はてなキーワード: 占有離脱物横領罪とは
犯罪者に人権を認めず、その人権を剥奪すれば、現行法の下での犯罪者に対する人権保障をしなくても済むため、その分の事務手続きが軽減されると考えられる。 また、日本国憲法で保障されている裁判を受ける権利もなくなるため、犯罪者を起訴する手間が省ける。
しかし、そうであれば現状より厳しい罰を犯罪者に科せられるかと言うとそうではない。
日本においては刑罰権をもつのは国だけである。国は正規の裁判による判決に基づかなければ刑罰を科すことができず、個人が犯罪者に私刑を加えることは禁止されている。ところが犯罪者の人権を剥奪することで、裁判を受ける権利も剥奪してしまうため、犯罪者は裁判を受けることができなくなってしまう。裁判を受けさせなければ、国は犯罪者に刑罰を科すことができないことになる。
「人権を剥奪した以上、犯罪者は人ではなく動物、あるいは物である」と考えることもできるが、その場合でも動物や物に裁判を受けさせることはできないため、結果としてやはり刑罰を科すことはできない。
「人権のない動物や物であれば、自由に私刑を加えていいのではないか」という考え方もある。しかし、人権のない犯罪者を殺したり傷を負わせたりすることは動物や物を傷つける行為に相当するため、実行者が器物損壊罪に問われることになる。また、人権のない犯罪者を個人が勝手に牢屋に移動させて閉じ込めることは動物や物を勝手に持ち去る行為に相当するため、実行者が窃盗罪や占有離脱物横領罪に問われることになる。
「器物損壊罪や窃盗罪、占有離脱物横領罪とは、持ち主のいる物を壊した場合や盗んだ場合の罪である。だから、持ち主のいない物である犯罪者を破壊しようが何をしようが罪にはならないではないか」という考え方もある。しかし、所有者のいない物については、民法の規定により一番先に占有した者が所有者になるとされている。犯罪者を占有しているのは、言うまでもなく犯罪者を刑事施設に収容している国である。つまり犯罪者は国有物であり、個人の手が及ぶものではない。
したがって、犯罪者の人権を剥奪することにより、犯罪者に対して国であれ個人であれ誰一人として合法的に何の刑を科すこともできなくなる。