ちなみにオークはブナ科コナラ属の木の総称で、日本で言うところの楢と樫の両方を包含する。
そんでオークのうち、一般的に落葉樹が楢で常緑樹が樫と呼ばれる。
なおヨーロッパで樫が生えているのは南欧に限られ、イギリス含む中欧・北欧は楢ばっかり生えていると。
これが最初に書いた、オークを樫と訳すのが基本不適切な理由らしい。
実際英語でオークのうち樫だけを指すときは"live oak"と言うみたいだし。
ではなぜこのような誤訳が起きたかと言えば、ヨーロッパにおけるオークの価値が、明治に和訳された時分に、翻訳者含め日本で十二分に理解されていなかったからと推測される。
というのも日本では古来、杉とか檜とかの針葉樹に高い価値があって、広葉樹は欅とか桐みたいな例外を除いて、近年まで雑木扱いだったイメージ。
これは従来日本における木材の用途が主に「建築材」であり、あとは桐箪笥に楽器や漆器、床の間と上がり框を飾る程度だったことが関係しそう。
何しろ明治維新まで椅子に座る文化は定着していなかったし、侘び寂びな空間を木材で飾る話でもない。
裸足や足袋で歩くんだったら床も杉板のほうが足に馴染むし…というわけでオークの出る幕はなかっただろう。
一方、机椅子に始まりキャビネットに床板化粧板と、木材の「内装材」「家具材」における需要も極めて大きかったヨーロッパ。
そしてオークは内装材・家具材として、ヨーロッパでは長い歴史と伝統を持つ一級品。
この用途でこれ以上の高級材といったらウォルナット(胡桃)・チーク・マホガニー(合わせて世界三大銘木)くらいしかない。
あとはヨーロッパの酒造において、オーク樽は原料の一部と言っていいくらい不可欠だったり。
そうした重要性から遂にはThe King of Forestと称されるほどに。
したがって当時の翻訳者が
「楢なんて、あんな箸にも棒にもかからない木がヨーロッパでは高級木材とかありえないっしょ」
みたいな思い込みで、オークを樫と訳したとしても不思議はない。
(まだ樫のほうが金槌の柄や鉋台とか、強度が求められる部材で価値があったと思われる)
これが大いなる勘違いだと判明するのに、今日に至るまで相当な時間を要したと。
そしてこういうややこしい事情を避けるためか、今はもうオークはオークのまま訳さなくなったっぽい?
(ファンタジー物で登場する、ヒューマノイドの方のオークは昔っからオークのままなのはさておき)
それにしても今振り返るとファンタジー系の小説で「樫の木の扉」とか書かれていたのは噴飯ものだし、少し前までは
「欧米では硬くて加工困難な樫の木から立派な家具をたくさん作っている。その点日本の木工はダメだな」
まあでも、そういう諸々を笑い話にできるくらい適切な情報が広まったのは喜ばしい。
そんなに強度が違うんか? 多少差異はあるだろうけど同じ木だろって感覚なんだが
それぞれの用途が違い、かつお互いの代用にならない時点で、強度含む材質に少なからぬ差があると思うぞ。 楢…高級家具、フローリング、酒樽 樫…金槌・スコップ・斧等の道具の柄...
楢の女王
オークの木訳違反
ソード・ワールドのオークは「樫の枝から作るゴーレム」で、同音異字で遊んでて面白いなあと思ってたんだが、誤訳でもあったのかー。
コケモモのことかーーーー