2013-01-15

デザイナークライアント関係について

この記事(http://sogitani.baigie.me/2012/12/designer/)を読んで、元記事内にあるように「誰かに指図されず、自分の思い通りにデザインをしたい」という勘違いをしているデザイナーへの説教としては9割間違いない内容だと思いました。自分としても、心当たりがあります。それにしても、残りの1割に気になる部分があったので、ちょっと書いてみようと思います

その前に、自己紹介

プロダクトデザイナー

メーカー勤務8年目

元記事が指しているデザイナーと、ちょっと境遇が違っていますWebデザインに特化した内容は(やったことがないので)よくわかりません。また、インハウスデザイナーなので、クライアントも社内の他部門(製造部門)なので、そのあたりも厳密には違います。でも、元記事で示されていた

クライアントよ、お前の依頼の大変さを思い知れ!

http://gori.me/it/22125

については、わかるわかる。デザイナーなら、大抵誰もが一度は経験したことがあることなんではないかと思います

デザイナー側の問題

こんな記事がありました。

そんなの作れるか!ゴリ押しデザイナーに負けない技術

http://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000779

私はここまでひどいのは実際に見たことはないのですが、こうして記事になるくらいなので、そう稀な事例ということでもないのでしょう。デザイナーに対して「ダメ出しをしてはいけない」という思い込みがあるのであれば、元記事も主張しているように、それは大きな間違いです。デザイナースキルは基本的にクライアントがいないと発揮されないのであり、逆に言えばクライアントの要求が満足されることを目指して発揮されるべきです。

クライアント側の問題

しかし、クライアントの要求がすべて受け入れられるべきかと言えば、そうとも言い切れないと思います

デザインという言葉はいろいろな意味を含んでいますが、ことWebデザインに関して言えば、それは使用者にとって「わかりやすい・使いやすい」Webページを設計するための「技術」です。

デザイン技術なわけで、技術ベースのない人に上位の技術を説明しても理解出来ません。基礎としての電磁気学を知らない人に半導体設計理念を説明するのは不可能だと思いますさらに言うなら、半導体設計理念経営者が「好み」で口出しをすることは現実にはありえないはずです。つまり、元記事で筆者が主張するように、デザイン正当性デザインの基礎を持たない人に対して説明するのは厳密には不可能です。

もちろん、仕様関係している部分をクライアントが指摘して、修正を要求する権利があるのは当然です。しかし、デザイナーが固有の技術適用してできてきたアウトプット経営者が好みで修正を要求することは、間違っていると考えられます。裏を返せば、なぜ提出されてきたデザインが不満なのか、「好み」ではなくて根拠とともに説明する必要があるはずです。

□元記事の揚げ足取りと、私の邪推

そもそも引用元の引用元(http://gori.me/it/22125)の事例は、クライアントの言っていることがプロジェクト見積もりの終盤で大きく変わっている、ということを指摘していて、そのことと「誰かに指図されず、思ったようにデザインしたい!」と思っているデザイナーの問題との間には大きな隔たりがあります。前者はクライアントデザインに対する「修正なんか簡単だろ?」という誤解、後者デザイナークライアントに対する「どうせクライアントデザインのことなんてわかってないくせに」という誤解、両者は全く別の問題を扱っています。これを引用して、デザイナーの批判をするのは間違いです。

□で、どうするか

結論から言えば、クライアントデザイン会社は、引用元の記事にあるような上位下達の関係ではなく、協力してお互いが満足できるアウトプットを目指すべきです。

クライアントは、そのプロジェクト目的は何か、目的を達成するためにデザイン会社が提案している内容が見合っているのか、ということについては細かく目を光らせるべきです。しかし、自分の好みする指摘が全体を台無しにする可能性も自覚する必要があります

デザイナーは、自分のためではなく、クライアントのためにデザインをしているということを引用元記事が指摘するように当然自覚するべきです。立場の違いからくる発言力の差は認識してもいいはずです。クライアントは特定の事業に深くコミットしていますデザイン会社は複数の案件に携わっていることからリスクは分散していますポートフォリオを形成しています)多くのリスクを負っている側が、発言力も大きいのは、ある意味で当然のことです。

コミットポートフォリオについてはこちら→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130106

ディレクターは、上記二者の間に立って、両者が最もいい結果が出せるための意思疎通と工程管理を行う立場です。クライアントの言い分を正しく理解してデザイナーに伝える、社内のデザイナーの言い分をクライアントが理解できるように翻訳して伝える、というように、直接理解しあうのが難しい両者をつなげるのが、最も重要役割です。

自分経営者をしている会社で、自分の言いなりに動くデザイナーを雇って、デザイナー役割クライアントの言うことを聞くことだ、と言ってきかせるのは勝手なんですが、それをディレクター役割として一般化して話すのは、ちょっと違うと思う。というのが、私の感じた1割の違和感でした。

何につけてもクライアントを尊重しすぎるのが日本労働環境を悪化させていると思っています専門職立場を上げるためにはどうしたらいいんでしょうか。

関係ないけど

以前探していたら、海外にもこんな記事(ポスター)がありました。

How a web design goes straight to hell

http://theoatmeal.com/comics/design_hell

この点に関しては西洋人デザイナーとも簡単に分かり合えそうです。

※ 本当はポチったMajestouchが届いたから、ちょっと長文が書きたかっただけなんです。

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