2013-01-03

全部捨てられた

日本国内で数年遠方に滞在して、そこからさらに数年海外で過ごした。

この1月から実家近辺の勤務になり、ようやく帰ってこれたとほっとしたのもつかの間。

「あんたが留守の間に引っ越しが決まってね。部屋のいらないもの捨てといたから」

そう母親に言われて覗いた自室には、ほとんど物がなかった。

自分がこの部屋を使うようになってから25年以上。

ここ5年くらいは上に書いたように部屋を空けていたから、実質20年。

その間にため込んだあれこれは、ほぼ何も残ってなかった。

幼稚園の時に気に入っていた本も、小学校の時の教科書で1冊だけ大切に取っていたものも。

中学校の時に書いた自作小説友達に読ませたりして固定ファンもいた作品たち…も。

高校からつい最近まで、ちょっとづつ集めていたとあるミュージシャンのCD50枚も。

大学時代にせっせとバイトした金で買った高い専門書も。

初めて買ってもらった文庫本も、家族旅行お土産も、

文化祭とき友達に書いてもらった寄せ書きも。

荷づくりの関係で、部屋には空き箱や空の袋が大量にあったし、

大きな家具はまだそのままだった

から、事態の全容に気づくのが遅れた。

最初は、気づいた順に、あれがない、これはどうした、といって母親に尋ねた。

その都度、ごめんねと謝られて、問い詰めると引っ越しのために仕方なかったんだと逆切れされて。

釈然としない思いのままとりあえず怒りを収めていた。

でも、とうとう、気づいてしまった。

全部捨てたんだ。小中高校大学卒業証書以外、全部。

もう、火事にでもあったとしか思えなかった。

全て焼かれて無くなってしまったとしか

ネットで見た、鉄道模型を捨てたら精神的に壊れてしまった旦那の話を思い出した。

同じだ。

こんなの、正気でいられるわけがない。

自分の物が何もない部屋は、自分の部屋なんだろうか?

日本に帰ってきたばかりで逆カルチャーショック真っ最中なのに、さらにこの仕打ちは堪える。

自分の帰る場所は一体どこにあるんだろう。

1月11日追記:

トラバくれた人ありがとう。大体予想していた内容(酷いorむしろ感謝すべき)だけど、それでも誰かの反応を貰えるだけで有難かったし、落ち着けた。

物の量では、要らない物>>>>大切な物だし、引越の際には結局捨てないといけなかっただろうから自分の代わりに捨ててくれたと言うのは正しい。

ブクマでは事前連絡が無かった事が問題って書かれてたけど、海外ですぐ帰省できる距離じゃなかったし、言われてもどうしようもなかったと思う。

実は、上の日記を書いた後、母親にどうしてありとあらゆるものを捨てたのか、尋ねてみたんだ。

やり取りの詳細は書かないけれど、最終的な母親の言い分は

「本当はこの思い出の場所から離れたくない。でも、事情があって引っ越さないといけない。

自分だって引越のためにたくさん思い出の物を捨てた、自分だって辛いんだ」

だった。

まとめてしまうと味気ないし、理由になっていないのも一目瞭然だけども、

目の前で時折涙を見せながら切々と語られて、とにかくその気持ちだけは理解できた。

「ただ、いくら自分が辛い思いをして捨てたからって、独立した子供の所持品を巻き込まないで欲しい。

なにより、捨てるとき自分で取捨選択できるのと、ある時突然無差別に無くなるのとは全然違う。」

気持ちは分かるけどもと前置きしつつ、この二点だけははっきり説明して、納得させた。

ついでに、逆カルチャーショックについても説明したけど、こっちは信じてもらえなかった。

その後もまた別の部屋の荷造りなどをしたのだけども、そこでのやり取りから

この人は、子供自分とは異なる価値観を持って、違った人生を歩むということが頭では分かっても、

感覚として受け入れられないのかもなあ、と思った。

自分の思い出の品々は、引越の片付けと言いつつ、本当はその辺の葛藤に巻き込まれて捨てられてしまったのかもしれない。

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