プーチン訪日で首脳会談を山口、東京で行ったにも関わらず、日本人の多くが期待した北方領土の返還がなされなかったことについて、あまりにも根本的な要因がネット上に出てこないので、僭越ながら私見を述べさせて頂く。
北方領土「進展なし」でもプーチン来日が成功だった理由|ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦|ダイヤモンド・オンライン
id:kaeuta 後から考えてみれば簡単に(部分的にでも)北方領土を返還されるなんてのは難しいのはわかるので、事前に盛り上げすぎだったんだろうなぁと。あと経済感覚が無いと投融資を援助と勘違いするんだよなぁ。蓮舫しかり
「返還されるのが難しい」のはその通りですが、肝心なのは「なぜ難しい」のかです。これがわからないと、「ロシアはおそロシア」で終わっってしまうし、交渉相手のプーチンを神格化というか特別視してしまうことに繋がる。
さて、北方領土変換が難しい理由は「アメリカとの関係」にある。少し古いが、次の記事を読むとわかる。
北方領土問題を巡るクローリー米国務次官補発言について: 極東ブログ
米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条について、「(北方領土は)現在日本の施政下になく、条約は適用されない」と述べた。同時に、「米政府は日本を支持し、北方領土に対する日本の主権を認めている」と重ねて強調した。クローリー氏の発言は、同5条が適用されるのは沖縄・尖閣諸島のようにあくまで日本の施政下にある領域であり、北方領土はこれに該当しないことを改めて確認したものだ。
ロシア側の立場にたって考えてほしい。北方領土、特に日本が「最低限」と希望している2島(歯舞群島・色丹島)自体にはロシアだって、そこまでの価値を見出していない。領土として返還する分には、差し支えないわけである。しかし、ここで絡んでくるのがアメリカ。2島を返還した途端に、日米安保の対象となりアメリカ軍がやってくることになったらどうなる?ロシアにとっては国防上の重大な懸念が発生する。択捉島の住民だって嫌だろう。同胞を危機に晒すような返還施策はロシア世論が賛成するはずがない。
【日露首脳会談】プーチン氏「主権返還書かれず」 日ソ宣言めぐり主張 安倍首相明かす - 産経ニュース
ここで重要になるキーワードは「主権」。ここでいう「主権」とは率直に言えば「軍政」のことである。要するに、ロシアは日ソ共同宣言にもとづいて領土は返してもいいが、主権(特に軍政)は渡すつもりはない。つまり、北方領土を日米安保対象とするのはダメだというわけ。ちなみに、軍政を返さなかった前例はある。それは沖縄のアメリカ軍。
先日もオスプレイが不時着して、日本としてはオスプレイの飛行禁止を「お願い」したが、アメリカはさっそくオスプレイの飛行を再開している。これは、沖縄に関して軍政が返ってきていないことに由来する。(当然、主権を持っていれば、「お願い」ではなく「禁止」させることができる)
オスプレイ飛行、全面再開へ 米軍通告、国が容認 - 沖縄:朝日新聞デジタル
さて、ここまでわかれば、北方領土が真の意味で返還されることはありえないことがわかるだろう。これからロシアとどのような関係を築くのは、各々考えがあるだろうから、それについては置いておくとして、少なくとも私たちはロシアが何を気にしているのか、何が障壁になっているのかを理解しなければならないのである。