はてなキーワード: ssとは
小説は描写が細かく書かれるのに対して、ssや携帯小説は行為のみしか書かれない。
なぜなのだろう?
小説は、読むと疲労してしまうが、だれでも同じように感動する。
vipのssや携帯小説は、一般の読者には理解不能だが、ssならば漫画やギャルゲーの、携帯小説ならばレディースコミックの文脈を知っている読者には感動を持って受け入れられる。
【なんとなく、考えたこと】
小説の分量の多さは、行為を読み取るべき文脈を規定している。
だから、文脈が読者層によって外から規定されているssや携帯小説には分量が不要になる。
★
しかし、多くの読者は物語の描写ではなく、行為を読みたがるのも事実だ。
ではなく
という事実の方だ。
それに、小説を読み飛ばすとき、地の文を無視して会話だけを読んだ経験は誰にだってあるはずだ。
このとき読者は会話という行為だけ読み、そのときの声色がどうだったかという描写を読み飛ばしている。
本当に小説は、あんなに文章量が多くて良いのか?
横増田だけど。
ただ、増田の例を解決しろと言われると、心の余裕を持たせるというのは、まさに
>ただ、親元を離れろだののアドバイスは的確だとは思いますが、どうせ責任ももてないでしょう。
なんですよね…なのでこの案は書けなかったですね、このへんまでは同意です。
そうでもないと思う。
それこそ、「ただの共感」こそが心の余裕につながることもある。同じ経験を持つ人、共感してくれる人が大勢いることを知って、ほっと一息つけて、それが克服へ向かう力(たとえば親元を離れることを検討してみるとか)になることもあるんだよね。だから http://anond.hatelabo.jp/20090629205133 の増田に同意。
元増田の人生はまさにこれに従うことが日常化しているように思えた。自分の要求は通せず飲み込んでしまうけれど、他人の要求を拒否することなど許されないと思ってしまっている。普通の人はそんなことありえないと思うかもしれないけど、押さえられて生きてきた人にとっては、そういう状態こそが普通。
少し前に増田にいた、「学習性無気力」の人と似てるかもしれない。
というわけで、元増田には精神分析医だった故・木田恵子氏の本を薦めたい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url?_encoding=UTF8&search-type=ss&index=books-jp&field-author=木田%20恵子
「添うこころ」「喝采症候群」「0歳人・1歳人・2歳人」あたりがとくにおすすめ。
どちらかというと、増田の親のような人に向けて、そういう叱り方はよくないと説いた本だけど、そういうことを言ってくれる人もいるんだ、ってことで安心できるんじゃないかと思う。
ケータイの料金は条件によってかなり変わるので、普遍的なことは言えないけれど
と言う俺の場合に絞って維持費を今調べた範囲で書くと
キャリア | 基本プラン | オプション | 合計 | プラン名など |
---|---|---|---|---|
WILLCOM | \3,880 | なし | \3,880 | 新つなぎ放題 |
docomo | \980 | \490~5,985 | \1,470~6,965 | バリュープラン、ひとりでも割50、パケホーダイダブル |
au | \980 | \390~5,985 | \1,370~6,965 | プランSSシンプル、誰でも割、ダブル定額スーパーライト |
SoftBank | \980 | \1,029~5,985 | \2,009~6,965 | ホワイトプラン、パケットし放題 |
emobile | \1,000~4,980 | なし | \1,000~4,980 | ケータイプラン |
こんな感じ。
ちなみにダブル定額タイプの場合、今ざっと計算すると、ヤフーのトップを20回ぐらい読み込むと上限に達するっぽい。
ごもっとも。
「技術的に可能」と「商売上有利になる」は必ずしもイコールじゃないって事を理解してないね、という事だよ。
そりゃあ「技術的に可能」な事を全部やり尽くせば、性能や機能が完璧に近いハードウェアが完成するかも知れんけど「ただし1台10億円です。ソフトは1本2億円です。」じゃあ誰も買わんでしょ。言い方を変えるなら「技術的に可能だろ」という物言いは、「※ただし値段はそのままで」というのを故意に省いてるよね?と。
「ゲームが数秒で起動できるようにならなきゃ売れない」なんていう主張は、メーカー側からしてみればフォローできる範囲の意見じゃないんだよ。PS1やSS時代からずーっとそのままなんだから。
「電源入れてから5秒で起動出来るようになればWindowsVistaは普及する」とか言ってもマイクロソフトは見向きもせんでしょ(研究は続けているとは思うけど、それはゲームハード企業も同じ事)。はっきり言って、自分の意見を相手にとって有意義な物にしようという努力を放棄した言いがかり。「ビルゲイツがポケットマネー使ってタダでばらまけば日本でもXBOX360普及するんじゃね?」と同じレベル。
オープンになってるんならともかく、検索避けは仕込んでるし、あそこへのリンクも禁止になってるし、何より検索機能がしょぼくて目的のものまでたどり着くのに苦労する。
そんな状態じゃ誰も読む気にはならない。そもそも、SSなんてそんな必死こいてまで読みたいとは思わないわけだから、そんな手順に時間のかかるような事してたらめんどくさくて読む気がうせる。
東方系の絵とか漫画は普通に公開してあるものが多いのに、なぜあそこだけあんなにジメジメしてるんだろうねぇ。
♪プロレスみたいに シナリオを作り出したら みんなから総スカンくらうね
♪土俵の果てまで Doooooon!
♪相撲界を巻き込んだ 騒動さ オ・オ・ゴ・ト!!
♪アルバレタ日ノ事 予想以上のヤッカイが
♪限りなく降り注ぐ ガチンコじゃないわ
♪明日また闘(や)る前 泣きながら弁解
♪悪評を集めそう
♪カンタンなんだよ そ・ん・な・の
♪忍ばせてね(忍ばせてね) 袖の下に
♪大きな金&金 スキでしょう?
EDテーマ:『バレバレヤッカイ』
みなのしゅう、おしらせしよお。
新しく発足するクラブの名は、今、ここに決定した!!
はい、どうぞハルヒー。
「SSOSS部屋ッ!!」
Sekaiwo 世界を
Sutekinakotode 素敵なことで
Ooini moriagerutame no 大いに盛り上げるための
Subarashii heya 素晴らしい部屋
略してSSOSS部屋である。
コラそこ、哀れむような目で見るなー。これでも改良を重ねたほうなのだそうだ。
すなわち、一番初めにハルヒが考えていた名称によると『世界を相撲で大いに盛り上げるための涼宮山ハルヒの相撲部屋』だったそうなので、それから比べればだいぶマシなったほうだと考えるべきであろう。
いや変わってないだろーがという声は華麗にスルーさせてもらうぞ。
……本来なら、『世界を(中略)素晴らしい同好会』とすべきなのだろうが、何しろまだ同好会の体すら立っていない上に、何をする集団なのかも判らないのである。
「だったら、“部屋”で全然問題はないでごわすよ!」
……意味不明なハルヒの一言により、めでたくそのように決まった。
好きにしろよ、もう。
「すまん……何だって?」
「『ガチムチ』でごわす『ガチムチ』! いわゆるひとつの燃え要素!」
いや、ハルヒ、俺にはもうお前が何を言ってるのかさっぱりだ。
「基本的に――でごわすな、何かおかしな事件が起こるような物語には、こういうガッチリでムッチリとしたパワーキャラっぽい人間が1人はいるものなのでごわす!
おんしも見たことあるでごわしょう? カレー好きのガッチリムッチリキャラ!」
いや……どこからツッコめばいいものやら。
それはアレか、力士のあの体の下はああ見えて八割方筋肉であるというにわかには信じがたい話を反映しているのだろうか。
つかハルヒの言葉を用いるなら、これはムッチリムッチリだと思うのは俺の認識不足なのだろうか、そうであると思いたい。
「それだけじゃないんでごわす!」
思考の谷底に落ち込みかけた俺を引き戻すかのような、ハルヒの自慢げな笑み。
その笑顔のまま、奴は朝比奈にくるさんなる上級生の背後に回り、後ろからいきなり抱きついた。
「わひゃあああああああ」
そしてハルヒ、悲鳴お構いなしにセーラー服の上から胸をわしづかみ。
たぷん。
「ひいぃやああぁぁっあっ、あ、あっ!!」「ガッチリムッチリの印象が強いというのに!」「ういぃぃゃぁぁっ、うあぅ、あわっ!」「それと同時に女の武器たる胸もこんなに大きいのでごわす!! 巨乳というのは現在においても最大級の派閥を持つ萌え要素の1つなのでごわす!」さっきの“もえ”と今の“もえ”は何か違うのか、そこを明確に説明しろ。「わぅあっ、ひぃいぃあわぅんっ、ひゃぁあうっ!」「ガチムチの逞しいイメージと巨乳のか弱いイメージ、この壮大なる二律背反!」「はうわいぅぅやぁっ、あううぅぅわぁぁ!」「今ここに燃えと萌えの超交雑種――ダブルブリッドが顕現しているのでごわすよ!」知らん。「あー、本当に大きいでごわすなぁー……なんか腹が立ってきたでごわす!」「ひぃやぁあうあうあうあうあ!?」「こんなにイイ体でしかも可愛いくて胸もおいどんより大きいな・ど・とはああああ!!」「わうあうぃぃたたた助けてほしいでごわしゅうううういやあああ!!」
朝比奈さんの様子があまりにもアレなんでとりあえずハルヒを引き離すことにした。
「……アホかお前は」
野太い声での猥褻行為の応酬を聞かされるこっちの身にもなってくれ。
「でもめちゃデッカいでごわすよ!? 真実と書いてマジでごわすよ!? おんしも触ってみるでごわすか?」
「ひいぃ!?」
「遠慮しておく。……で、するとなにか? お前はこの……朝比奈さんが可愛くてガタイが良くて胸が大きかったからという理由だけで、ここに連れてきたのか?」
「そうでごわすっ!」
今更言うまでもないが真性のアホだ、こいつ。
「こういうマスコット的キャラも必要だと思ったのでごわすよ。で、にくるちゃん、おんし、今何かクラブ活動してるでごわすか?」
「あの……手芸部に……」
なんであなたもそんな宝の持ち腐れな行為を――とは言うまい。なんせ今ここに連れてこられたということは、だ。
「じゃあ、そこは辞めるでごわす。我が部の活動の邪魔でごわすから」
やっぱりな。
「……………………」
朝比奈さんは、今から飲むのはコーヒー入り炭酸飲料かもしくは飲む寒天唐辛子のどちらがいいかと問われたリアクション芸人のような悲愴な顔でうつむき、
救いを求めるような顔で俺を見上げ、次に長門湖の存在に初めて気づいて驚愕に目を見開き、「そうでごわしたか……」と呟いて、「解りましたどすこい」と言った。
何が解ったんだろう。
「手芸部は辞めてこっちに入部するでごわす……あ、入会でごわした。しかしながら、お菓子研究会とは何をするところなのかよく知らなくて――」
「へ?」
「この部屋は、一時的に借りているだけなんです。あなたが入らされようとしているのは、そこの涼宮山がこれから創る活動内容未定で名称不明の同好会ですよ。
――ちなみに、あっちで座ってお菓子むさぼっているのが本当のお菓子研究会会員です」
「……はぁ……」
パーツの1つとしてみりゃ愛くるしく見える唇をポカンと開けた朝比奈さんは、それきり言葉を失った。まあ当然だろうな。
「だぁーいじょうぶでごわすっ! 名前ならたった今考えたでごわすよ!」
「……言ってみろ」
と、来て数秒後に撤退の意思が芽生え始めた俺の後ろで、蝶番が無かったら吹っ飛んでいたんじゃないかという勢いでドアが開いた。
「やあやあ遅れてすまぬでごわす皆の衆! 捕まえるのに手間取ってしまったでごわすよぉ」
この角度からはまだ見えないが、ハルヒの後ろに回された手の先には誰かが居るようで、お菓子研究会に来る前の俺の想像通り校内のどなたかを部員にしようと無理矢理連れてきたようだ。
一応の詫びを入れたハルヒは極上の笑顔でその人物共々部屋にズカズカと入っ
地響きがする――と思って戴けたら、こちらとしても甚だ幸いである。
ただし、ここでいう地響きとはしつこいようだが地殻変動の類のそれではない。
――以下略。
……俺は一体何の呪いを受けちまったんだろう。
今度は、身長こそハルヒほどではないにせよ体型としてはハルヒを上回りかつ例のごとく矛盾輪郭の持ち主の少女だった。
しかもその不思議さ加減ときたらとてつもない美少女に見えるくらいであった。
「な、なんでごわしゅかぁ? ……(もぐもぐ)……ここ、何処でごわしゅかぁ?
(もぐもぐ)……な、何でウチは連れて来られたのでごわしゅかぁ? ……(もぐもぐ)」
右手左手の全指間にまるでパン屋の無敵看板娘のごとく携えられた焼き鳥であった。
形状から察するに最寄りのコンビニで売られているものであろう。怯えながらも次々と平らげていくその食い意地は立派だと言わざるを得ない。
というか例のごとく声がやたら野太いのであんまり深刻そうな感じがしない。
とにかく、だ。この状況がつかめず半泣きで不安げに震えている(そして焼き鳥は右手の分を食べ終わり左手に突入した)美少女さんと呆気にとられている俺を尻目に、
ハルヒは何故かドアに錠を施した。
「なっななな、なんで鍵をかけるんでごわしゅくうぐっげっほげほげほ、ふぅ……あ! そ、そうでごわしゅ! 一体何を、」
「黙らっしゃい」
ハルヒのドスの聞いた声に、むせつつも抗議しようとした少女はビクッとして固まってしまった。
「紹介するでごわす。朝比奈にくるちゃんでごわすぅ!」
そう言ったきり、ハルヒは黙り込んだ。紹介、終わりかよ!?
親友の思い人を好きになってしまったという告白を陰に潜んでいた親友本人に聞かれていたことがばれた様な空気が部屋を包み込んだ。
ハルヒは砂漠の国を救った海賊達のような笑顔で突っ立ったまんまだし、
長門湖は相変わらず無反応でお菓子をガサガサポリポリやってるし、
朝比奈にくるとかいうらしい美少女(下世話なことだが親ももうちょっと考えて名前をつけたほうがいいと思う)は今にも泣きそうな顔で最後の1串をはもはも食べながらおどおどしてるし、
誰か何か言えよと思いながら俺はやむを得ず口を開いた。損な性分だ。
「まず訊く。どこから拉致ってきたんだ?」
「人聞きの悪いこと言わないでほしいでごわす。任意同行でごわす!」
……似たようなもんだ。
「2年の教室でぼんやりしているところを捕まえたのでごわす。おいどん、休み時間にはいつも校舎を隅々まで歩くようにしてるゆえ、
彼女を何回か見かけていて、覚えていた――というわけでごわす」
休み時間に教室にいないと思ったら、そんなことをしていたのか。トイレの個室で御筥様をやってなくてよかったというかなんというか……いや、待てよ。
「じゃあ、この人は上級生じゃないか!」
「? それがどうかしたでごわすか?」
一点の曇りもない目だ。本当になんとも思っていないらしい。
「んぁー……まあいい。で、えーと朝比奈さん……か? 何でまた、この人なんだ?」
「まぁまぁ、見てみるでごんす!」
ハルヒは指を朝比奈にくるさんの鼻先に突きつけ彼女の決して小さくはない肩をすくませて、
「めちゃめちゃ可愛いうえにごっついでごわすよ!?」
というかごっつさならお前とそして長門も相当なんだが。いい意味で。
「おいどん、『ガチムチ』というのは結構重要だと思うのでごわすよー」
…………は?
今日1日の終業を告げるベルが鳴り、クラス一同の起立礼が終わるか終わらないかの一瞬のうち、
俺はまたもやハルヒに強引に手を引かれ、セントバーナードに引きずられるこども高校生のような状態に陥った。
そうして連れられてきた場所はどこかの部屋のドアの前だった。こんなところに何の用があるんだと聞きたかったが、
俺は数十秒前からスイスイ簡単と名高い掃除用品のごとく床を引きずられてしまっていたうえいきなり手を離されたのでしたたか頭を打ってしまった。
そんな俺にお構いなしにハルヒは勢いよくドアを開き――
「これから、ここがおいどんたちの部室でごんす!」
「ちょい待て」
俺は先程の強打とハルヒが口走ったとんでもない宣言のため物理的精神的に頭を痛めながらも、どうにかドア横の壁にもたれかかって座り、部屋の中に入ったハルヒにそこから質問した。
「……何処なんだよ、ここは?」
「文化部の部室棟でごわす。文化部といっても、美術部や吹奏楽部なら、その名が表わすとおり美術室や音楽室を持ってるでごわすな?
ここはそういう特別室を持たないクラブや同好会の部室が集まっているのが、この部室棟――通称旧館でごわす」
「で、この部屋が空いているから使おうってか?」
「いや、ここは『おか研』の部室でごわす」
「は? 『オカ研』はお前が以前仮入部して失望したって……」
「仮入部したのは『オカルト研究会』じゃなく『超常現象研究会』でごわす。ここはそれとは違うでごわすよ」
「はぁ?」
壁に背を預けながら、中のハルヒとの会話は続く。
ほう、お菓子研究会。うむ、何をするのか分かるようで分からない研究会だが、ひとつだけ確実に言えることがあるな。
「……じゃあ、この部屋はその『お菓子研究会』のものなんだろ?」
「うむ。しかし、今年の春に3年生が卒業してしまったせいで、部員0。新たに誰か入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのでごわす」
で、その哀れにも休部となったクラブの部室を頂戴しようってか?
「いんや、1年生の新入部員であるこの子が居るでごわす」
……待て。今なんて言った? 新入部員のこの子?
「おい、それじゃ休部になってねぇじゃねえか」
「似たようなもんでごわす。部員は1人しかいないんでごわすから」
呆れた野郎だ。それじゃまんま部室乗っ取りじゃねえか!?
ようやく物理的な頭の痛みも治まったので、立ち上がりハルヒの戯言に茶々を入れるため『お菓子研究会』の部室の中に突入した、の、だが。
地響きがする――と思って戴けたら、こちらとしても甚だ幸いである。
ただし、ここでいう地響きとは何度も言うが地殻変動の類のそれではない。
巨体だ。いや、あれを巨体と言以下略。
「――――――――またかよ」
やっぱりハルヒほどではないが、やっぱり明らかにそういう体型の子が、どうみても体型に見合ってないパイプ椅子に座りながら、
黙々とスナック菓子を食っていた。眼鏡をかけた髪の短い少女である。
これだけハルヒが大騒ぎしているのにもかかわらず、視線を向けようともしない。
動いているのは袋からスナック菓子を取り出し口に持っていく右手の動きとそれを咀嚼する口周りの骨と筋肉の動きだけで残りの部分は微動だにせず、俺らの存在を完璧に無視し続けている。
「その……あ、あの子はどうするんだよ?」
「別にいいって言ってたでごわす」
「本当かよそりゃ?」
「昼休みに会ったときに、『部室貸してほしいでごわす』って言ったらば『どうぞ』と。お菓子さえ食べられればいいみたいでごわすよ」
そんな「ハサミ貸して」のノリで貸し借りできるのか、部室。
「むう。ま、変わっているといえば変わっているでごわすなぁ」
はい、お前が言うな。
「――――――」
んお、件の研究会員が何かこっち見てる。ちなみに、ハルヒや朝倉川の例に違うことなく、矛盾輪郭の持ち主であったことは言うまでもない。
あと付け加えるならば俗に言う神秘的な不思議系の雰囲気を醸し出しているようなそうでないような。
「長門 湖(ながと うみ)――でごわす」
淡々と異様に野太い声で彼女は言った。一応それが名前らしいがやっぱり「ごわす」か。
名前を告げたからもう用はないといわんばかりの態度で、再び彼女は黙々とスナック菓子を機械的な動作でむさぼり始めた。
「あー、長門さんとやら。こいつはこの部屋を、何だかよく分からん部活の部室にしようとしてるんだぞ? ……それでも、いいのか?」
「いい――でごわす」
「いやあしかし、たぶんものすごーく迷惑をかけると思うぞ?」
「別に――でごわす」
「そのうち、追い出されちゃったりなんかするかもしれんぞ!?」
「どうぞ――でごわす」
いや……即答してくるのはいいんだが、もうちょっと色のある応答をしてもらいたいなぁ。あと「ごわす」付けがとってつけたようになってるのは何故だ。
「ふふん。まあ、そういうことでごわすから――」
ああ、声が弾んでいる。良くない。非常に良くない予感がする。
「これから放課後、この部屋に集合でごわす! 絶対来るでごわすよ。来ないと――全力で“てっぽう”入れるでごわす!」
コイツの全力での“てっぽう”なんて、死刑に等しいからな。死ぬのはごめんだ。
俺はハルヒの言いつけどおり席で大人しく――できなかった。何故って?
終業のベルが鳴り、クラス一同の起立礼が終わるか終わらないかの一瞬のうち、ハルヒが俺の手を強引に引いて走り出したからさ。
ちなみにハルヒは見た目のイメージに違うことなく馬鹿力の持ち主であるからして、強引に引っ張られ走り出されることがどういう状況を生み出すのかは、想像するに難くないだろう。
喩えて言うなら、首根っこつかまれた子猫のような感じだった。他クラスの生徒及び他の先生方の視線が痛い。
どうやら俺のことなぞ結婚式を終えたカップルがハネムーンに出発する際に使う車の後ろにつけられたカラカラ(あれの正式名称は何と言うのだろうか)ぐらいにしか思ってないらしいハルヒに連れられてやってきたのは、屋上へ出るドアの前の踊り場だった。
「――協力するでごんす!」
今、ハルヒがつかんでいるのは俺のネクタイであり、ついでに言わせてもらうなら俺は床から数センチ浮いていて、その、なんだ、苦しい。とりあえず下ろしてくれ。
ええい、カツアゲされてるような気分とかそういうレベルじゃねーぞ!
「……で、何を協力するって?」
「おいどんの新クラブ創りでごわすぅ!」
「何故俺がお前の思いつきに協力せねばならんのか、それをまず教えてくれ。明確な理由と共に。40字くらいでな」
「どうでもいいじゃないでごわすか」
15文字かよ。せめて8割は使えと習わなかったか。
「おいどんは部室と部員を確保するでごわすから、おんしは学校に提出する書類を揃えるでごんす」
「何のクラブを作るつもりなんだ? 今度は短めに20字でいいぞ。簡潔に答えてくれ」
「今日の放課後までに今言ったことを調べるでごんすよ! いいでごわすか!? おいどんもそれまでに部室を探しておくでごわすから!」
はいスルーきたぁ。聞けよ人の話をよぉ。
「いいでごわすね!?」
や、だから人の話……。
「――よしっ!」
よしじゃねええええええ!! ――とツッコミを入れる間もなく、呆気にとられる俺をその場に残し、嬉々とした表情のままハルヒは身を翻し(慣用表現だ)、足取り軽く(もちろん慣用表現だ)階段を下りていった。
……どうすりゃいいってんだよ。
***
【「同好会」の新設に伴う規定】
人数5人以上。顧問の教師、名称、責任者、活動内容を決定し、生徒会クラブ運営委員会で承認されることが必要。
活動内容は創造的かつ活力ある学校生活を送るに相応しいものに限られる。(以下省略)
まあ、なんだ。わざわざ調べるまでも無く、生徒手帳に載っていた。
ただ、これは断言できる。人数と責任者と名称以外は絶対ぇクリアできると思えない。人数なんかどっかから名前借りて幽霊部員にすりゃすむし、責任者はハルヒに任せりゃいい。名称はそれっぽいのをつけりゃオーケイだろう。だが、顧問が付いたり、創造的な活動をしたり、究極的には生徒会からの承認を得なければならない。そんなのは防御ターンにおいてスーパー系なのにリアル系からの攻撃を避けるくらい難しい、いやもはや無謀のレベルに達した事象なのだ。
というような意味合いのことを昼休みに話したのだが、まあ大方の予想通りハルヒはさっくりと一言で片付け教室を飛び出していきやがった。
一言「もーまんたい」と言って。何だ「もーまんたい」って。何語だ。
ある日の午前。
少し前に述べたとおり俺が座っている席は窓際であり、そこは春の暖かな日差しに当たりうつらうつらと舟を漕ぎまどろむことができるいわば桃源郷、アルカディアなのであるが、この日の日差しは特に気持ちよくしかもそのときの授業は特に眠気を誘う英語であったもんだから、俺はある意味永久機関と呼んでもいいあの水飲み鳥のごとく首をカクカクさせつつ覚醒と睡眠の間に流れる三途の川を渡す船の上で船頭と渡し賃について押し問答を繰り広げることになってしまった。およそ5分程度すったもんだを続けた末、俺と船頭も何とか渡し賃について合意を得てさあ彼岸に渡らんと意識を手放しかけたとき、それは突然やってきた。
「――――んガっ!?」
いきなり後ろにもンの凄い力で引っ張られたと思ったら後頭部にとてつもない痛みが走った。
「~~~~~ッ、なぁにしやがるっ!?」
おま、打ち所が悪ければ死に至るほど危険な行為だぞ今のは、と憤然とした思いを胸に振り返りそう怒鳴った俺が見たのは、涼宮山ハルヒの――思えば初めて見る――デザートイーグルのマズルフラッシュの瞬間の映像のような笑顔だった。もし笑顔に温度が付随するのだとしたら、重度の火傷を負ってしまっているだろう。
「気が付いたでごわすぅ!!」
……ええい、唾を飛ばすな唾を。何に気が付いたんだ。
「どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったのでごわすかなあ!!」
「だから何が!」
「無いんだったら、自分で立ち上げればいいではないでごわすか!!」
「だぁから何を!?」
「――――部活でごわすぅ!」
は。
「……わかった。でもまぁ、取りあえず今は落ち着け」
「ちょっと何でごわすかその冷めた反応は!? もうちょっとおんしもこの発見を喜んでほしいものでごわす!」
「ほれ、今は……」
授業中だから――ってオイ!?
「えー、『One hundred million and two thousand years from now, I has been loving you.』ここの訳し方ですが――」
「せんせー、すいません、そのちょっと前の『Words can't say of th-is time I've been waiting to share my love with you.』の訳がちょっとおかしい気がするんですが」
「え? えーと……ああ! ごめんなさい、正しくは――」
無視かよ!? なんだそれ!? 「涼宮山の相手はオマエに任せるから後はよろしく」って態度の表れかコノヤロウ先生も谷口も国木田も朝倉川もその他諸々のクラスメイトも!?
てかハルヒもほら、俺たち完全にないがしろにされてしまっているんだぞ、ここはさすがに怒るのが正当だと思うんだ俺は。
「――そうでごわすな、授業中でごわした。ちょっとはしゃぎすぎたでごんす。だから授業後に詳しく説明することにしたでごわすから、授業後はそのまま大人しくしているでどすこいよ?」
ええええええスルーか、この状況をスルーか!? もうちょっと反応しろよ、クラス内立ち位置についての危急存亡のとき(俺の)なんだよ!
「部屋…………部屋……うむむ」
ぐう……と、とにかく。
流石に授業中に騒ぐことはダメだと思う心はあるのか、ハルヒは大人しく引き下がり何事かブツブツ呟きながら席についたのだった。
そんなわけで、今日も今日とて俺はハルヒに話しかける。哀れむような周りの視線が心地良いぜあははん。
……泣いてない! 泣いてないからな!
あー、全部のクラブに入ってみたって言うのは本当なのか? ……どこか面白そうな部があったら教えてくれよ。
「無いでごわす。全然」
即答しやがった。頼むからもう少し会話を続けようという気にはならんのか。
会話が途中で宙ぶらりんになることほど虚しいものは無いと思うのだが。
「……全然無いでごわす!」
なぜ2回言う。
「高校に入ったら少しはマシかと思ったんでごわすが……これじゃ義務教育時代と何も変わっておらんでごわす。入る学校間違えたでごわす」
何を基準に学校選びをしてるのだろうなコイツは。
ほう? で、どうだった? 御眼鏡に適う不思議人の強者はいたか?
「不思議人の強者? は、ちゃんちゃら可笑しいでごわす。変な事件に出くわした人物なぞ皆無であったなどと言うんでごわすよ?
部員も部員でごわす、立会いができそうな者どころか本ばっかり読んでそうな普通のばかりで旭道山のような輩もおらぬし!!」
そりゃそうだろ。そんなガタイのいい奴が文科系クラブだなんて何処かの下っ端のスポーツ万能設定並みに宝の持ち腐れだ。適材不適所にも程がある。
「『超常現象研究会』にも少し期待はしてたんでごわすが――単なるひょろっちいオカルトマニア達の集まりでしかなかったのでごわす!
しかも先程のミス研もそうだったのでごわすが、仮にも『研究会』の名を関しているというのに彼の著名な“無類力士”こと雷電爲右エ門の生家に参ったことも無ければ、
それが何処にあるかすら知らんとのたまう始末! 全く、底の浅さが知れるでごわすな。そんなことも知らずに一体何を研究してるというんでごわすか!?」
というか何か、そのライデン何たらとかいうヘタレ兵士のような名の者の生家を訪ねることはコイツにとって常識なのだろうか。
「うおおおおつまらんでごわすうううう!!」ふるふるピシッふるふる。
ちょコラ、ダッダンボヨヨンっておま何この古のCM? てかその図体で暴れんなってオイやめろやめろやめろピシッっていったから今またお前の椅子ピシッって。
「むう……これだけあれば少しは変な部活や人間や骨のある奴に出会えても良さそうなんでごわすが……」
「……無いものはしょうがないだろう? ま結局のところ人間はそこにあるものだけで満足しなければならないってコトさな。
言うなればそれをできない者こそが発明や発見をして文明文化を発展発達させてきたワケだ。遠く離れた者とやり取りがしたいと思ったからこそ、
手紙ができ電話ができついにはWWWが作られてEメールが普及してる。だがしかし、それが生じたのは一部の才能ある、もしくは発想力に長けた人物がいてそれを実行に移したからであって、
すなわちそれはある種の天才によって可能なものとなったんだ。『何の特殊な才能も無い凡庸の極みである我々、しかも君達のような子どもに残された手段は学ぶ事しかない』
とは俺が中学のころの国語教師が言った言葉だがな、これは結構的を射
「うるさい」
ハルヒは、俺がここぞとばかりに奴に現実を叩き込もうと調子乗って知った風なことをベラベラと喋っていた(奴とは違って自覚する心はあるのだ、俺には)のを語気強く中断させ、
目の前に餌を出されてさんざ弄ばれた挙句それを冷蔵庫に再投入されたのを見た猫のような目つきをしてそっぽを向き、漫画等で人物が眼鏡を外したときの古典的な表現のような口をつくった。
……もしかしたら、これがネタ振りになってしまったのかもしれない。
唐突だが、席替えだそうだ。
ゴーフルの缶に入れられたクジを引いた俺は、窓際後方2番目というなかなかよろしいポジションを獲得した!
窓際後方2番目といえばあまり有名ではないかもしれないが知るものぞ知る良席なのである。 春は暖かい日差しが程よく当たってかの極楽浄土が現世に顕現したかのごとくであるし、夏は日差しがキツくなるとはいえ窓際ということもあり涼風にありつける可能性が非常に高いので遥かな尾瀬が近い空だし、秋は秋で授業中に眼が疲れたなら遠くの山の紅葉を見て眼の保養をするとともに日本人的感性を育むことができて正岡子規が開発した俳句用の色紙(正岡子規式色紙)に一句読みたくなるし、冬ともなると暖かい教室の窓から深々と雪が降るのを眼にしてセンチメンタルでアンニュイな気分でメランコリニスタな気分に浸って若干ハイで眠れないのだ。ならば窓際の一番後ろの席でも良いじゃないかという反論をするものも必ずいるだろうが、その考えは甘いダダ甘い高校3年2学期から受験勉強を始める奴並みに甘いと言わざるを得ない。何故ならば一番後ろの席というのは一見教師の眼が届かなさそうなイメージがあるが決してそんなことは無くむしろ逆であり例えば舟を漕いでいたりすると教師というものは目ざとく見つけてくれやがる。そう考えると後ろから2番手3番手というのはまさに忍術で言うところの木陰の大事であり木を隠すには森の中人を隠すには人の中といった具合なのであるからして良席なのだ。こんな良席を手に入れられるとはそろそろ運が俺に向いてきたといって何ら差し支えは無いであろうしこれでハルヒと疎遠になるだろうことは想像に難くなく俺はいつに無く浮かれた調子でハルヒへの別れを告げんとした。さらばーハルヒー、フォーエ
「7番でごわす」
「うむ、涼宮山関の座席は窓側一番奥でごわすな」
こう宣告されたときの俺の表情は一体如何なるものだったのであろうか生憎自分の顔は鏡が無い限り見ることができないので想像するしか手段が無いのであるがそれは例えばブルータスに刺されたカエサルもしくは仮面に謀られた時の育ちのいい坊やはたまた覚醒した戦闘種族の息子に劣勢に立たされた完全体もかくやと思われるものだったのではないか、まあ俺はとりあえず世界の確率法則が酷く薄情にできていることにもう逆に感心しつつそれを支配しているかもしれない超越存在に向かって喧嘩を売りたいというか叩き売らせてくれよーし神とやらちょっとここに来て座りたまえああいややっぱ座らなくていい久々にキレちまった一緒に屋上へ行こうかボコボコにしてやんよ。
「虹が出ないだろがそれじゃ!」
1限後の休み時間だ。涼宮山は早々と教室を出て行ったが、まあ別に不思議ではあるまい。
奴だってきっと多分おそらくあるいは人間であるという可能性が無きにしも非ずだ。用足しもするだろうさ。
ここでひとつ下らない思考をするとすれば、あの体格でいわゆる個室に入ることははたして可能なのだろうかいや間違いなく入れないだろうなあ首尾よくそこに入ることができたとしてもみつしりと御筥様でにつこりと笑うどころか射抜くような眼で「ほう」だよないやむしろ勝ち気な奴のことだ「このお」かもしれないそれはかなりホラーだな誰も助けてくれなさそうで何だか酷く女が可哀想になつてしまつた。嗚呼涼宮山君、この世には不思議な事しかないんだなあ。
「おいキョン! お前どんな魔法を使ったんだ!? いや魔法じゃなくあれか、食い物か? 何を食わせた、学食で一番高いやつをおごったか?ジャンボ日替わり定食か!?」
「……何の話だ」
よくわからないがいきなりやってきてその言い草は失礼だぞ谷口。俺はアレか、有望なアスリートに向かって札束満載の財布を渡すプロレスラーか?
「いやいやいや、何の話も何も涼宮山だよ涼宮山。俺、アイツがあんなに長いこと喋ってるの始めて見るぞ? ……お前一体何をした?」
さて、なんだろう。とりあえず食べ物で釣ったわけではもちろんないし、喋ったといっても適当なことしか訊いていない気がするんだが。
「驚天動地だ……!」
お前な。
「昔っからキョンは、変な女が好きだからねー」
話に入ってきた早々、なんという酷いことを口走りやがるのかこの国木田は。
「……誤解を招くようなことを言うな!」
「オイも聞きたいでごわすなぁ~」
背後からいきなりかけられる野太い声に驚き、後ろを振り返ってみると、白い物体がそこにあった。なんだこりゃ、ぬり壁か?
「オイが話しかけてもなぁんにも答えてくれない涼宮山関が、どうしたら話すようになるのか――」
話を耳に入れつつパン・アップ。声の主は朝倉川だった。先ほどの白い壁は、制服に覆われた見事な腹だったようだ。
「――わからん」
「ふぅむ? ……でも安心したでごわす、涼宮山関、いつまでも部屋(クラス)で孤立したままでは困るでごわすからのぉ。
1人でも友達ができたのはいい事でごわすものなぁ」
「……友達ねぇ」
ちっくしょぉコノヤロウ今朝も可哀想ビームを送ってきたくせに何を言い出しやがりますかこの娘は。黒い! この娘は黒ぅ御座います!
「その調子で、涼宮山関を部屋(クラス)にとけこめるようにしてあげて欲しいでごんす。
せっかく一緒の部屋(クラス)に入ったんでごわすから、皆仲良ぅしたいもんどすこい。宜しくお頼み申す」
と、言われてもなぁ……。
「これから、何か伝えることがあったらおんしから涼宮山関に伝えてもらうことにするでごわすよ」
…………ちょ待っ!?
「待て待て待て! 俺はアイツの親方でもなんでもないぞ!!」
「お・ね・が・い☆」
ええいそんな野太い声で乙女チックに頼むなその体型で手を合わせられると最早七福神的なアレにしか見えんからさ寧ろお前もう黙れ喋るな。
つまり、朝倉川が言いたいのは、
「涼宮山と関わるなんてやっかいだから何かちょくちょく話しかけてる変人クラスメイトのあなたに押し付けちゃっていいかしら? あ、拒否権は認めないから☆」
ということだ。朝倉川の腹黒さに戦慄せざるを得ない。この歳でこれだけのしたたかさ……。臭い飯の厄介にだけはなってほしくないものである。
「ちょいと小耳に挟んだんだがな――言い寄ってくる男を全員投げ飛ばした、ってのは本当の話か?」
この間、1日で2回もそれに類する惨劇を目撃したから、限りなく事実に近いのだが、あえて聞いてみよう。
あれ以来。
ホームルーム前のわずかな時間に、ハルヒと話すのが日課になりつつあった。
今朝もその類なのだが……それより何よりクラスメイトの視線が痛い。
それは喩えるなら「ああ……アイツは通りモノに当たってしまったんだね」といった意味合いの。畜生、放っとけ。
「何でおんしにそんなこと言わなきゃならんでごわすか」
至極もっともだ。
「何を聞いたかは知らんでごんすが――まあいいでごわす。たぶん全部本当のことでごわすからな」
「1人くらい、まともにお前の相手ができるヤツはいなかったのか?」
「全然駄目でごわした」
そう言ってかぶりを振るハルヒ。そしてそれに合わせてぷるんぷるん揺れる頬肉。
実を言うとこの肉の揺れ具合を見るのが面白くて仕方ない。
毎朝わざとかぶりを振らせるような流れに話を持っていっているのは秘密だ。こらそこ変態とか言うな。
「どいつもこいつも、阿呆らしいほどまともで弱いやつでごわした。宇宙人幕内でも未来人幕内でも幕内超能力者でもなかったでごわすし」
そりゃ普通そうだろうよ。
「あと、告白がほとんど電話だったのはなんなんでごわすかアレは!? そういう大事なことはちゃんと面と向かって言えってんでどすこい!
そうすれば即座に勝負ができるのにも関わらず、次の日まで待つとかじれったいことになるんでごわすよ!」
勝負がしたいのか男の勇気の無さに物申したいのかどっちだよ。
そういえば「手紙が一番であります」と言ったのは誰だったか――いやそんなのはどうでもいい、ここは一応同意しておくとしよう。
「まあそうかなぁ、俺だったら何処かに呼び出して言うがな」
「そんなことはどうでもいいんでごわす!!」
なんなんだよ。
「問題は、弱くてつまらない男しかこの世に存在しないのか? どうなの? ってことでごわすな。
――本当は、中学時代はずっと物足りなさが付きまとっていたでどすこい」
「宇宙人、もしくはそれに準じる何かで、かつ幕内力士並みの強さの持ち主でごわすな」
そんな飾りじゃない足が付いている機械みたいなのはいねえよ。
「とにかく、普通の人間でなければ、男だろうが女だろうが――」
「そっちの方が――ワクワクするでごわす!!」
穏やかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めてしまう奴丸出しの、無邪気といえば聞こえは良いが、
そんなこんなをしながら月日は経ち、ゴールデンウィークが明けて1日目のことだ。
教室に入ると、いつもの通りハルヒは不機嫌そうな顔で座っていた。例の規則性に気づいてからは、
朝何気なくハルヒの席の横に無造作に置いてある弁当の段数を見るのが日課となっていた。
そう思いつつ、席に着き――魔が差してしまったんだろう。というか、それ以外に思い当たる節が無い。
この突発的な感情を俺なりに分析してみるならば、それは国主が獣耳を持っているという秘密を穴に叫びこんだ、
あの男のようなものなのだろう。アレはその後処刑されたわけだが、はてさて此度俺が穴に叫びこんだ、
秘密というにはかなりスケールの小さい内容はと言うと。
つまりは法則らしきものに気づいたぞということを知らせただけだが、言ってる俺自身が意味わかんねえ。
何だよ宇宙人力士って。カエル専用7頭身パワードスーツか。確かアレにも力士型があったな。まあいい。
「……いつ気付いたでごわすか?」
ちょっと前。
「あっそ」
…………もうすこしリアク
「――おいどん思うんでごわすが、曜日によって感じるイメージって、それぞれ異なる気がするのでごわす。
色でいうと、月曜が黄色で火曜が赤、水曜は青で木曜は緑、金曜が金色で土曜が茶色、日曜は白、でごわすな」
おお、初めて会話が成立したような気がする。
そのイメージ論は何となく分かるような気がするな。つーことは、数字にしたら、月曜日が1で日曜日が7なのか?
「さよう」
数字だったら、俺は月曜日は“0”って感じがするけどなぁ。
「おんしの意見なんぞ誰も聞いとらん」
そうかい。
やれやれ、まったく――――ん?
「…………」
何やらいきなりジーッと見られているわけだが。何かしたか俺?
とりあえず目を逸らさずにいよう。
「……」
しかし見れば見るほど不思議な顔だ。どういう作用でこの求肥のごとき輪郭に包まれた各種パーツが美少女顔と認識させるのだろう。
「…………」
まだ見てるよコイツは。……鼻毛でも出てたか?
「……おいどん、おんしと何処かで会ったことあるでごわすか? ずっと前に」
はあ?
「いいや」
「……そうでごわすか」
当たり前だ、過去にお前のような強烈なヤツに会っていたとしたら、忘れられるはずが無いだろうからな。電波ソングのようなものだ。
まあ、とにかく。
きっかけ――なんてぇのは、大抵どうってことないものモノなんだろうけども、まさしくコレがきっかけになったんだろうなぁ。
しかし、ハルヒがまともな返答をよこしたことは驚きだ。
俺はてっきり、「喧しい」「阿呆」「黙れ」「おんしには関係ないでごわす」と言われるものだとばかり思っていたからな。
だからこそ。
翌日、本来なら4段であるはずの弁当が1段しかなかったときには、結構俺は動揺した。
……それにしたって、俺が指摘した次の日に少なくするってのも、短絡的過ぎないか? おいっ。
「――別に」
と、いうわけで片鱗その1。弁当の見た目が毎日変わる。
月曜1段火曜2段水曜3段木曜4段金曜5段――――。
ああ、「週の初めの方、そんな少なくてあの図体が耐えられるのか?」とご心配のそこな諸兄、安心したまえ。
量はどの曜日も同じだ。つまり、百人一首を一面に並べるか、100枚重ねるかの違いだな。
いやあしかしその量を初めて目にしたときは、奴はピンク色の人外生物の化身じゃないかと思ったぞ俺は。
果たして、涼宮山家のエンゲル係数は如何ほどのものなのか……。調べてみたい気もするな。
片鱗その2。
体育の授業は男女別に行われる――のは先程の会話からわかるだろうが、着替えに関しても当然の如く別である。
女が奇数クラス、男が偶数クラスに移動してすることになっているのだが。
「――――」ぼるんっ。
「げ!?」
「きゃっ!?」
まだ男子が残っているにも関わらず、あんまり嬉しくない擬音を伴ってやおらセーラー服を脱ぎだしやがった!
即座に教室中に響き渡る他の女子の悲鳴悲鳴悲鳴、追い出される男達。まあ当然といえば当然だが何か釈然としない。
それはともかく……どうやら、ハルヒは男子生徒のことをジャガイモくらいにしか思ってないらしい。ういろうのくせに。
「これが、精神的ブラクラ……か……」
片鱗その3。……呆れることに、だ。
ハルヒは、この学校に存在するありとあらゆるクラブに、仮入部していたのだった。
運動部からは例外なく部員から熱心に入部を勧められ、しかしその全てを蹴って毎日参加する部活動を気まぐれに変えた挙げ句、
結局、どこにも入部することは無かった。
相撲部からは是非ウチにも仮入部に来てくれと熱心に勧められたらしいが、何故か翌日部はなくなっていた、とか。というか女子を呼ぶなよ。
何がしたいんだろうなあコイツはよお?
再び、小気味よい銃声が響く。次の組らしい。
「……む」
片方は涼宮山だった。
「はぁ、ふぅ」どすんどすん。ふるふる。
「はぁ、ふぅ」どすんどすん。ふるふる。
豚肉と牛肉を一緒に煮た鍋のような混沌的交配を見せて揺れる胸と腹、
「はぁ、ふぅ」どすんどすん。ふるふる。
艶めかしいというよりは生々しい漏れ方をする呼吸。
そんな物体が50mを6、7秒で走った。
おお、うわあ、という驚愕と感嘆の入り混じった声が男達から上がる。
俺はというと、先の例があったので幾分驚きは少なかった。
あれだ、ヤツの構成物質は軽量スライムまたはそれに準ずる何かか?
それはさておき。
この時期、涼宮山ハルヒもまだおとなしい頃合いで、俺にとっても心休まる月だった。
……しかしながら、ハルヒの奇矯な振る舞いは、この頃から徐々に片鱗を見せていたというべきだろう。
小気味良い銃声が響く。今日の5限目は体育だ。
「で、だ。俺だったらー……そうだなぁ」
いきなり教師が休んでしまったので、自習だ。
そして谷口の女子評価トークが続く。暇なヤツだ。
「このクラスのイチ押しは――アイツだな」
ん、と谷口が顎で示す先に目を向ける。
地響きがする――と思って戴けたら、こちらとしても甚だ幸いである。
ただし、ここでいう地響きとはやっぱり地殻変動の類のそれではない。
巨体だ。いや、あれを巨体と言うにはいささか難点が以下略。
涼宮山ほどではないが、明らかにそういう体型の女子が走っていた。
見かけによらず――いやよらず云々の話じゃない、常人のスピードだ。
あとからゴールした子が悲愴な表情を浮かべていたのは、俺だけの胸にしまっておこう。合掌。
「――朝倉川涼子。一年の女の中でも、ベスト3には確実に入るね」
「……一年の女子全員をチェックでもしたのか?」
「おうよ! AからDまでランク付けして、そのうちAランクの女はフルネームで覚えたゼ!」
ここに至ってようやく確信がいった。こいつはそうとうのアホだ。
「朝倉川さんがそのAなわけ?」
「甘いな国木田! ……AAランク+(プラス)だな。あれはきっと性格も良いに違いない!」
基準が分からん。
「見た目、涼宮山と変わらんようだが?」
「あーあー、わかっちゃいねえなあ、別モンだよアイツとは。もっとよく見ろ」
仕方がないので見てみる。
……ははあ成程、つまるところあの朝倉川とやらも、涼宮山と同じ矛盾輪郭の持ち主だと言うわけだ。
違うところは、物腰の柔らかそうなところと、人当たりが良さそうなところ、だろうか。確かに、彼女は涼宮山とは違い、
随分クラスメイトと打ち解けているようだ。
再び教室である。
「さっきのを見ての通り、何故かあいつはモテる。なんせツラが………」
そこで言いよどむな。事実を真摯に受け止めちまえ。
「…………あー…………ツラ“は”いいしな。見た目はともかく」
妥協点を見出しやがったコイツ。
「おまけにアレなのにスポーツ万能で、成績もどちらかといえば優秀なんだ。
ちょっとばかし変人でも、黙って立ってりゃそんなことわかんねぇし……」
「それにも、何かエピソードがあるの?」
「一時期は、ちぎっては投げちぎっては投げ、てやつだったな」
ちょっと待て。“とっかえひっかえ”なら分かるが何故に“ちぎっては投げ”なんだ。
「いわゆる『私に勝ったら付き合ってやる』理論だな。さっきのもそれ」
月刊誌でもそんなのがあったな。つきあってよ! みたいな。
「そいつぁ知らねえ。とにかく、対決方法は……まあなんとなく見当はつくだろ。
俺が知る限り、一番長く続いて30秒。最短は……さっきのだな。5秒無かっただろ、アレ」
ああ、まさに瞬殺だった。
「そんなわけで、過去にぶん投げられた男は数知れず。中には涼宮山に――」
その瞬間だ。
「ぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」どぱぁん。
またかよ。
呆れつつ窓から身を乗り出し、悲痛な叫びと激しい水音が聞こえてきた方向を見ると、だな。
まあなんというか見事に――佐清がそこにいた。
あれほどベタな突っ込み方をしていることにある種の羨ましさを感じるような気がしないこともない。いや突っ込まれたくないが。
その後方、プールサイドに仁王立ちしているのはもちろんハルヒで、
大鐘音もびっくりの音量でそう叫んだのだった。
「――あの台詞を言われた奴もいたとさ」
「………………ねえ」
疑いの視線で谷口を見る。
「ぁ? ……! っ、聞いた話だってマジで! 何でか知らねえけど、勝負を申し込まれて断るということをしないんだよアイツは!」
情報を持ちすぎている、とはツッコむまい。もう面倒だ。
「だから! お前が変な気を起こす前に言っといてやる」
そう言うと谷口は、ふ、と息をつき。
「――やめとけ、マジで」
それはさっき聞いたっての。
やめとくもなにも、そんな気は無いんだがな。
昼飯も食い終わり、俺達は校舎横の階段に場所を移して、涼宮山奇行伝説について再び話をしていた。
「んで、その犯人がアイツだった、てわけか」
「本人がそう言ったんだから間違いない」
言ったのかよ、といささか呆れながら、何気なーく別棟の屋上に目をやると――。
「朝、教室に行ったら机が全部廊下に出されてたこともあったなぁ」
そこに、ハルヒはいた。遠目からでもそれと分かるのは流石だよ。
「校舎の屋上に星マークをペンキで描いたり――」
しかし、
「学校中に変なお札をベタベタ貼りまくられたこともあった。キョンシーが顔に貼っつけているようなヤツな」
何やってんだ、アイツ。ていうかその前にいる男は……?
「意味わかんねぇよ」
ああ、確かに意味わかんねえ。なあ二人とも、ちょいとあの屋上を見ろ。
「なに、キョン?」
「お、おおお? 涼宮山と……誰だ?」
知らん。
「――――!!」
「――――――」
そして……アレはお辞儀、だよな。
「あ、もしかして」
何だ国木田。
ははぁ、その線があるか。だとすると気の早いことだあの男子学生も。
「マズいな」
何がだ谷口。
「まあ……見てりゃ分かるさ」
「(こくり)――――」
「――――――!?」
お? 首を縦に振った!? まさかOKしたのか?
「終わりだな」
だから何がだ――と聞く間もなく。
「ぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁ……」どしゃん。
いきなり男がぶん投げられて屋上のフェンスにぶつかっていた。
うわ、痛そ。
そんな悲惨な状況の男を放って、ハルヒは屋上から出て行った。
なあ谷口、今の一連の流れは何なのか懇切丁寧に教えてくれ。
「……とりあえず教室に戻ろうぜ、そこで話す」
「あいつに興味を持つのはまあ結構なことだがな、万が一、あいつに対して男女間の感情を持ってるんだったら――やめておけ」
――失礼な。
軽い自己紹介も済み、三人で俺の机を囲んで昼食である。
ハルヒと同じ中学出身の谷口がいるおかげで、当然話題はそのことになる。そしてこれも当然のことだが、今朝の顛末もネタにされた。
そんな中で谷口がそう切り出したのだ。
「中学で3年間涼宮山と同じクラスだったからよく知ってるんだがな、あいつの奇人ぶりは、常軌を逸してる」
「あの自己紹介?」
「そ。中学時代にも、ワケの分からんことを散々やり倒していたなぁ。有名なのが『校庭土俵事件』!」
「……なんだそりゃ」
「石灰で白線引く道具があるだろ? アレ、何つーんだっけ……? あーまあいいや。
ソレで校庭にでかでかとけったいな絵文字を書きやがったことがある。ひかも夜にゃかの学校に堂々とひのびこんで」
土俵はどこいった。あと口に物入れながら喋るな。
そりゃまたアーティスティックな土俵だ、一般公開したらこの絵文字土俵には人間の苦悩が云々、
とか言って無理やり前衛芸術とみなす似非芸術評論家が食いついてくることだろうな。
さてさて、負傷者を出した怒涛の初日は明け、次の朝のことだ。
何の因果か席が前だったという地の利を活かして、ここはいっちょコンタクトを試みるのもいいかなー、
などと一瞬血迷ってしまった俺を誰が責められよう。原住民との邂逅、もしくはUMAを目の当たりにした、
探検隊員のリアクションを思い出してもらいたい。あんな心境だったんだよまったく。ちっともスペシャルじゃねえよ。
「――なあ、初っ端の自己紹介のアレ、どのあたりまで本気だったんだ?」
「…………」
はっはっは、何やってんだろうなあ俺。めっちゃ作り笑いだしよ。
「初っ端のアレって何でごわす」
いや、宇宙人がどうとか。
いや、違うけどさ……。
「『違うけど』、なんなんでごわすか」
「……ぇーいや、なんもない」
「だったら話しかけないでほしいでごわす。時間の無駄でどすこい」
……『どすこい』?
ふん、と鼻を鳴らすと、ハルヒはそっぽを向いた。おお、頬の肉がふるふると波をうってるぜ。
俺はというと、曖昧な笑みで元に向き直り机に突っ伏した。
クラスメイトは、そんな俺を可哀想なものを見るような目で見ていた。
やめてくれ後生だから。
どこかのパレードでマーチなゲームのごとき可哀想な視線(青色)が、昼休みまで俺を焼き続けたせいもあり、
ハルヒとコンタクトを取ることはできなかった。さっきの時点でする気なんか失せていたがな。
はは、飯でも食うか……。
ん、この声は――よぉ、お前か中学時代からの友人国木田。で、その隣にいる男は……えーと?
「説明くさい台詞どうも。こいつは谷口。なんとあの涼宮山と同中だったって」
たにぐち……ああっ! あの押し潰されたヤツか!? ちょっと待て回復早すぎるだろ、おい! ピンピンしてるじゃねえか!?
「気にするない。ま、よろしくな。ええと……キョン、だっけ?」
「うん、こいつは中学校の頃からずーっと『キョン』ってあだ名なんだよ。あまりに定着しすぎて、もう友達は誰も本名で呼んでくれない」
そう、悲しいことにそれは事実だ。奴の言うとおり中学時代から俺は本名ではなく常時『キョン』というあだ名で呼ばれるようになっていた。
それというのもまず俺の妹が俺の事を『キョンくん』と呼んでいるからで、たまたまウチに遊びに来た友人がそれを聞いて面白がって「キョン」
「キョン」言っていたらそれを聞いた他の奴らも面白がって使うようになり定着してしまったわけだ。どうしてくれる。俺はハムの人じゃねえ。
「僕の責任じゃないよー」
あははー、と屈託なく笑う国木田。この野郎め。
まあ、なんだ。谷口だったか。そんなわけで俺のことはキョンでいい。
「あー……いいのか?」
いいと言うかなんと言うかもう諦めた。
涼宮山ハルヒは、黙ってジーッと座っている限りでは、いち美少女高校生、
その一方で黙ってジーッと座っていなくとも力士高校生であった。
先ほども言ったが、俺の視力と脳は至って正常であるからして、
そう述べるにはそれなりの理由というものがあるのだ。まあ聞け。
どう見ても力士輪郭なのにどう見ても掛け値なしの可愛い顔に見えてしまう、
というのがヤツを見たときの感覚だ。もちろんこれは俺だけが持つモノではなく、
ヤツを目にした人間は全員このキモチワルイ矛盾した感覚を持つ。全くもって不可解なことだ。
後に聞くところによると、あまりに不可解すぎて、この現象は早くも5月の時点で、
喜べハルヒ、不思議人種を欲するお前自身が不思議人種に認定されたぞ。
ちなみに「本来の7つは何だ」とその噂を俺に知らせたクラスメイトに尋ねると、
「あと1つ、『消えた部活動』しか知らん」という答えが返ってきたんだがまあそこはどうでもいい。
まずは体格か。
はっきり言おう。巨体だ。……いや、あれを巨体と言うにはいささか難点がある。
本来の巨体とは、こう、縦と横が揃って高く、伸びている体型のことだと俺は認識している。
ハルヒは、決して高くはない。むしろ縦に関しては低い方だ。ただ、横に太――ああいや、
ふくよかだ。ひたすらふくよかなのだ。丸い、というよりはなんと言うか、むしろ山――いや違う、
……えーと、プリン! そう、アレはむしろプリンの形状に近いものがある。
こういう体格を世間一般的になんと呼ぶのかは、不勉強にして知らぬ――ということにしておいてくれ。
不用意な発言を避けるジェントルメンな俺である。むしろ余計に露骨になった気がするのは錯覚だ。
それはまあ置くとして、次は服装だな。
うちの高校――北高は古式ゆかしく制服を重んじる高校であるため、
女子は指定のセーラー服を着用することになっているので、ハルヒも勿論それを着ているのであるが……、