2013-08-22

はだしのゲン閉架処分反対派と表現規制賛成派は同じである

大前提となる大きな事実関係

 先週「はだしのゲン」を巡る大きな騒動があり、ここはてな界隈でも話題となったことは記憶に新しいと思われます

はだしのゲン閉架」に 松江市教委「表現に疑問」

http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013081601001339.html

 また、教育委員会自体は否定しているものの、右翼系団体から圧力があったという話があったことも話をさらに大きくさせました。

 荻上チキ氏のはだしのゲン閉架騒動について

http://togetter.com/li/549915

 この辺の話は極東ブログさんが事実関係及び時系列客観的にまとめた記事があるので、そちらを読んだ方が手っ取り早いと思われます

 松江市教育委員会による「はだしのゲン学校図書閉架問題について

 http://togetter.com/li/549915

前提となるこまごまとした事実関係

 さて、ここでブックマークを拾いながら「はだしのゲン」を閉架処理にしてしまうことがいけない理由を見てみたいと思います。なお、これは私がチェックした時点(8月22日深夜0時)においスターを多く集めている順に書いていることをあらかじめここに記しておきます

 まずは一番目に挙げた記事から見ていきましょう。

id:Lobotomy

漫画からって軽い気持ちで手に取ったガキにトラウマを与えるのが、はだしのゲン存在意義なのに……。

id:panamolyfumizou

こういうの見ると、じゃあ発達段階にガッツリ読んでた私ら世代おかしく成長したのかと問いたい。

id:nanaoku

調べてみたら在特会が噛んでいた事案だった http://www.nicovideo.jp/watch/sm17718509

id:fulci

ロイドまみれの人とかヒロポン中毒者とか、発達期の子供が読むとトラウマになる描写ばっかだからいいんじゃん。おかげで子供ながらに戦争原爆とか絶対ダメだこれって思えたよ。

id:IGA-OS

絵が嫌いで読まなかったけど、それを選ぶのは子ども自身であり、閉架扱いにしたら選択の機会が事実上殆どなくなる。閉架は隠すことと同じだろ。

id:nonpori

松江で今年の最高気温華氏451度)が記録されました、というニュース

id:NOV1975

わからんでもないんだけど、これって「なんか聞かれても答えられる自信がありません」っていう教育委員会の敗北ではないのかな。

id:susahadeth52623

不謹慎な言い方かもしれないけど「はだしのゲン」はホラー漫画であり、仁義なき戦いであり、人間の虚飾を引っぺがしつつ、人間賛歌でもあるという極上のエンターテインメントだよ。ぜひ小さいうちに読むべし!

id:honeybe

代わりに古典的名作「火の鳥」を入れようぜ!(レイプ殺人なんでもありですが)

id:yachimon

進駐軍によるレイプシーンの事かな。私はあれでレイプの酷さを知った。小学生高学年以上なら大丈夫だと思うけど。/戦争の汚くそして酷い面を覆い隠して、何がしたいんだろう。

 以上が人気のブックマークトップ10です。

 こうして見ると、はだしのゲン戦争悲惨さを刻み付けるために読ませるべきだという意見は三人ほどおり、またそれに賛同の意を示すかたが意外と多いという事実が分かります。(ちなみに、私はスターを入れていませんが、id:panamolyfumizouさんや、id:IGA-OSさんの意見共感しました。)

 二番目に挙げたブックマークでは某レイシスト集団、ひいては歴史修正主義者に対するコメントばかりなので、「はだしのゲン」という作品そのものに関するコメントは、人気ブックマークに現れていませんでした。もちろん、そういったコメントもあることにありましたが、人気のブックマークの一覧にはありませんでした。当該まとめが取り上げている事案が事案なので仕方がないでしょう。

 とは言え、他の「はだしのゲン」を取り上げた記事においては、必ず一つは人気ブックマークおいて「はだしのゲン」でトラウマが、「はだしのゲン」の描写によって戦争反対が云々、などと言及されているものがあります。また、子供の頃トラウマになった作品挙げていけなどといったしょうもないまとめ系記事でも必ず挙がり、ここでも戦争が云々などと必ず触れられます統計的なデータは取っていませんが、ネット界隈を見渡す限り、このあたりは共通認識であると言っても構わないでしょう。まあ、統計云々以前に、少なくとも、「はだしのゲン」を読んで性的欲求を満たされただとか、積極的に首ちょんぱしたり戦争を行うべきだという思想を獲得したなどという感想はないことは言えるでしょう。

本題

 さて、長くなりましたが、ここからが本題、即ち表題に書いてることについてです。

 表現規制賛成派がどういう理由でもって表現規制に賛成しているかはみなさんもよくご存知の通り、漫画アニメにおける描写が現実性犯罪を引き起こす恐れがあるということからです(もちろん、他にも理由はありますが、ここではこの理由に絞ります)。

 つまり、例えば漫画アニメの中で小学生あるいは中学生しか見えない見た目の登場人物が、和姦であれ強姦であれ触手であれ蟲であれ、何らかの性的行為を行っている描写を読者が見て、現実世界でも実行しようという誘引が働くという訳です。米国で問題になったレイプレイの議論も参考になります。また、他の暴力描写が含まれる作品、例えばバトルロワイヤルなどを巡る議論も同様です。フィクションにおける描写が、現実世界おいても同様の事例を発生せしめる可能性があるという科学的根拠のない意見でもって、規制をなそうという暴論がまかりとおっているのです。

 ところで、上記に述べた「はだしのゲン」を小中学生に見せようという意見を見てみましょう。彼彼女らは、「はだしのゲン」を読むことによって子供達に何らかのトラウマを与えて、また戦争悲惨さを教え、更にはレイプシャブ非道さを教えられるというのです。

 今度はポルノ表現を見てみましょう。ポルノ規制反対派は、猥褻描写が行われている漫画あるいはアニメを見ることによって、例えばレイプされても感じるのだからレイプしようだとか、現実児童にも手を出そうとか、そんなことを読者が考えるとみなしているわけです。

 この論理構造本質的には一緒じゃないですか?即ち、何らかの視覚表現が何らかの影響を読者に与えるというのです。私は、この点でもって、「はだしのゲン」は戦争悲惨さを云々だという論理には危うさを覚えています。しつこく繰り返しますが、描写が凄惨漫画を読んで反戦争を唱えると、レイプ漫画レイプされている人が感じるということを"知って"実際にレイプするとは、本質的に同じ論理構造です。

私の考え

 私自身は、今回の閉架処分には反対です。理由は実に簡単で、漫画表現なんて現実世界に何の影響も及ぼさないし、そもそも現代おいては「はだしのゲン」なんか可愛く見えるくらいグロテスク表現を使ったブツが大量にあるからです。そんな中で「はだしのゲン」だけを閉架処分にするだなんて無知きわまりないです。また、表現の自由という観点からもありえない決定です。ましてや、「はだしのゲン」が特定個人を誹謗中傷している作品ならまだしも、少なくとも史実にしたがって描かれた作品なのです。やはり、今回の松江市の決定は悪しき前例以外の何物にもならないでしょう。

 なお、反戦に関しては、個人的にはたか漫画を使うのではなく具体的なデータ及び記述でもって丁寧に教えた方がよっぽど良いと思います情緒反戦を訴えても意味がありません。それは、より強い思想によって塗り替えられるだけです。確固たる客観的記述を知ることの方が、歴史修正主義者たちの出す捏造された資料を読んで騙されることがなくなるためはるか有用です。個人的に、ネトウヨがこうもうじゃうじゃいる理由はここにあると考えています教育関係者には自省を促したいところです。

  • というか、単に右と左の偏った人間たちが議論してるからおかしな事になるんだろうと思うけど。 まず、文句言ってたのは右の人間で間違いないみたいで。それに教育委屈した形になっ...

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