田舎のベンチャー(零細企業)に昨年の4月から新人の男の子が加わった。
1浪後、四年制大学を卒業してすぐの入社。23歳。いわゆる新卒だ。
事務周りの人手不足が予想され、次年度に向けて国の補助金を確保した。
さあ募集開始しよう、というタイミングで取引先から紹介されたのが彼。
田舎では(たぶん)よくある話だ。
田舎のベンチャーの有期雇用に新卒で飛び込むなんて相当な覚悟と度胸がいるものだが、
彼からはそういう類の人たちが持つ芯の強さを感じられなかった。
入社前に一度話をしたことがあるけれど、将来の夢をぼんやりと語ってくれただけで、
具体的なビジョンも持っていなかったようだし、正直なところ、あんまりピンとこなかった。
「田舎でインターネットってもっと可能性があると思うんすよね」
それ以上のことを彼は語ってくれなかったし、語る必要を感じていないようだった。
Officeも普通に使える。業務もそれなりに引き継いでくれている。
本人も仕事に関して特に希望がないので、フロントに出さず、事務作業をお願いすることにした。
とりあえず楽しんでやっているようではある。
文書中の不自然な敬語を指摘したり、来客時のお茶だしを徐々に仕込んだりしている。
当然「ほうれんそう」もできないが、まあこれは一般的な新卒ならしょうがないところか。
とにかく無難にこなすようにはなったが、まだひとり立ちさせるには不安がある。
なにより、コミュニケーションに難がある。
端的に言って、人の話を聞かない。他人のアドバイスを次に反映できないケースがある。
どうやら、優先順位を調整することができないらしい。
要は「ずれている」ということ。
先月のMTGで他の社員から指摘があり、先輩社員数名で彼のOJTを再考することになった。
そう結論づけるに至った。
「こんな人間を雇ってどうするんだ」と不満を言わない社員は立派だと思う。
みんな、彼を一人前にするために知恵を絞ろうとしている。
ビジネス書を読ませよう!と誰かが言った。
彼は歴史オタクだった。司馬遼太郎を愛し、ビジネス書を手に取ることはまずない。
そういえば学生時代に勝間和代は読んだみたいだが、これまた「ずれている」。
活字に慣れている彼なら、もしかしたらビジネス書も面白く読んでくれるかもしれない。
ところが、彼は明確な目標も持っていない(ように見える)。
そんな人間が「こういうスキルを身につけたい」と考えているとは思えない。
(実際、半年たっても彼は業務に関する希望をほとんど言わない)
勤務態度はまじめで、人当たりも悪くない。
事務周りの人手不足はひとまず解消している。
事務作業を延々してもらう分には問題ないが、
3年の雇用期間後に、彼を戦力として迎え入れるほどの成長は見込めないのが現状である。
まじめだが向上心のない彼にどう接するべきだろうか。
"びじねすまいんど"を叩き込めば、自ら仕事をつくれるようになるのだろうか。
仕事振りからして成長を望んでない彼を一人前に育てようという発想が、そもそも正しいのだろうか。
向上心をインストールできるならばすべきだと思う。 でも、インストール出来ないのならば、どこかの雇用調整で切ればいいだけだろう。
そんな風に気にかけてくれる人が存在するというだけでも、その新入社員は羨ましい。
そもそも「仕事は一生懸命やらなければならない」っていう意識が共有されてないと思う。そして、それは強制するものではない。言われたことをして、給料をもらう。 試行錯誤して評...
都会の大企業でも(いや、だからか?) 都会のベンチャーでも より金を稼ぎたい、より名誉がほしい、などその辺の欲望を持ってる奴は沢山見かけるが、向上心を持ってる奴を見かける...
ビジネス書って、半笑いで1冊15分くらいで斜め読みして捨てるもんじゃない?