2023-02-19

積極的技術選定と消極的技術選定」という記事について

https://blog.uhy.ooo/entry/2023-02-13/technology-selection/

積極的技術選定と消極的技術選定」という視点で、技術選定ということについて論じている方がいる。ここではそれを要約はしないが、この記事の筆者の主張の一つに

それらは異なるレイヤーの話だから明確に分けて書いてほしいということです

というものがある。そしてその例として、

ある技術が「場合によっては良い技術だと思うけど今回は過剰」みたいな下げられ方をされているときに、過剰である理由学習コスト消極的理由)だったりすると残念です。

筆者は技術の「学習コスト」という言葉があまり好きではありません。なぜなら、とくに技術選定において、学習コスト本質的理由にならないと思っているからです。

として「学習コスト」(消極的技術選定)についての考えを記している。

ところで、この筆者は、この記事の一つ前に「Tailwind考」としてTailwindCSSというCSSフレームワークについての評価を記している。

https://blog.uhy.ooo/entry/2022-10-01/tailwind/

そこでの記述引用する

TailwindはCSSの代わりではないし、CSS学習コストを減らさな

学習コスト観点では、生のCSS知識はどうせ必要ですから、Tailwindを使用しても学習コストはまったく減りません。Tailwindのクラス名は生のCSSに比べて簡潔なので一見すると簡単に見えますが、その簡単さはすでにCSS理解している人が享受できるものであって、まだCSSを知らない人にとっては特に恩恵はありません。

ここでは学習コストをTailwindCSS考察する際の一つの指標に取り上げている。

この「Tailwind考」を改めて再読してみたが、この「Tailwindの学習コスト」の話が(「積極的技術選定と消極的技術選定」で推奨しているような)明確に「消極的技術選定」の話として、分けて書かれているとは読み取れなかった。つまり、この筆者自身技術選定記事もまた、明確に積極的消極的に分けて書かれてはいないのである

積極的技術選定と消極的技術選定」の記事追記されているコメントで以下の指摘がなされている。

積極的消極的は0か100かで分類できるわけではないと自分で言っているのに、明確に分けて書けという主張は矛盾しているのでは?

インターネット不特定多数に公開される技術選定の文書で、これらを明確に分けて書くのは、多くの場合、本筋から外れるだろうし、いささか無茶な要求なのではないだろうか。

筆者は「その内訳を分析して見せることができます」と反論しているが、技術選定記事を公開するときに、そのような細かい分析網羅して記述することに、どれほど価値があるだろうか。

このような技術選定の記事を書くとした場合、想定する読者を「どういう理由で選定したか知りたい、と考えている」と設定するだろう。その理由がどのようなカテゴリ積極的消極的)に属すか、などは文章を過剰に冗長にするだけであって、むしろ積極的に本文から削っていくものではないだろうか。

記事の筆者が書いた「Tailwind考」もそうで、「積極的技術選定と消極的技術選定」が明確でない今のままで「TailwindCSS技術選定」として価値ある記事だし、筆者も(内面での考えはともかく)そこの区別は、文書に記す必要がないと判断して、記事を公開したのではないだろうか。

自分が良いと考えている技術が「学習コストが高い」と無下に扱われたら、イラッとくる感情はわかる。

でも、どんな技術選定記事も、その筆者が遭遇した特定の条件、特定環境下での判断なのは、当然の前提ではないだろうか。

そして技術選定の基準が、純粋技術であるかそうでないか簡単に分離できず、それでもそれを詳細に記述説明すること(積極的技術選定か消極的技術選定かを分けて書くこと)が、本当に必要なのか。

そうして書かれた文書の筆者に「技術に対して不誠実」などと憤るべきか。もう一度考察してみるのはどうだろうか。

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