はてなキーワード: ケアホームとは
近所にテチさんというばあさんが1人で暮らしていた。
私が生まれる前から仕事をしていなく、一間しかない茶室みたいな家に住んでいた。
子供の頃に家に遊びに行っていたが、入ってすぐにこたつでいっぱいになる部屋に隅っこに台所とトイレがある。
風呂はなかった。銭湯に通っていた。銭湯も歩いて5分のところに2つあった(その銭湯がつぶれたからどうしていたかは知らない)。
子供に唄とか教えてた時期もあるらしいが私が覚えているのはいつも近所の居酒屋でいい感じに酔っ払って、歌いながらふらふらと夜の道を歩いてる姿だ。
おれを見かけると「こんばんわ」とご機嫌な様子でいった。
祖母や近所の同年代のおばちゃんらは、テチさんのことを嫌っていた。当然だろう、働いてないのだから。近所の女性はみんなせっせと働いていたし祖母などはくわえて畑で野菜も作っていた。「憎たらしい」とはっきりいってたころもある。
(ただ、後に和解したのか、飲み仲間にはなっていたみたい)
テチさんは恩給で暮らしていたのだとあとで聞いた。軍人におりる年金だ。
テチさんは芸姑をやっており、そこで軍人に見初められて結婚してたが、早くに戦死したらしい。以来ひとり暮らしだそうだ。
あまり快適とはいえないあばら家というのがふさわしいしテレビなど電化製品がほとんどない家であったが楽しそうであった。家の前を通り過ぎると唄を歌ってたり、家の前にベンチを引っ張り出して蚊取り線香を焚いて扇子をあおぎながらぼんやり座ったりしていた。
橋本環奈を大人っぽくしたような要するに絶世の美女をみてると、なんとなくテチさんを思い出したので書いてみた。
テチさんは平成も終わり頃に本格的に黄昏の国に旅立って、いつもニコニコしていたのとは真逆になり、誰にもあいさつしなくなり私なんかをみてもにらみつけるだけになった。そのうちに顔もみなくなる。それでも祖母よりだいぶ長生きであった。
そいで遠くに住んでいるであろう娘に引き取られて近所にあるらしいケアホームにいれられたらしい。たぶん、もう生きてはいないだろうとは思うが調べる術はない。