2013-09-23

某T社の研修に行って来た

自動車の某T社が社外の中堅社員向けに行っている研修を受けてきた。

内容はざっくり言うと、工場見学と一個流し生産方式の利点について、受講者で簡単な生産ラインを使って学ぶ実習方式。

以下感想

 

 

工場見学

社員研修の為に、目的別に専用のスペースを常設している事に驚いた。見学者に「弊社はこれだけ社員教育に力を入れています!」という事をアピールする目的ももちろんあるだろうが、それだけでは説明できない規模だ。

社員教育用のスペースを常設することのメリットとしては、社員教育に関する有形・無形の資産をそこに集約して可視化やすくなるという事と、その場がどの程度活用されているかによって、社員教育が活発に行われているかどうかという事も可視化できるようになるという事。その結果、たとえば「社員教育スペースが有効活用されていない」となれば、それを有効活用しようという意識社員に生まれやすくなるだろう。

某T社に関しては色々なビジネス書が出ているが、ほとんどはその成果物の表面的な事だけを取り上げているように見える。それを生み出す環境として、こういう場がきちんと常設されているという事は、もっと注目されて良いはずだと思った。

 

 

・一個流し生産方式についての講習

ロット流し」と、「一個流し・多品種混合生産」とで、どのように原価構成が変わってどのような長所短所があるかという事の講習。ぶっちゃけて言えば、ロット生産方式なんかダメダメ、一個流し・多品種混合生産方式最高!っていう内容である。それに関して、そんなの、ケースバイケースで色々だろ、というツッコミは当然有りうるわけだが、今更そんなことを社外の人間に向けて講習する事の意図は何なんだろうと考えた。

 

ロット流しをデフォでやっているのは、いわゆる家電メーカーほとんどである。一部の業務用の商品は1個流しもやっているが、いわゆる民生用の商品は私の知る限りロット生産方式でしか生産していない。そして、その家電メーカーは今、どこも苦境にあえいでいる。それに対して、一個流し・多品種混合生産を随分昔から当たり前にやっているT社は、きっちり利益を出せている。その事実が、研修内容の正当性を裏打ちするものとなっている訳だな。そういう図式だ。研修中に家電業界を直接的に批判するような話は無かったけれども、「ロット生産方式なんかクソ」と言わんばかりの講師の態度の根拠が、そういう現実にある事は間違いなかろう。

 

で、なぜ今T社がそういう研修を社外に向けてまでやるようになったのかという事だが、1つは、自動車おいて電装部品比重がどんどん高まっていることや、家電大手自動車向けに色気を出すようになった状況を見るにつけ、いつまでもロット生産方式を改める気配の無い家電業界に、しびれを切らしているという事情があるのではないか

 

この問題は、なかなか根が深い。自動車が一個流し・多品種混合生産を採るに至った背景としては、商品単価が高い事、そのために顧客が慎重な品定めをし、それに対してディーラーがきめ細やかなサービスをする、という体制があった上で、色々なオプションサービス必要になり、それを実現する手段として、一個流し・多品種混合生産機能しているという事まで考慮しなくてはならない。

 

これに対して、家電はそのような販売体制を採っていない。まず工場が大雑把な数量をロット生産する。それを販売会社に押し込む事で、見かけの目標は達成する事ができるので、とにかく大量生産して販売会社に押し込む事ばかりに熱心になる。販売会社と製造工場だと、多くの場合販売会社の方が立場が弱いので、販売会社は押し込み在庫を断る事が出来ない。やむをえず販売会社は、押し込まれた在庫をさばくことに奔走する事になる。小さな個人の電気屋なんかちまちま相手にしていても埒が明かないので、大手量販店を贔屓にした対応を採る。大手量販店は、大量に仕入れた商品を薄利多売で右から左に流すばかり。

 

要するに、家電メーカーには、ユーザーの声を直接聞いて拾い上げるような流通の仕組みも無ければ、それに対応できる生産体制も無いのである

 

ユーザーの声を直接聞いて拾い上げるような流通の仕組み」と「それに対応できる生産体制」は、鶏と卵のような関係と言えるだろう。家電メーカーは今、その卵も鶏も無い状況下で、腐った商品を垂れ流している訳だが、どうやらその自覚すら無いらしい。これはかなり深刻に受け止めざるを得ない。

 

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