもしろくない理由」を話すんだけど。
そもそも「おもしろい」と感じる大前提として「共感」というものがある。
我々は「共感」できるからこそ「おもしろい」と感じることができる。
「共感」とは「あるある」とか「わかるわかる」とか「だよね」という形でおもしろさにつながる。
まったく異文化の言語の違う民族の「笑い」がまったく理解できないのは「共感」できる部分がほとんどないからだ。
また「下ネタ」が全世界共通して「笑い」になるのは「下ネタ」が人間の根源的な部分につながり「共感」できる部分が増えるからだと思う。
「おもしろい」と感じるもう一つの視点として「本音」というものがある。
我々が良好な人間関係を維持していくためには適度に「嘘」をつかなくてはいけない。
「お前の顔ってめちゃくちゃブスだよね」
なんて言葉は地位や立場やポジションがある人間は絶対に口にしてはいけない。
たとえそれが「本音」であっても決して公の場では言わない。
良好な関係を維持するためにはそれが「本音」であっても「おきれいですね」と嘘をつかなければならない。
それが大人な態度だ。
でも、だからこそ「建前」ではない「本音」が「わかるわかる」としておもしろいと感じ「笑い」にまでつなげることができる。
普通なら
「お前の顔ってめちゃくちゃブスだよね」
という言葉を言おうものなら一瞬にして社会的地位から抹殺される危険を伴う。
でも、ある限定した場で特定の条件付で文脈が成り立っているならこの言葉を強烈な「笑い」につなげることができる。
美は世界共通で、人間として共感でき、そしてそれが人々の本音だから。
テレビでよく「本音」を言っているっぽい人がうけるのはその「本音」が人々の「共感」を呼ぶからだと思う。
「本音」というのは「笑い」や「おもしろさ」として強力な武器となり得る。
だけど「本音」は、逆に格好の攻撃材料を提供することにもなる。
ある程度の地位を手に入れた人や成功者が建前しか言わなくなるのは相手に攻撃材料を与えないためだ。
テレビに出たがっている人は大勢いるし、テレビの仕事につきたがっている人も大勢いる。
その人たちにとっては、テレビに出ることや、テレビに関わる仕事をすることは一つの成功だ。
そして、この「成功」が「テレビに関わり続けること」だとするならば、彼らはこの世界から抹殺されないように気を配らなければならない。
「俺の料理の味は年収300万とか400万の人間にはわからねぇよ」
とは決して公の場で言ってはいけない。
間違いなく100%叩かれる。あっ、言葉を間違えた。叩かれた。
まあ、本人に確認したわけじゃないし、確認しようもないし、きっと今後これについて「本音」で語ることはないだろうから真相はわからないけれど、この言葉には彼の「本音」がベースにあったのではないかと個人的には思っている。
だから、この言葉は、ある特定の集団に対して特定の場所で特定の文脈でなら「笑い」にもなり得た言葉ではあったと思う。
「わかるわかる」「だよね」として。
たまに、テレビのニュース番組なんかで「弱者の味方です」という視点で番組が構成されたりすることがあるけれど、これをその対象である弱者が見ても、共感することができない。
それはそれを作っている人間もそこで弱者のためのコメントをしている人間もすべてが強者であることを弱者は知っているからだ。
彼らが「建前」だけでしゃべっていることが丸わかりだから、下手をすると怒りすら呼ぶことになる。
高いスーツを着てスポットライトを浴びてお金も持ってる人たちが「弱者の味方です」と言ったって「なんだそれ」という感想しか出ない。
テレビに出ているお笑い芸人という職業も一つの「成功者」の職業になったと思う。
はみ出し者の職業ではなく、若者があこがれる職業となり、モテル職業となり、年収の高い成功するための職業となった。
恵まれし者が語る言葉に恵まれない者が共感することはできない。
もちろん共通の文化で育ち共通の言語をしゃべる彼らの話がおもしろいものであることも確かだけれど「金を持っている」「金を持っていない」という視点が入ると「共感」が減る。
長い間苦労してどっかの大会で優勝した苦労芸人が旬になりもてはやされるのは、彼らの苦労時代に「共感」できるからだと思う。
苦労時代があり本音ベースでしゃべれる者が成功者に立ち向かっていく姿に「共感」する。
しかしその苦労芸人もいつしか本物の「成功者」となり旬が終わる。
まとめ。
まとめいるか?
まあ何が言いたいかというとテレビに出ている人間とテレビを見ている人間が乖離してきていて共感できる部分が少なくなってきているということ。
そしていつしか本音をしゃべると叩かれるんでどんどん本音をしゃべることができなくなってきているということ。
だから成功者が建前で作って建前でしゃべっているものを見せられても、「どこをどうおもしろいと感じろ」というのかさっぱりわからないと個人的には思っている。
彼らの言葉が本音から遠ざかるにつれてまったく響かない言葉になっているし逆にそらぞらしく寒い。
というようなことをこの増田を読んで思った。
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