2015-08-06

真剣に悩まれているのだと思うので、僕の経験を書く。

僕も犯罪に巻き込まれ経験者だ。

海外とある街で、深夜にバックをいくつも抱えた旅行中の女の子から道を尋ねられた。

治安の良い場所ではなかったから、駅まで送ってあげることにした。

そして、その途中でギャングに襲われた。

彼女は腹部を刺されてしまった。

僕は遠くに見える警察署まで彼女を抱えて走った。

救急車が来るまでの間、警察官からもらったタオルでおびただしく出てくる血を抑えながら、

僕はひたすら彼女に謝りつづけた。

彼女救急車で運ばれた後、警察とその場所実況見分が行われた。

テレビ局が来て、僕を間近で投光器で照らしながらカメラを向けた。

僕は血まみれの服のまま殴りかかり、警察に止められた。

鑑識の検査があるから今日そのままでいるように言われ、

僕は安アパートで一晩中血まみれのまま過ごした。

朝まで寝ることは出来なかったが、記憶はない。

僕が体の異変に気付いたのは、それから数か月後の帰国後だった。

深夜に歩いていると心臓がドキドキして、空中から脂汗が出てくる。

後を歩く塾帰りの小学生が、自分を刺してくる妄想に襲われ、

その場で民家の塀に背中を押しつけたまま、身構えながらその小学生が通り過ぎるのを待った。

歩いている途中で自分気持ちがまるで遊園地バイキングのようにグラングランと大きく揺れ、

その場にしゃがみこんでしまうこともあった。

もっと大変なのは夜だった。

布団に入って明かりを消すと、後悔と罪の意識が黒い塊となって自分を襲ってくる。

あの時の光景が延々と脳裏に繰り返され、布団の中で何度も叫んだ。

毎日酔いつぶれるまで酒を飲み、明かりを煌々と付けて、ラジオボリュームを大きくして、

夜がしらじらと明ける頃に、やっと浅い眠りにつくことが出来た。

当時はPTSDという言葉はまだなく、僕はそれを『心の後遺症』と呼んでいた。

もっともひどい状態で約5年。

ある程度の生活が送れるまで10年近くかかった。

今、20年以上たっているが、今でも似たような状況の場所時間は避けて歩く。

何をもって直っていったのかは分からない。

巨大な、でも一粒づつしか落ちない砂時計のように、変化していったとしか言えない。

心療内科にも行っていないから、行った方が良い、行かない方が良い、その両方の助言をすることもできない。

でも、一つだけ。20年以上たって、今でも自分を許すことも出来ないけれど、

そうした事件があったということだけは認めることが出来た。

そして人よりも少しだけ、誰かが傷つくことに繊細になることが出来た。

震災から4年経ち、物理的な復興が進んで世間から忘れられ始めている今でも、

あの震災で僕と同じように、心に傷を負い、人目に付かない場所で苦しんでいる人がいることを想像することが出来た。

今でも定期的にボランティアに行っている。

あなたがどのようにその苦しみから抜けることが出来るのか、

僕には助言することが出来ない。

でも、あなた経験あなたを以前よりも優しくして、

失恋した人や仕事些細な失敗をして落ち込んでいる人にも優しさを向けられる、

そんな心の傷に繊細な人にしてくれる。

そしてそんなあなたの優しさがあなたに帰ってくる時がきっとくる。

から、誰も恨まないで、その経験を呪わないで、

少しでも早く良くなってください。

大丈夫。きっと良くなる。

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