2019-06-03

[] #74-7「ガクドー」

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週末のオヤツの時間

その日に手渡されるのは菓子ではなく小銭。

まり、各々で自由に買ってこいってことだ。

素晴らしき自主性の尊重放任主義バンザイといったところか。

もちろん大した額ではないから、買えるものは少ない。

それでも俺たちは普段とは違う「自分意志でモノを買う」という行為一種の楽しみを覚えたし、駄菓子下品フレーバーに舌鼓を打った。

からこそ発生する“課題”もあったが。


俺たちは小銭を貰うと、足早に最寄の駄菓子屋へ向かう。

学童所の近くにある公園を抜け、その向かいちょっと進めばあるというアクセスの良さだ。

「さて、どうしたもんか……」

「冷やかしなら商売邪魔から、どっかいってくんな」

「そう急かすなよオバチャン」

その菓子屋はオバチャンが一人で切り盛りしていた。

俺たちは週末にそこを利用しては、彼女のせわしない声を聞くことになる。

「どれ選んだって、どうせ後で『ああすればよかった』って思うんだから、ズバッと選べばいいじゃないか

オバチャンの圧力は凄かったが、店内で焼かれるタコ焼きの音、そしてソース香り独自の魅力があった。

俺たちはタコ焼きを買うにしろ買わないにしろ、その辺りに漂う独特な“駄菓子屋っぽさ”を好んだ。


「やはりアメ玉……アメ玉でいいのか、本当に?」

そんなオバチャンを尻目に、俺はいつも何を買うかで悩んでいた。

先ほども言ったが、使える額は少ない。

本当に少ないんだよ。

それ故、「如何にコストパフォーマンスを上げるか」は、学校課題よりも大事テーマであった。

このあたりは学童でそれぞれ性格が出る。

「ああ、くそ……噛み砕いちまった。油断すると、どうしてもやっちまう」

例えば、俺の場合は基本アメ玉。

時には違うものを選ぼうとするが、結局はそこに終着することが多い。

長く口の中に残る菓子の方が得だと思っているからだ。

から如何に噛み砕かず、口の中に含み続けるかはちょっとした戦いだった。

兄貴、またそのアメなの? アメにしたって、もっと他にあるじゃん。パチパチするヤツとか」

「あれは量が少ないだろ」

弟の買う駄菓子バラエティ重視。

占いつきや、見た目にも面白い、遊び心のあるものを選ぶ。

「あ、見てよアニキ。『金運』に花丸!」

「こんなの食ってる時点で、金運なんてないと思うがな」


学童仲間だったタイナイは飲料系を好む。

「うーん、ちょっと暑くなってきたし、チューチューにしようかな」

「お前、寒い時もそれじゃん」

「違うよ、今日食べるのは黄色いチューチューだから

「それ、そこまで重要な違いか?」

特に『チューチュー』という、棒状の柔らかい容器に入った飲み物をよく買っていた。

駄菓子屋では凍らせて売っており、食べる時は二つに割り切って食べる。

俺も食べたことがあるが、本当に凍らせただけって感じのチャチな味だった。

それでも冷たいってだけで、ちょっとした贅沢感を得られたものである

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記事への反応 -
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