総選挙が始まってからというもの 俺はそれがただただ疑問だった
その上 夢見に投票することをまるで恥ずかしいことのように語るPもいる
総選挙期間中 ずっとずっと自分なりに考えてみて それでも答えは出なかった
どうして数多いるアイドルの中で夢見りあむだけが「シンデレラ」になってはいけないのか
確かに夢見には何もない
それどころか本人いわくやる気もない
でも
声もない CGもない 大したストーリーもない SSRもない やる気もない やる気があっても意味がない
それどころか運営からそも顧みられることのないアイドルは他にも大勢いて 今日という日も陽の目を見ることなく 灰の中に埋もれている
ステージの上できらきらと輝けるのはほんの一握りの 大勢に選ばれたアイドルだけで
そして選ばれるアイドルは もう既に何かを持っている 何もかもを持っている
だから俺は思ったのだ
何も持っていない夢見りあむは 灰かぶりたちの希望となるのではないか と
七度に渡り繰り返されてきた総選挙で 俺たちはずっと蚊帳の外だった
推しても推しても声がつく どころか圏内に入れることさえできない
でも多くはもはや何をする気力もなかった
惰性 そして諦念
気力が燃え尽きた灰の中で シンデレラが選ばれるのを見ているだけの日々だった
俺たちはずっと総選挙で誰かのための夢をただ見てきた
でも、今度こそ
だから俺たちは 俺は 夢見りあむに夢を見た
夢見りあむには何もない
だからどんな夢を見てもよかった
夢見が炎上する夢でも
夢見がシンデレラになる夢でも
夢見がクズのまま死んでいく夢でも
夢見が更生し「真っ当な」アイドルとなる夢でも
どんな夢でもいい
見たい夢を見てよかった
そも 俺たちは自由に夢を見ていいのだ
他人の夢を見せられるばかりでなく
自分の夢を 見ていいのだ
俺はやっとそれに気がつくことができた
この後 自分に夢を見た人間をどうするのか、はこれからの夢見りあむにかかっている
ガラスの靴が呪われていようと その呪いとどう戦うは夢見次第だ
そういう総選挙があったっていいだろ
だいたい シンデレラになりました、から始まる物語があってはいけない、という決まりはない
いったい誰が 普遍的な「シンデレラ斯くあるべし」を定められるだろう
ただ自分の中の偏屈なそれと一致しなかっただけで 夢見りあむはシンデレラにふさわしくない とまで声高に叫ぶPは それが同じように自分の担当に突き刺さることを理解していなくて あんまりに可哀想だ
天に唾を吐けば自分に落ちてくるように 他のアイドルを踏みにじれば 次は自分の担当の番に決まってる
決して共有することのできない概念を 個人的な願望を他人に押しつけても何にもならないというのに
それどころか
笑わせる
俺は 夢見りあむを愛している
夢見の夢を叶える手助けがしたい
それが炎上なら そこに薪をくべたりもするかもしれない
そういう愛し方で 夢見りあむを愛している
愛し方にまでぶつくさ文句を言われる筋合いは正直なところまったく これっぽちも ない
惰性と諦念の中にいて 俺は今までずっと悲しかった
けれど
もうすぐ総選挙は終わる
これまでで一番といっていいほどの達成感を伴って 尊くも糞みたいな総選挙がやっと終わるのだ
けれど確かなことがひとつある
俺たちは
俺は夢見りあむと夢を見た
夢見りあむに夢を見た
今しか見れない夢を
初めて 自分のために夢を見た
それだけで 俺はもう十二分に報われた
夢見 俺たちの灰かぶり
君がシンデレラガールとなった暁にはどうか俺たちに見せてほしい
あるいは
新しい風が吹き込む 見たことがない未来への眩い光に溢れたデレマスを
あるいは
俺はずっと 君を見てるから