機嫌の悪いときの姉はどーにもならないけど、機嫌のいいときは楽しく話せるのです。
こちらも無職の精神科通いなので、人とゆっくり会話する機会はほとんどないのでお話できたことが嬉しかったし、楽しかった。
風呂から上がってきた母が、私たちの会話に割り込むように、聞こえるような大き目の声でいいました。
「なにをそんなに話すことがあるんだろうねえ」
突然の大き目の声で言われたことにまず驚いて、次に言われた内容に心が追いつかず、二度驚きました。
え?なに?何言われた?なんで言われた?
母の声の大きさから、怒られたような、嫌味をいわれたような心地で、姉と何を話していたのかすっかり吹っ飛んでしまいました。
それはもちろんその場にいた姉にも聞こえており、私がびっくりしてきょどきょどする様子も全て見られていました。
姉と母は不仲で、一緒に暮らしてはいるものの、日常的な交流は全くありません。
突然の母の割り込みに姉はイラッとしたようで、「なんでそんなこと言われなきゃならないの?」と応戦しました。
母ほど大きな声ではありませんでしたが、当然聞こえるはずの距離です。
無反応の母に、姉は何度か言葉を繰り返しましたが、母の返答はありませんでした。
結局その場は母が去ったことでなんとなく収まったのですが、母の行動が理解できず、驚いたときに感じた胸のざわつきはいつまでたっても収まりませんでした。
母と姉が不仲であることの要因に、姉が気難しいということがあるのですが、母の発言が姉の地雷を踏みぬきがちということもあり、長年の感情のもつれはちょっとやそっとでは解消できないくらい、こじれにこじれています。
母が無神経な発言をしがちであるということは当然私も知っていたのですが、始終姉に気を遣いながら暮らしている母にとって、姉の機嫌は母のQOLにダイレクトに関りがある重要事項です。
なのに、どうしてこういう怒らせるようなこと自分からするかな?いや、それが母と姉の不仲の原因なんですけど!
翌日も実家を訪ねる機会があった私は、思い切って母に問い質しました。
「どうして昨日私が姉と話してるとき『なにをそんなに話すことがあるんだろうねえ』なんて言ったの?姉が『なんでそんなこと言われなきゃならないの?』って言ったのに、なにも答えなかったの?」
「え??私昨日そんなこと言った?」
予想はしてたけど、本当に予想通りの答えだった。
もともと物忘れしがちなうえ、このところは認知症を心配するくらいだった。
問い質してみるのだって、そこそこ思い切りがいったのだけど、全て無意味だった。
「本当にそんなこと言ったのなら、寒い廊下でずっと立ち話してるのが気になったからだと思うけど。居間で話せばいいのにと思ったんじゃない。」
ここだけ切り取って聞けば、子供を気遣うやさしい母のように聞こえるだろうが、私が姉と居間で語らったことなど、もう何年もないのだ。
会話するときは、寒くても暑くても廊下で立ち話がここのところのパターンだ。
大体そういう声色とか、雰囲気では全くなかった。
怒っているような、咎めるような。
私達だけは仲良く会話できることへ嫉妬するみたいな。
言ったらなんだけど、私が姉と会話するなんて、年に二~三度あるかないかの行幸で、会話量でいったら普通に断然母との方が多い。
どうして、そんなごくたまの交流くらい静かに見守ってくれないのだろうか。
でもそれが、うちの母の母たるゆえんでもあるのだろうな。