以前は仲良く行動していたのに、裏切られたと思った瞬間があった。
共通の趣味で知り合って仲良くしたいと思っていた。
仲良くなれて嬉しかった。
当方は女で、先方も女。追っかける先は、男なのであった。
「裏切られた」という内容も、些細なことなんだろう。
約束をしていたわけではなかったが、以前相談事をしたことがあって
「私はこうしますよ」と言われたことがあった。
「じゃぁ私もそうします」という会話を、何度かした。
一度だけではではない。
なかなかに信用していたから、そう言った。
しかし、後日、取り返しはきかない時点で「私はこうしますよ」の
まったく逆をされたのである。
信じられなかった。開いた口が塞がらなかった。
何も言えなかった。
今思えば、あの時はっきり「なんで教えてくれなかったんですか?ショックです」と
言えばよかったんだろう。私の開いた口が塞がらないのを見て、
でも、言えなかった。かなりのチキンだ。
その後、家に帰って玄関で泣き崩れた。
相当信用していた?好きだった?………のだろう。
裏切られた気持ちでいっぱいだった。
二度と味わいたくないと昔思ったことがある。
今では良くなって、人見知りもマシになったと思っていた。
…………のに。要するにそれの再発だ。
私も追っかけ先の彼のことは大好きである。
でなければ、行ったこともない土地に、
乗ったこともない電車に乗って行く訳がない。
しかし、違うのである。女子の中でよくある「私が一番」が見えた。
私も好きなのは好きだが、「私が一番」の意味がわからなかった。
それは、なまじ追っかけ先との物理的距離が近いからというのもあるだろう。
要するに、AKB商法をしているわけだ。昨今では珍しくもないだろう。
手法は様々だが、DVDを数枚買えば本人とチェキが撮れたり、次のイベントの抽選券がもらえたりする。
だから熱心なファンは何枚、何十枚も購入している。
不思議な世界である。別世界。別の精神・感覚持ち主たちが居る空間だった。
追っかけが始まって、ちょうどその頃仲良くなった。
初心者だった私は、一緒に楽しめる人が出来てとても嬉しかった。
イベントには一緒に行ったり、終わった後は飲みに行ったりした。楽しかった。
いろんなことを教えてもらったりもした。追っかけのファンとは、私が追っかけ先を好きになる前の
イベントの内容やら、追っかけファンの怖いところなどなど・・・。
もちろん追っかけ先が好きだから、でもあるのだが、一番は「楽しいから」やっているのである。
去年、ちょうど私は自分の人生をもっと楽しもう、と思うようになった。
今まで卑屈に生きてきた自分が居て、そんなのは勿体ない!もっと楽しんでいいはずだ!と
初めて見た彼は輝いて見えた。容姿も完璧だった。私に持っていないものを持っている。
しかし、頭のネジが何個か抜けていたり、思考がどこかズレているところがあった。
そんなギャップもあり、好きになったのだと思う。
さて、「追っかけ」をしているわけなので、そのイベントやらで
正直、会いたくない。話したくない。見たくない。
怖い。
怖いのである。恐怖だ。一個人に対してのみの対人恐怖症なのだろうか。
何をされるわけではないが、話す度に出るあのピリピリした空気感は、
イベントが発表される度に吐き気をもよおす程度には苦痛なのである。
話そうとしたこともある。しかし、やはり言えなかった。かなり悩んだのだが無理だった。
もう、会話をしなくていいようにしようと、離れようと思った。イベントに行くことも黙っている。
そして、当日会うのだ。以前は、前々から連絡を取り合って一緒にイベントに行っていたのに。
あちらは、常連なので行けば仲間がいる。私は一人だ。一人なんか大嫌いな人間なんだが。
それでいいと思った。大人しく彼を見守れればそれでいいと。
ファンは全員女だ。対象の追っかけ先は男なので当たり前だ。
そこに、「女同士の戦い」が生まれることも多々・・・ある。
そう聞いていた。くだらないと思った。どうでもいいと思った。
そして、そんなくだらないことに巻き込まれたくないと思った。
しかし、巻き込まれた・・・と言うより、一方的に投げつけられた。
信用していた・・・と言うより、他人の言った意見で自分の行動を決めたことが
そもそもの間違いだったのだろうとは思うのだが、やはり裏切られた感は否めない。
それが、女の面倒くさいところなのだ。おそらく、私含め。
私が彼女から遠ざかったことも、認めてしまうと自分の非を認めることになるだろうし、
「私が一番」の争いに私も参加していると思っていはずなので
遠ざかった私相手ですら、優位に立ちたいのだろう。
または、以前のように「凄いですね!」とチヤホヤされたいのか・・・。
そんなことはどうでもよかった。あちらは常連として顔も名前も覚えられているだろう。
チケットも良番で、いつもステージから近いだろう。ファン同士でのチケ争いについて聞いて、
遅い番号だと本当に悔しいそうだ。確かに近いほうが楽しい。それはわかる。
しかし、私はそんなのはもうどうでもよかった。ただ、彼のことが楽しめればそれで。
私が彼に関して言っていることが、自慢に聞こえるのかもしれないと思った。
そんなつもりはない。楽しいから話すのである。しかし、わかってもらえないだろう。
ここで「私が一番」という女子のめんどくささが出る。
彼に会いに行けば必ず彼女もそこにいるという恐怖があるということである。
私は楽しみたい。彼に会うことを、彼のパフォーマンスを。それだけなのに。
次のイベントが決まっている。
ただ、楽しみたいだけなのに。彼のことを。生きることを。
楽しんでいるだけなのに。
こんな苦痛、いつまで続けるのだろう。
彼に会えなくなることは、正直したくない。
今後また、苦痛を味わってくることになりそうなので、