最近、オーナーは女子フリーターアルバイトさん親子と揉めたり、新人を一度に三人もトレーニングしなくてはならなかったりで疲れたらしく、シフトの穴を自分で埋めるのが嫌で助っ人を呼んだ。コンビニ専門の派遣スタッフだ。
以前も人手不足が極まった時に派遣スタッフが呼ばれたことがあったけど、あの時は同じ人が二週間連続で来てくれたのだが、今回は毎回違う人が来るらしい。
昨日来た派遣スタッフの人は年齢不詳のとても痩せた女性で、お世辞にも美人とは言えない人だったのだが、謎にものすごい色気を放っていた。ので、私はちょっと恥ずかしくて用のない限りずっとその派遣スタッフの人の方を見ないようにしていた。大学時代の先輩を思い出してしまう……ハリセンボンの箕輪さんに凄く似ている人だったのだが、飲み会で飲み過ぎてへべれけになると、何故か私に絡んできがちだった。そんな先輩にハグされて死ぬほどドキドキしたものだが、謎の色気ぶりが先輩と例の派遣スタッフの人とは、すごく似ている……。
謎に色気のすごい派遣スタッフの人は、コンビニ専門の派遣スタッフによくいるタイプで、ちょっとでも暇をもて余すと死ぬのか? ってくらい、なんやかんや細かい雑用をレジ接客の合間にやっていた。
レジにオーナーの字で書かれた、派遣スタッフの人宛てのメモが貼ってあった。「年齢層ボタンは正確に押すこと。」なんでそんな事を最重要事項みたいに書いたんや……。
以前来ていた別の派遣スタッフさんによれば、コンビニ専門派遣スタッフはどの店舗に派遣されてもレジ打ちしかやらせて貰えず、店舗の従業員がバックヤードや事務所に引っ込んで雑用に専念してしまうため、一人孤独にレジを打ちまくることになるのでちょっと寂しいんだという。でも、昨日の場合はバックヤードで雑用なんかしている場合じゃないほど糞忙しかったので、色気のすごい派遣スタッフの人は孤独にはならなかったと思われる。
20時に色気のすごい派遣スタッフの人が上がりで、入れ違いにAさんが出勤して来る予定だった。そんな日に限って、19時40分くらいに機械のことは全くわからないと堂々たる開き直りっぷりのお客様が来店してしまう。その機械音痴のお客様は、まず色気のすごい派遣スタッフの人のレジに行き開き直ったが、生憎、色気のすごい派遣スタッフの人もまた機械に弱く、私の所に助けを求めてきた。
「忙しい所悪いんですが、代わってもらってもいーですか?」
くそかわいい!! なんでこの人これだけの事を言うだけなのにエロかわいいんだろう……と思いつつ、「大丈夫です」と引き受けた。機械音痴開き直りのお客様は、機械のことが全くわからないと言いつつ、家族の為に何かの書面のコピーとポイントカード作りという二件の面倒臭いタスクを同時に持ってきた。なんでこういう類の人達って、じぶんの手に余ると分かっていながら複数のタスクを持ってきがちなのだろうか……。
コピーしたい書面というのが何故か画像で、しかもよく見たらスマホに保存されてもいないものだったので、厄介だった。しかもスマホがiPhone。私はAndroid使いなので、操作方法がさっぱりわからない。こんな時にAさんがいたら、彼はスマホを複数台所持して使いこなしまくっているような人なので、ちゃっちゃと作業を終わらせてしまうのだが。あと20分くらい遅くにお客様が来たんだったらよかったのにと思いつつ、かなり試行錯誤をして書面(iPhoneの画面が時間切れで暗くなる度に失踪する)をiPhoneにダウンロードし、Apple Storeのアイコンを探し、コピー機のアプリをダウンロードし……などと、本来お客様が自力ですべき事を全部やった。これでしくじったら全て私の責任になるという理不尽。めでたくノーミスで書面をプリント出来たけれども。
「ここだけわかんないから書いて」
という。お客様のご家族のメールアドレスだった。何のひねりもなく文法的に正しい英文のメールアドレス。防犯的には危ういけど書類に記入するぶんには、ひねりが利かされていないためにかなり書きやすいのだが、お客様は「だってわかんないんだもーん♪」と言って私に丸投げした。わかんないもなんもない。そのまま写せばいいんだから……。
20時少し前にポイントカードの作成が終わった。色気のすごい派遣スタッフの人は、
「わー、すごーい! さすがですね! ありがとうございますぅ! ポイントカードの作成までしていただけたんです? わるいですねー」
と謎にセクシーボイスで言った。たぶん、女子フリーターアルバイトさんに誘蛾灯に飛び込む虫のように惹かれていくおっさんお兄さん達の気持ちって、今の私の気持ちと似たような感じなんじゃないかなと言った。
Aさんが地味に不機嫌な状態で出勤。Aさんは極度の人見知りだから、おそらく、会ったことのない派遣スタッフが居るのが嫌だったのだろう。
色気のすごい派遣スタッフの人が帰り、客足も途絶えると、Aさんは待ってましたとばかりに喋り出した。
Aさんが言うには、前日の夕方、ヤベェ女から店に電話がかかって来たそうだ。その女性はあまり馴染みのない名の派遣会社のスタッフなのだそう。Aさんが電話を取った時点でキレキレにぶちギレていて、オーナーを出せというから用件を聞いてみれば、
『なんであたしを5回も面接落としたんですか!? 納得行かないんですけど!! あたしの何が悪いっていうんですか!?』
性格? ってAさんは思ったが、そんな事を言う訳には行かないので、オーナーは今不在なので、オーナーに電話で確認して折り返し連絡をしますと言ったのだが、直接聞かなきゃ気が済まないからオーナーのいる時間を教えろと言われたので、早朝と、昼の僅かな時間と午後にももしかするといるかも、と答えたら「ああそうですか!!」と電話を切られたという。
その後、Aさんは一応オーナーに電話で確認したが、オーナーはそもそもその派遣会社とは全く付き合いがないというか、会社名すら知らなかったそうだ。知らないうちに当店を勝手にダミーの求人にされていたのだろうか?
ううちの派遣さんはバックヤードでサボっている。 なぜわかるかというと、普通の人の30%ぐらいのパフォーマンスであるから。 あとは虫がいるとかいう理由で業務を拒否する(静かに拒...