2023-02-28

バイト日記

 特殊詐欺に遭ったお客様が来店。ちょうど私と優秀なの派遣の人とでシフトに入っていた時間帯で、この手のトラブルに強いAさんは出勤前だった。

 対応は私がしたんだけれども、結果としてはこれはヤバいやつだと思った時には後のまつりとなってしまっていた。

 詐欺の内容について。

 お客様パソコンを利用している最中に急に画面がフリーズして、「ウイルス感染しました」というメッセージが表示されたという、典型的なやつ。信じてしまったお客様が、偽のサポートセンター電話をしてしまい、オペレーターの指示通りにPOSAカードを4万円ぶん×3枚を「コンビニで」(←重要)買い求め、詐欺サイトPOSAカード番号を入力するという形で、金を騙し取られるというもの

 私がお客様会計担当した時に、まず高齢者が同じPOSAカードを3枚持ってきて、各4万円ぶんで買いたいという時点で何で? と思ったものの、お客様があまりにもかくしゃくとした人なので、まあ大丈夫だろうか? とつい日和ってしまった。

 ところが大丈夫じゃなかったのである

 会計が済んだ後になってお客様が、

パソコンの修理にこれが必要だっていうんだよね。でも俺が何か間違えたのか、何度番号入れてもこれじゃ送れてませんってなって。そんで、何件もコンビニ回ってカード買い直しててさ。何度やってもなぜかダメなんだよね」

 と言い出したのだ!!

 数時間後に出勤してきたAさんに事のいきさつを説明した。すると、Aさんが言うには、その手の詐欺師がだまくらかすのは直接の被害者であるお客様だけではなく、お客様に応対する我々コンビニ店員の目も欺いているのだという。

 というのも、Aさんは何度かその手の詐欺師に引っ掛けられたお客様を応対した事があるのだが、皆似たような特徴のある人だというのだ。

 すなわち、高齢男性一見かくしゃくとして、明らかな認知症っぽくなくちゃんとしていそうな人。

 我々コンビニ店員にとって、詐欺被害者判断し難い人物をわざわざピックアップして騙している。

「という訳なんですけど。そもそも増田さんは、何でおかしいと思いつつも、詐欺を阻止することが出来なかったと思いますか?」

 そうAさんに問われた。それで考えたんだけれど、正直に言うと、

「これは面倒臭い事になるという予感がしたから、ですね」

 つまり詐欺師が被害者POSAカードを購入する場所を敢えて「コンビニで」と指定してくるのは、小売店のなかで最もPOSAカードを見つけ易いからというだけではないのだ。

 詐欺師は、コンビニ店員の心理もよく把握しており、コンビニ店員にとって歴代の糞客の面影に重なるような人物を、被害者として店に差し向けてくるということ。

 高齢で、脳味噌不明瞭そうには見えず、声が大きくて、怒り易く、コンビニ店員の事を女子供だと思って舐めくさっているタイプの、横柄な客。

 そういう客に対して、コンビニ店員は恐ろしさを感じつつも情けを持たないという事を、詐欺師は見抜いているのだ。

 いかにも横柄なお年寄りに、コンビニ店員は初手で、

「畏れ入りますお客様、それは詐欺ではないでしょうか?」

 とはなかなか言えない。なんなら、はよ帰れやと思っている。

 糞客もコンビニ店員も、いいカモでしかないのだ。

 Aさんが言うには、

「そんな客ほど恐れるに足らないです。高齢者POSAカードを持って来たら例外なく、余計な事を考えずに『お客様、それは詐欺ではありませんか?』と言っちゃっていい。何故なら、そんな下らない詐欺に引っ掛かってる時点でそいつ認知能力は地に墜ちているんです。そして、詐欺師にとって丸め込み易いって事は、我々にとっても丸め込み易いってことです。被害者は我々を若造だ女だと舐めくさって脅そうとしてきますが、だからって退く事はない。権威の力を借りましょう。『本部指導で』『警察指導により』POSAカードを購入するお客様全員に確認させて頂いてます。その程度の事で奴等は丸っと信用するから大丈夫です。認知能力の低下とはそういう事なので」

  • コンビニ店員さんが最後の砦だ。勇気を持って頑張って欲しい。

  • (逆の)生存者バイアスじゃないの? ”高齢の男性で一見かくしゃくとして、明らかな認知症っぽくなくちゃんとしていそうな人。”   よぼよぼの女性で認知症っぽい人もPOSA詐欺に...

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