ウサクは渋いというか、俺たちから見るとビミョーなものをよく食べていた。
パッケージのデザインが一世代前みたいな、俺たちが第一印象で候補から外すような、子供ウケの悪い駄菓子だ。
「その『ミソッカス』って駄菓子、よく食えるな。明らかに不味そうじゃん」
「食べてみなくては分からん」
「なんで、そんなの食べるんだ? 好きなのか?」
「店に並んでいる以上、何らかの需要があるはずだ。企業の陰謀か、或いは食べた者を中毒にさせる成分が入っているのかもしれぬ」
「で、実際に口に入れてみて、『ミソッカス』はどうだった?」
「名は体をあらわすというが……まさにその通りらしい」
「というか、店のオバチャンに聞けば、売ってる理由が分かるんじゃないか?」
「むぅ、一理あるな。店主、つかぬことを伺うが、この『ミソッカス』はなぜ売っている?」
「……なるほど」
カン先輩は直情的だった。
「くそっ、ハズレや。なあオバチャン、当たりだけ抜いたりしてへんやろな?」
「そんなこと出切るわけないだろ」
とにかく「当たればもう一個は断然お得」という理由で、当たりつきの駄菓子をよく食べる。
一度だけ当たったことがあるらしく、その時の快感が忘れられないらしい。
また当たりが出るのではと、その菓子がそこまで好きでもないのに買い続けた。
「これもハズレ!?」
「ほんまに当たり入っとんのか?」
「あ、『当たりが出たのでもう一個』きた」
「あ~! タイナイ、お前なんやねん。ワイの方が買っとんのにぃ!」
カン先輩の熱中ぶりは凄まじく、特にタイナイが一発で当ててしまった時の拗ね方は酷かった。
「タイナイぃ! ワイの持ってる未開封のと、その“当たり”と書かれた蓋を交換や!」
「いや……というか意味ないだろ」
その日を境にカン先輩は当たりつきの菓子を買うことはなくなり、俺たちの間では“あの菓子”の名前を呼んではいけないほどタブーとなった。
カン先輩は刹那的な欲求に忠実なタイプだけど、それはこの頃から変わっていない。
そんな風に、俺たちは自由オヤツの時間を様々な工夫で楽しんだ。
「ミルせんにパチキャン、更にのびーるグミ! これで『パチグミサンド』の完成!」
複数の駄菓子を組み合わせて、新たな菓子を作るのも一時期流行った。
「着物ガムに、金チョコ、更におっちゃんイカを入れる! これぞワイの完全オリジナル『KKO団子』や!」
「確かにオリジナリティはありますけど、それ本当に食べるんですか?」
ただ食べ合わせは良くないことが多く、複数買った菓子を一つにまとめて食べると勿体無く感じてすぐに廃れたが。
「あ~……金チョコの甘味とおっちゃんイカの酸味が絡み合い、それを着物ガムが口の中で留め続ける……まあ、失敗に限りなく近い成功やな」
「それを成功とは呼ばないのでは?」
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