そんなわけで、今日も今日とて俺はハルヒに話しかける。哀れむような周りの視線が心地良いぜあははん。
……泣いてない! 泣いてないからな!
あー、全部のクラブに入ってみたって言うのは本当なのか? ……どこか面白そうな部があったら教えてくれよ。
「無いでごわす。全然」
即答しやがった。頼むからもう少し会話を続けようという気にはならんのか。
会話が途中で宙ぶらりんになることほど虚しいものは無いと思うのだが。
「……全然無いでごわす!」
なぜ2回言う。
「高校に入ったら少しはマシかと思ったんでごわすが……これじゃ義務教育時代と何も変わっておらんでごわす。入る学校間違えたでごわす」
何を基準に学校選びをしてるのだろうなコイツは。
ほう? で、どうだった? 御眼鏡に適う不思議人の強者はいたか?
「不思議人の強者? は、ちゃんちゃら可笑しいでごわす。変な事件に出くわした人物なぞ皆無であったなどと言うんでごわすよ?
部員も部員でごわす、立会いができそうな者どころか本ばっかり読んでそうな普通のばかりで旭道山のような輩もおらぬし!!」
そりゃそうだろ。そんなガタイのいい奴が文科系クラブだなんて何処かの下っ端のスポーツ万能設定並みに宝の持ち腐れだ。適材不適所にも程がある。
「『超常現象研究会』にも少し期待はしてたんでごわすが――単なるひょろっちいオカルトマニア達の集まりでしかなかったのでごわす!
しかも先程のミス研もそうだったのでごわすが、仮にも『研究会』の名を関しているというのに彼の著名な“無類力士”こと雷電爲右エ門の生家に参ったことも無ければ、
それが何処にあるかすら知らんとのたまう始末! 全く、底の浅さが知れるでごわすな。そんなことも知らずに一体何を研究してるというんでごわすか!?」
というか何か、そのライデン何たらとかいうヘタレ兵士のような名の者の生家を訪ねることはコイツにとって常識なのだろうか。
「うおおおおつまらんでごわすうううう!!」ふるふるピシッふるふる。
ちょコラ、ダッダンボヨヨンっておま何この古のCM? てかその図体で暴れんなってオイやめろやめろやめろピシッっていったから今またお前の椅子ピシッって。
「むう……これだけあれば少しは変な部活や人間や骨のある奴に出会えても良さそうなんでごわすが……」
「……無いものはしょうがないだろう? ま結局のところ人間はそこにあるものだけで満足しなければならないってコトさな。
言うなればそれをできない者こそが発明や発見をして文明文化を発展発達させてきたワケだ。遠く離れた者とやり取りがしたいと思ったからこそ、
手紙ができ電話ができついにはWWWが作られてEメールが普及してる。だがしかし、それが生じたのは一部の才能ある、もしくは発想力に長けた人物がいてそれを実行に移したからであって、
すなわちそれはある種の天才によって可能なものとなったんだ。『何の特殊な才能も無い凡庸の極みである我々、しかも君達のような子どもに残された手段は学ぶ事しかない』
とは俺が中学のころの国語教師が言った言葉だがな、これは結構的を射
「うるさい」
ハルヒは、俺がここぞとばかりに奴に現実を叩き込もうと調子乗って知った風なことをベラベラと喋っていた(奴とは違って自覚する心はあるのだ、俺には)のを語気強く中断させ、
目の前に餌を出されてさんざ弄ばれた挙句それを冷蔵庫に再投入されたのを見た猫のような目つきをしてそっぽを向き、漫画等で人物が眼鏡を外したときの古典的な表現のような口をつくった。
……もしかしたら、これがネタ振りになってしまったのかもしれない。